デート⑥
その後は手をつなぎながら、何事もなく歩く。
話しているわけではないが、殿下との時間は心地いい。
しばらく歩いて、殿下が止まる。
「フィア、ここだろう?来たかったカフェは。」
「はい、そうですわ。」
「実は、予約してあるんだ。」
「まあ!嬉しいですわ!」
と、珍しく声を上げてしまった。
その様子を見て、殿下は驚いた表情をしていて、あわててうつむいて顔を隠す。
ご令嬢は、感情を出してはいけない。喜ぶときはおしとやかに、が基本だ。
ですのに、私ってば、はしたないわ・・・
「フィア、俺は喜んでくれてうれしいよ。さ、行こう。」
と、手をつないだまま、並んでる方を横目に店内へ入る。
「いらっしゃいませ。ご予約のお客様でしょうか?」
「はい。レンと申します。店長をお願いします。」
そういわれ、眉間にしわを寄せた店員だったが、店長を呼びに行った。
奥からあわてた様子で店長が出てくる。
「申し訳ございません。店員が失礼な態度をとりまして・・・」
と来るなり、謝る。あれ?店長様は、殿下の素性をしっていらっしゃるのかな?
「いや、かまわないよ。隠してと言ったのは、私だ。」
「そうおっしゃっていただけると、ありがたいです。お席へご案内致します。どうぞこちらへ」
と言われ、綺麗で清潔感のある半個室へ案内される。
個室とまではいかず、カフェの雰囲気も楽しめ、高貴な方への配慮もできる。
「素敵だわ・・・」
といつの間にか口に出していた。店長様はそんな私を見て、満足気にうれしそうな顔をして言う。
「お褒め頂き、光栄です。ご注文が決まりましたら、ベルを鳴らしてお呼び下さい。」
そう言って、去って行った。
私と殿下は奥の席。手前の通路には、護衛のカイ・リクが座る。
護衛の観点から、この配置になるのは必然だ。
だけどだけど、殿下の隣に座りたい。
いつになったら、堂々と横に座れるのかしら・・・と悲しくなる。
そんな私に殿下の手が伸び、頭をなでる。
「フィアの隣に座りたいなあ。私室でなら、隣に座れるかな。早く招待したいよ。」
女性も男性も、結婚までは、純潔が当たり前。
疑われてしまうような、私室へは入れない決まりだ。
同じことを思ってくれてうれしいのと、同時に恥ずかしくて顔が真っ赤になってしまった。