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第7話 最後の記憶

 戦闘開始と共に躊躇なく岩石を投げつけてきたネフィリム。


 前回と同じ作戦か! いや違う、直接狙っている。僕がいた場所に岩石が着弾、更に次々と岩石が飛んで来る。……そうかこの角度はっ!


 どうやら1発目の岩石を避けさけた退避先で僕を取り囲もうという作戦のようだ。


「今の僕はそんなに甘くないぞ! スキル『糸』だー」


 尻尾を振って勢いよく糸を吹き出す。糸スキルがMAXになった僕にとって岩石の処理は容易(たやす)かった。糸を鋼化すればスパスパ切れる。


 よし、岩石を全て真っ二つ。半円状となった全ての岩を網化粘糸で包み込む、そのまま反動をつけてネフィリムに水風船のように当てまくった。


 堪らずネフィリムが大きく距離をとった。


『喰らえ俺の|天と地を破壊する波状攻撃メツボウセカイ


 右手で岩石を天井に飛ばし、左拳で地面を叩きつけた。不思議な動きを連続で繰り出してくる。


 天井からは雨のように氷柱石が降り注ぎ、地面は揺れ亀裂を作る。普通なら足を取られて身動きが取れないまま貫かれ飲み込まれるだろう。


 「『時空歪曲』━━」によってその場を脱出、この魔法の難点は出口が分かること。ネフィリムの上空に出口を作った。

 ネフィリムは手を休めること無く顔を動かし視線を動かし出口を探る、そして『上か!』と気づいたがもう遅い、「━━からのー、『瞬歩』!」


 一瞬でネフィリムの間合いに入る、そのまま鋼化糸を突き刺した。


『グファ……』膝を付くネフィリム、『ふっ、でもそんな細い糸を腹なんかに突き刺しても大したダメージにはならんぞ』


「実はそれ、毒糸なんだぁ」

 そう、スキル『糸』がLV.5になった時に獲得した特性《スキル隠匿》。糸のレベルを上限に他のスキルを付与出来るというもの。『糸』LV.10、『毒』LV.8だからネフィリムの体内にLV.8の毒を付与したということになる。


『なん……だと……、いつのまにそんな技を……』


「男子三日会わざれば刮目して見よって言葉もあるでしょ。……まあ年単位で過ぎてると思うけど」

『良く分からない言葉を……そうだ、ここはこれで手打ちにしないか。どんな形であれお前を強くしてやったのは俺だ。それで貸しをチャラにしてやろう』


 ひざまずくネフィリム、情けない顔をしているが左眼が笑っていない。


「そんなこと言ってぇ、騙そうとしているのが透けて見えるよ」


『そんなことは……ナイ!━━』


 ネフィリムは岩石を作り出して投げつけた。『━━さっきレベルが上って新しく付いた特性《板化》だ!』

 岩石は引き伸ばされ道を塞ぐほどに広がっていく、「この厚みならいけるはず!」……尻尾を使って岩板を破壊、次々と襲い来る岩板を破壊していく。


 全ての岩板を破壊した先に見たのは、『空間歪曲』の出入り口が消えゆくところ、小さく『覚えてろよ、必ず仕返ししてやる』と聞こえた気がした。


「逃げられてしまった……」

 

《『時空歪曲』が1上がりレベル4となりました》


 なんか面白いなぁ、戦略次第でいろんな戦い方ができる。沢山のスキルを取得してレベルを上げれば戦術の幅も広がるんじゃないか……もし、ネフィリムの岩板を破壊する力が無かったとしたら僕はどうなっていたのだろう……でも、毒は入れてるから……考えは尽きない。


 目の前に現れる『時空歪曲』の穴、「お主、良くやった。そこから中に入るのじゃ」……この声はアウラ。


「あの……ネフィリムに逃げられちゃったけど」

「問題ない、あやつは出た先で人族に討伐されおった。運が悪いのぉ、日頃の行いが悪かったのじゃ」

「あのネフィリムを倒すなんて凄い人もいたもんですね」

「それは自画自賛をしているように聞こえるぞ、まぁあやつは毒で弱ってたから半分は勝手に死んだようなものじゃがな。そんなことよりとっととこっちに来るのじゃ」


 時空歪曲の穴、時空の歪みを抜けた先は真っ暗、奥の方に煌めく光が見える。遠くから「こっちなのじゃー」と反射したアウラの声が何重にも聞こえてきた。


 光源は宙にゆらめく正三角錐のオブジェクト、かなりの光量だが目ではなく心に眩しさを感じる……「これは一体」


「世界に4つある柱のひとつなのじゃ、我はずっとこれを守らされておってのう。ようやく任務から開放されるのじゃ」

「柱……ですか」

「そうなのじゃ、まぁ、あとは上手くやるのじゃ、縁があったらまた会おうぞ」


 手をヒラヒラさせて去っていくアウラ。そのまま光つ包まれて消えていった。


 ドクン━━


 なんだ…… 心臓を激しく揺さぶられるような感覚、脳が拡がっていくような感覚。正三角錐のオブジェクトから出ている光が僕と繋がった。光は爆発するように大きく破裂すると意識を失った。


◯。 ◯。 ◯。


「う、うーん」


 ここはどこだ? そういえば空に光った魔法陣……雷を見たんだ……。

 周囲を見渡すとテレビで見るような無人島、ゴツゴツした石が敷き詰められ海にまで伸びている。


「そうだ、他のみんなは!」


 僕と同じように倒れている人、必死に友達の意識を取り戻させようと様々。先生が率先して統制を執っていた。最終的にはひとりも欠けることなくみんな無事だった。


萌田先生が率いる女性班の半数以上は精神的な恐怖からその場を動けず待機することになり、動ける者は周囲を探索し流れ着いた荷物や使えそうな道具を回収する役割、男子生徒はいくつかのグループに別れて食料の確保に向かった。


「死ぬか生きるかの瀬戸際なんです。俺たちはやりやすい人と組んで探索に行きます」


 生死の間にある我々の精神状態はかなり悪い、知らない土地に放り出され何十人もいる生徒を救わなくてはならないという使命を背負わされた先生たちはもっとひどいだろう。


 勝手にバラバラと森林に向かう男子生徒たちは先生の制止も聞かずに行ってしまった。残されたのは、僕とボッチ仲間の相田(あいた) 正也(まさや)だった。


「正也くん、僕たちも食料を探しに行こうか」

「何を行っているでござるか、拙者らが行っても足手まといになるだけでござる」

「でも、こんな所に男ふたりでいられないでしょ」

「悠人氏、これは遊びじゃないでござる。無理なものは無理、拙者は待機している女子生徒の所に行くでござる」


 正也はとぼとぼと女子生徒が呆然と座っているところに行ってしまった。

 

 ひとりで行くしかないか……


 実は、ゆるーいキャンプというアニメでソロキャンにハマり、ボッチです……という自虐芸をする芸人のサバイバルキャンプ動画でいかに荷物を持たずに夜を過ごすかというのを真似ていた。

 金曜の授業が終わると現地に向かい1拍して帰る、そしてのんびりアニメなどを観るというルーティンをずっとやっていたのだ。


「確かバックルが……良し、使える」


 厨二心がくすぐられて買ってしまったバックルが折り畳みナイフになっているベルト、今思えばバカらしいが、もったいないから使っていたものだ。


「まさか、こんなことに役に立つとは……、物を大事にするのって大切だなぁ」


 森林を探し回り果物や食べられそうな植物をゲット、弦をロープ替わりにして集めていく。


 結果、一気に人気者になった。カースト上位にでもなった気分である。この時、僕を睨みつける視線に気づいていたら結果は違ったのかもしれない。



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