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第43話 王の心、竜人の心

 競技台にジャンプ、ストンと着地するとアウラと対峙した。この時、あまりの嬉しさに不敵な笑みが表出しているのが自分でも分かる。

 死霊法師としてウルドを守っていたアウラ、あの時とは全く違う……ローブを着た姿ではなくドラゴニュートとして僕の前にいる。


「すいません、アウラとちょっとだけ話しをしたいのですがいいですか?」


 審判がチラリとアウラに視線を向ける。


「ワーハッハ、よかろう、裏取引だろうとなんだろうと聞くだけは聞いてやるのじゃ」


 アウラに近づくと周りに聞こえないようにこっそりと「 (死霊法師はどうしたんですか)」と耳打ちした。

 ツインテールを両手で握りしめ、汗をダラダラかいて慌て始める。掠れる口笛、「 (な、なんのことなのじゃ)」。ものすごい動揺しながら誤魔化した。


「 (師匠、蜘蛛レオンです。進化してアラクレオンネになりました。強くなった僕を見て下さい)」

「 (おう、あの時の弟子か……法師の件は黙っておれ、あれは我の趣味なのじゃ。もし言ったら……全力でデコピンするからな!)」


 久しぶりの師匠との会話を楽しむ。ふふっとした笑顔をキリリと締めて所定の位置についた。

 いままで「かかってくるのじゃ」と自由な感じだったが、しっかりと合図を待っているアウラ。開始を待っていると不思議な緊張感が沸き上がり、1秒1秒がとても長く感じる。


「それでは最終戦始め!──」


 開始の合図とともに魔粒素の動きを感じた。


 来る──。時空歪曲を介した腹パン。後方に避ける。が、避けた先々で百裂拳のように襲い来る腹パン。なんとか瞬歩で避けまくる。


 観衆は見えていないのか「なんであいつひとりでい動き回ってるんだ」という声がチラホラ聞こえていた。


「ハァー、ハァー」


 瞬歩を多用しすぎたせいで魔粒素の消費が激しい。このままだといつかは掴まってしまう。全く勝てる見込みが沸かないのだが……。


「強くなったようじゃのう。その姿じゃ動きにくいじゃろうて、お主は真面目過ぎるのじゃ、仲間と協力しようが何をしてもよいのじゃぞ」


 仲間ってシュリナやユーコに手伝ってもらえってことか……いやいや、そんな危ないことなんてさせられないよ。


《アウラはきっとわたしに言っているのでしょう。もしかしたらレムの中にいるのがウルド(姉さん)だと思っているかもしれません》


 そっか、確かに。事情を知ってるんだもんな……よーし、それなら師匠との差を埋めるために協力をお願いするよ。守りはベルダンディ、お願いできるかな。


《分かりました》


 網の目サイズの時空歪曲を作り出し、網網(あみあみ)をぬって麻痺糸を放出してアウラに巻き付ける。きっと上空に逃れるだろうから、逃げ道を塞いでおき網化糸で捕まえる作戦。


 しかしアウラは麻痺糸を避けることなく振り払って切断、中空で待ち構える僕に向かってロケットジャンプ、地上であれば十分に避けられる疾さ。


 何も知らなかった頃、中空で身動きがとれなくなって危なかったことがあるけど今は違う。


 瞬歩──。向かった先はアウラ、拳を変化(へんげ)の技能のひとつ、一部変化によって鋼鉄化。


 ガッキーン、激しくぶつかりあう拳の音。しかしアウラを止めることなく僕の右腕を粉砕した。


『死者蘇生』。ベルダンディのサポートにより右腕が復活。


 観衆からは「いま、あの女の右腕が無くならなかったか?」とザワザワし出した。


 全く勝てる気がしない。地上からアウラを見上げると余裕の表情。さすがドラゴニュートというだけあって空を自由に飛べる。


「ワーハッハ、レムよ。中々やるでないか、今の攻撃は良かったぞ! つい本気を出してしまったのじゃ」


 アウラは中空から降りてくるとゆっくり近づいた。


「 (時の宝珠が奪われておるらしいのぅ、取り返すか?)」

《大丈夫ですよ。わたしがレムの中に入っているので問題ありません》

「念話とは……なんじゃと、なんでベルダ──モゴモゴ」


 ベルダンディが僕の体を乗っ取って、アウラの口を塞いだ。


《そのことは他言無用でお願いしますよ。ねぇ、アウラ》

「 (わわわ、分かったのじゃ。それなら我はこの地から離れて問題ないじゃろ)」

《そうですね、また必要な時にはお願いします》


 アウラは急いで離れると、「レムを合格にするのじゃ、それとその白い巫女服を着ている女と、ふわふわした髪の女じゃな。今回のラグナロク優勝者はレムなのじゃ」


 闘技台を取り囲んでの大声援、竜人族から「「レム」」コールが鳴り響く。


「おかしいだろ! 絶対に俺たちの方が良い戦いをしたはずだ。レムとかいう女とそのドラゴニュートはコソコソ裏取引でもしたんじゃないか」


 白いスーツの男(セイヤ)が闘技台に乗り込んできた。ノブナガは腕組みをして椅子に座りうんうんうなずいていた。


「審判より申し上げます。裏取引はありえません。例えあったとしてもドラゴニュートであるアウラ様の決定は絶対、異議は一切認められません。不服がある場合はアウラ様に勝つ必要があります」


「お主らはもう少し精進せい、レムと我の戦いが大したことないと思ったのなら自ら強者を名乗るのは早すぎるのじゃ。あの戦いの凄さが分かったのならまた相手してやろうぞ」


 アウラは竜の姿になって飛んで行ってしまった。姿が見えなくなるまで見送ると司会者が大きな声で観衆の視線を集めた、


「今回のラグナロク優勝者は……レムに決定しました。続いてノブナガ & セイヤ、ミネラル・ダルメルカ王となります。いやぁ、素晴らしい大会でした。まさか王まで参加されるとは……それでは次のラグナログに向けて鍛えるぞー!」


 戦いは本物だったけど文化祭にでも参加したように気分だよ。


《竜人は戦いが好きですから。告白もプロポーズも拳で語り合いますから》


 うわぁ、『僕と付き合って下さい』と力こぶを見せつけるのか……良く分からないや。


《ふふふそうでしょうね。それぞれの種族で価値観が違いますから……倣う必要はありませんが、理解はしてあげてください》


 確かになぁ……理解されないって辛いんだよな。僕だって人前で魔物を食べるのは嫌だもん。


「レムさん! 俺と拳で語り合いませんか!」

「アウラ様が認めた貴女(あなた)は僕にこそ相応しい。是非拳を以て将来を誓い合いませんか」


 男の竜人から「拳で語り合ってくれ」の嵐。つまり……求愛?


「ちょっと待ってくれー、僕は男だぁ」

《男ということにしたんですね。どっちでもなれるのですよ》


 まったくベルダンディは何を言いだすんだ。


「あらー、男だったのね。それだったら私と拳を交えましょう」

「わたしだったら拳とともに、この身をまぐわされてもいいわ。どうかしら」


 うわー、竜人(おんなのひと)が群がってきた。ちょ、待ってくれ。


「ダメです! レム様はわたしたちの長なんです。竜人には渡しません」

「そうです。私もレム様に付いて行くと決めたんです。絶対にお守りします」


 立ち塞がるシュリナ(22)とユーコ《20》。竜人《30-35》の前にヒョイヒョイっと投げられてしまった。その隙に僕は素早さを生かして逃げ出したのだった。


 ◆ ◆ ◆


「ダルメルカ王もラグナロクに参加したのですか」

「もちろんだ。ワシが優勝すれば時の宝珠が奪われていることを民に知られることは無いのでな」

「どうしてそこまで隠す必要があるんですか? 僕が勝負よりも純粋に戦いを楽しんでいたじゃないですか」

「君には分からんだろう。ワシはご先祖様に顔向けできんことはしたくないのしワシの代で問題はおこしたくない。民に知られることなく絶対に宝珠を取り戻すのだ」


 僕にとってそこまで固執するほどのことだと思えない……ダルメルカ王にとっては、何事にも代えがたい大事なことなのかもしれない。


 みんなはどう考えてるのかな……と、チラリ側近に目を向けた。


 目の合った側近(43)は一歩前に出て口を開いた。


「ラグナロク優勝者であるレム殿に意見を求められたので僭越ながらお答えさせていただきます」


 おいおいおい。僕はそんなこと求めてないぞ。

《ふふふ、うまく使われたようですね》


「我らは王の失態を全力でカバーしたいと思っております。単独で宝珠の奪還へ行ったことにして奪ってこいと言われれば喜んで襲撃し時の宝珠を取り返してきます。ドラゴニュート(竜神)様が認めない者へ屈すのだけはやめていただきたい」


 ワナワナ震えるダルメルカ王、「皆の者、マズラーを捕えよ。不敬罪及び反逆罪だ。牢に入って頭を冷やしてまいれ」と怒号を飛ばした。


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