デート⑩
「ここは、私が払いますわ。」
食べ終わり、一息ついていると殿下が立ち上がるので、止めた。
「フィア、さっきも言ったけど…」
手で制して、続く言葉を止める。
「殿下、私も同じなのです。楽しい時間をいただいた殿下に、お礼をしたいのです。ここは私の気持ちを受け取っていただけませんか?」
「フィア…その言い方は…ずるいよ。断れるわけがないじゃないか。」
と困った顔をするので、フフフと笑っておいた。
「ご馳走さまでした。」
と、お会計をしてニッコリ笑うと、周りがザワザワしているのが聞こえた。
奥から店長さんが飛んで出てきて
「ありがとうございました!ぜひ、今度はお伺いさせてください。」
と言ってきたので、
「ええ、ぜひに。とても美味しかったですわ。ごちそうさまです。あ、そうそう。甘さ控えめなチョコレートケーキもあると嬉しいですわ。お相手には、甘さが際立ってしまっていたようで、コーヒーがよく進んでいましたの。美味しいと言っていたので、味はそのまま、甘さ控えめなんてできるかしら?できましたら、そちらも一緒にお願い致します。」
とニコリとしておいた。
店長さんはお顔を赤らめながら、
「…………!ありがとうございます。もちろんでございます!超速で試作させていただきます!」
「まぁ!ありがとうございます。楽しみにしていますわ。では。」
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会計が済み席に一度戻って、殿下を呼びに行く。
……………なにがあったのかしら?お話もしてしまったし、お待たせしすぎたかしら?
「殿下、お待たせいたしました。」
「フィア…。ニコってするの禁止!」
へ?何を言っているのかしら?
「周りの男が、フィアを見て顔を赤くしてたって!」
「それがどうかしましたか?」
「分からないの?フィアを見て、可愛いって思ってるってことだよ!」
「ええ?そんなはずは…?それに、愛想笑いもできないと、私は不機嫌な人間に見えてしまいます。王妃に相応しくございません。」
「それはっ…そうだけど!ダメなんだ!」
んー困りました…
「殿下。王太子妃の評判が落ちれば、殿下の隣は相応しくないと、離れさせようとする勢力が出てくるやもしれませんよ。」
そうラーナがフォローしてくれたから、しぶしぶ殿下は納得してくれた。