デート⑤
「おまたせ。フィア。はい、どうぞ」
そう言い、殿下は私の頭へ帽子をかぶせる。
「ありがとうございます。」
「これで、心置きなく街歩きできるね。さあ、行こうか。」
そう言って手を出されたので、エスコートされようとする。
「違う違う。街歩きは、手を絡めて歩くのが流行なんだよ。」
と指を絡め、手を引かれる。
何でしょう・・・これは・・・
とても恥ずかしいつなぎ方です。
でも、周りを見れば、同じように歩いている貴族もたくさんいます。
これが、今の流行なのですね。
「きゃっ」
歩いていると、急に後ろからぶつかられ、転びそうになってしまいましたが、殿下が支えてくれ、抱きとめてくださいました。
振り返ると見覚えのあるような、女性たちが反対方向へ向かって歩いていました。
あれ・・・?あれって??
私を抱きとめた殿下は、ピクリとも動きません。
「ん・・・?殿下?ありがとうございます。助かりました。」
とお礼を言っても返事がありません。
「殿下・・・?ありがとうございます。」
「あっ、ああ。フィア、ケガはない?」
「はい!大丈夫ですわ。」
「そうか、ならよかった。行こう。」
と名残惜しいですが、離れまた歩き出します。