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魔法学院編 第8話 開始の合図。

 優しい瞳で、学院長先生は口を開く。


「おぬし達が正しい道に進めるように全力を尽くしていくつもりじゃ。正しい学院生活を送ってくれる事をわしは祈っておる。」


 それを俺はつまらない様子で、ただただ見ていた。




 ーーーーーーーーーーーーーーー

 『今日から俺は、魔王となる。』

 ーーーーーーーーーーーーーーー




 開会式は何事もなく終了した。


 学院長がつまらない話を語り終えると、机に置かれた豪華な食事を食べて終わり。


 魔法で徹底管理された食材らしく、その味は確かに俺が生きていた中で一番美味しい気もしたが、どうにも内にある苛立ちのせいで味覚に意識を向けれなかった。


 それから俺たちは食堂を出ると、案内人の指示に従って勉学を教わる場所に向かう。


 そこはクラスルームと言われ、その中にはひとつで三人は使える大きさの机が四つと、人数分の椅子が置かれていた。


 俺は行った事もないが、稀にある貴族学校と全く同じ造りなのだろう。


 俺はクートルと共に右奥にある机に向かう。クートルが窓から景色を見たいと言い出したので、どうでもいい俺は席を譲って三つ並んでいる椅子の真ん中に腰を下ろした。


 景色と言っても、人工的に作られた生活区域が見える程度で心休まった緑はない。


 それから生徒たちは順に、空いている席へと腰を下ろしていく。


 そして男の後ろからついて来た女達に、俺は視線を持っていった。俺は魔眼の重要さを改めて感じながら、後ろから来た人間の魔力を確認する。


 最初に来たクレセリアの金髪姉妹とフテューレの魔力はもう見たのでスルーをし、次に来た金髪のポニーテールの女性を見る。


 そして、俺の魔眼が弾かれる。


 感覚的なものだった。


 失明したわけでもなし、瞬間的に少し体がビクンと動いてしまった程度。体の異常も無いので、おそらく探知系統の能力を無効化にする固有能力と言ったところだろうか。


 魔眼がそれに含まれるとは知らなかったが、危険度が測れない以上は要注意人物に違いない。


 俺は鋭い瞳をした彼女の危険度をクートル以上に引き上げる。


 やりすぎかもしれないが、一度のミスで俺の計画は崩壊してしまうのだ。これからは、魔眼を安易に使わない方が良いかもしれない。


 もしかすれば、学院長に魔眼を使ったのも間違いだった可能性も出て来たな…。


 俺が先の行動に懸念を抱いていると、後ろからフテューレと皇女フェンティニーヌがやって来た。どうやら彼女達で、女子生徒は最後のようだった。


 フテューレとは余り関わらないようにと指示をしていたので、近くの空いていた席に腰を下ろしている。その代わりに、彼女の後ろから来たフェンティニーヌが俺の右隣の席にやってくる。


「ラム、昨日ぶりですね」


 そう言って素直な笑顔を俺に向ける。


 どういう意図かはわからないが、明らかに何か目的があって近づいているに違いない。少し踏み込んでみるか。


「ええ、そうですね。あの男の子の隣じゃなくていいんです??」


 それのどこが可笑しかったのか、フェンティニーヌが可愛らしい声を上げて笑う。


「男の子ですか!本人に言ったら怒りそうです。彼、身長がコンプレックスのようでしてね。」


「そんな低くは見えませんがね。」


「周りに体の大きな人が多かったからかもしれません。」


 そう言いながらクスクスと笑う彼女に、俺も笑みを作って見せた。クートルから小動物程度の殺気が来ているのは無視しておいても構わないだろう。


 そんな事を考えていると、彼女は唐突に俺の質問に答えた。


 どうやら、隠すつもりであの騎士のコンプレックスを晒したわけではないらしい。


「ひとつお願いがありまして。」


 真剣な瞳だ。しかしそこには、警戒心というより好奇心のような色が浮かんでいる。


 その時、このクラスルームの出入口である扉が開かれる。


「ですが、二人で話せる時にお願いします!」


 彼女はそう言って、扉の方向に視線を持っていった。


 おそらく席は埋まっているので、このクラスを担当する教師が来るのだろう。俺も彼女に合わせて、扉の方向に視線を持っていく。



 そして、そこにいた先生が俺の知っている人物だった。



 紺色の長い髪を伸ばし、瞳は鋭いが気怠そうな雰囲気を持っている人間。


 俺はこの男を知っている。


 数ヶ月前の帝国で、ドルスという騎士を殺した時に手に入れた記憶の人物と瓜二つなのだ。


 その男は教卓の前に着くと、手に持っていた本のようなものを置いて気怠そうに口を開く。


「俺の名前はファル、今日からてめぇらの担任だ。」


 ドルスがスラム街で過ごしていた頃、親友であった人物。だからどうという訳では無い。


 しかしこれも、運命とでも言うべきか。


 ここまで重なると、何かに支配されているような感覚に襲われる。


「て事で、お前らに質問だ。」


 彼は歪な笑みを浮かべて続けた。


「こん中で誰が一番強い?」


 挑発に近いこの言葉に反応したのは、亜人族であるグプタだけだった。


「俺様に決まってんじゃねぇか!」


 それを見たファルは、その笑みをより深く浮かべる。


「亜人は人間より上みてぇな顔してんな。」


「そうじゃ無いとでも思ってんのか、先生ぃ?」


「お前、この学院なに掲げてるか知ってるか?」


「魔法使いは平等?頭悪りぃかよ」


 そんな素直な言葉に、ファルは声を上げて笑った。


「間違いねぇ。」


 そしてファルは金髪のオールバックを指差す。


「おいオールバックのお前、朝喧嘩したんだろ?二人で模擬戦やれ。俺が場所をわざわざ取っておいてやったからよ。ほら、全員ついてこい。」


「え…俺やりたくないんすけど。」


 オールバックのそんな言葉など無視して、ファルは歩みを進めた。とても爽快な男だ。


 そうして俺たちは、その場の雰囲気のままにファル先生の後ろをついていく。


 彼はコロシアムにも見える会場に向かっているようだ。


 何百人、もしかしたら何千人と座れそうな席の数だったので、試合が見やすい席を適当に探す。多すぎるというのは、選択肢が多くて逆に面倒臭い。


 適当に決めた席に俺とクートルが向かおうとすると、後ろからついてきたフェンティニーヌがクートルに声を掛けてきた。


「ラムと二人で話したいんですが、あなたどっか行ってくれませんか??」


 そんな彼女の口から出てきたのは、クートルにどっか行けという辛辣な言葉だった。


 素直なその言葉に、クートルはショックを受けながらも反抗する。


「な…なんでお前の言う事聞かなきゃだめなんだよ!」


 それもそうだね、とフェンティニーヌは無邪気に納得し、懐から帝国の金貨を取り出す。


 一般人ならば、一度として触れることのできないものだ。


「これあげます!はいどうぞ!」


「え、え、ええ、え??」


 そして彼女は自身の取り出した金貨をクートルに無理矢理押しつけて、俺に近寄る。


「それじゃラム、いきましょ!」


 俺は彼女の目的を早く消化してしまいたい気持ちもあったので、戸惑うクートルを無視して彼女についていく。


 そして周りには誰もいないが、戦況はしっかりと確認できる席に腰を下ろした。


「それで、何か用です?」


 俺は模擬会場に亜人とオールバックが出てくるのを見ながら皇女に向かって問いかける。


 それに皇女は、先のような真剣な瞳を向けて口を開いた。





 それと同時に、ファルの試合開始の合図が被る。





「てめぇら開始だっ!!」

「魔王様に、ひとつお願いがあります。」























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