魔法学院編 第10話 魔法の理。
「魔法とは、魔力から生まれる現象です。魔力に命令式を与えて、炎や水などと形を創り出します。魔族や一部の亜種は、それを感覚でやってのけます。それでは、そんな魔力はどこから生まれると思いますか?」
Aクラスの部屋で、先生と呼ばれる人間が回答を待つが、返答できる者はいなかった。
「これは、Aクラスである貴方達にだけ聞いています。」
そういえば、俺も考えた事はなかった。素直に考えれば、体に血があるように、食から作られているのか?
しかし返ってきた回答は、俺の求めた答えとは違っていた。
「答えは……何一つわかりません。魔力の量は、身体の成長によって増大します。しかしそれに対して、生まれながらに魔力の質と量は均一ではない。私はこの学院で、それを調べています。」
しかしその観点は無かった。当たり前にある魔力にも、何かしらの意味はあるのかもしれない。
それから数十分、授業が終了する。いつもはクートルが近寄ってくるのだが、今日は俺の配下となったフェンティニーヌが真っ先に来ている。
理由無しに近づくなと言った手前、不思議に思った俺は自然な雰囲気で彼女の言葉を待つ。
「あの人、魔力の話をした時に嘘の色を宿しました。」
それを聞いて、俺は目を細める。
要するに、魔力の根源について何かしらの情報を持っているという事か。
「そうか」
もしかしたら、俺の求める情報はそこに隠れているのかもしれない。
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『今日から俺は、魔王となる。』
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この学院に来てから半年という月日が過ぎた。その間、俺は魔法の知識を吸収すると同時に一度に扱える魔力量を上げている。
結果としてはクートルには及ばないものの、開会式の学院長の魔力量ならば間違いなく超えている程度には強くなっている。
少し焦った日もあったが、無限の魔力の力もあって訓練の効率は増し、この時期にある学院の最大の行事、魔法大会までに間に合う事ができた。
魔法大会とは、名前通りに全生徒で行う魔法使いに順位を付ける大会だ。各クラスの序列によって出場できる人数が決まっていて、俺たちのAクラスでは五名がその大会に出場する事ができる。
もちろん、俺はそんな茶番に興味はない。
俺がこの行事までに魔法を学び魔力を上げてきた理由は、この魔法大会中ではほとんどの先生と学院長が模擬戦場に集まるからである。
要するに、学院の機密情報が隠されていると思われる魔導塔の防衛が手薄になるという事。
それはアリアネーゼ側も分かっているのか、各クラスの担任が観戦中の生徒を管理させられる。決してその間、自由行動が取れまいとするように。
だから、この半年で仕上げた。
俺の【闇】にネフィルに作らせた『共有の眼球』をいくつか埋め込んで、自由自在に広範囲で動けるように。
これにより、俺は模擬戦を観覧しているように見せかけて、魔道塔に侵入する事ができる。
眼球の大きささえあれば、隙間だろうと通る事ができるので普通に潜入するより動きやすいだろう。
あとは狙いを定めて、本を『収納』して撤収するのみ。
例え見つかろうとも、【闇】を人型にすれば多少の違和感で戦闘は可能だし、【闇】を魔力に変換して魔法を使う事も可能だ。
まず、『共有の眼球』から無限の魔力を送り続ければ魔力切れなんて起こる訳がない。
という事で、第一段階である能力の準備は万全。
次は、今から始まる第二段階を問題なく終わらせれば実行に移すのみである。
「それでは、準備はいいですか?」
グプタという亜人と、フェイというオールバックが戦った模擬戦会場で、俺はある亜人と戦う準備をしていた。
これが第二段階、魔法大会の出場者決めである。
決め方は、くじで選別された者との一対一で勝った方が出場できるというもの。
人数が奇数であった俺達のクラスは、実技試験が一番下のクートルが出場しないという形になっている。
その時のクートルは、怒るどころか何故か安心したような様子だったな。
俺の対戦相手は、亜人種であるインドート。薄黄色の髪を無造作に伸ばし、静かな瞳を浮かべている男である。
そして、俺と同じクラスの男でありながら、何故か存在にすら触れていなかった奴でもある。
それがこいつの恐ろしい点だ。
こいつと戦うとなった時、俺はやっとそいつの存在を認識した。あり得ない事だ。
おそらく、それが彼の固有能力なのだろう。適当に負けるつもりだったが、少しだけ実力を確認しておく方が良さそうだ。
俺は審判に「大丈夫です」と言うと、正面にいるインドートもこくりと軽く頷く。
「それでは、始めッ!!」
審判の合図と同時に、俺は杖を媒介に水の刃を数発インドートに向けて放つ。
次の瞬間、インドートの姿が消えた。
俺の放った水の刃は壁に激突し、地面に血の跡はない。しかし消える直前に、インドートは回避するような仕草があった。
普通に考えれば、透明になる能力だと思案するだろう。しかし、俺はそんな自身の考えを軽々と否定する。
俺の目では、まるで空気になったかのように消えたと認識した。しかし、周りで観戦しているクラスメイトから驚きの声は上がっていない。という事は……自身を認識させない能力と言った所か。
これは……かなり使える能力だ。
次の瞬間、強い打撃が俺の腹に打ち込まれる。その体は軽く吹っ飛び、そのまま意識を失ったフリをして地面に伸びる。
周りからは、困惑の声が上がっている。それはそだろう。周りの者からすれば、インドートは水の刃を回避し、普通に俺の腹部を殴っただけなのだから。
「しょ、勝者、インドート=ナチス!!!」
そのまま俺の体は、医務室へと運ばれる。
これで後は、半月後にある魔法大会で行動に移すだけだ。それに、良い能力を見つけた。
俺の顔に、自然と不敵な笑みが浮かんでいく。しかし勝ったはずのインドートの頬には、一筋の汗が伝っていた。




