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魔王城編 第7話 復讐の駒。

 この世界には、俺の知らない知識が数多存在する。


 廃村から闇雲に王都で暮らしていた俺にとって、それは仕方がないと言ってしまえばそれで終わりだ。


 しかし魔王となってからは、できるだけの知識を得るためにラキネや帝国にあった文書を読み、新たな知識や常識を身につけていた。


 そして今、俺はこの魔王城を回りながらラキネから得たある知識を思い返す。


 この世界には、大きく分けて四つの種族が確認されている。


 クレセリアやユーラリアなどの大国を統治している人種。

 そんな人種と基本的に対立をしている亜種。

 その他に近く、全ての種族と敵対しているのが魔族。

 そして最後に人種でも亜人族でもない、しかし魔族でもない種族である異種族の合計四種族が存在していた。


 その中でも人種以外は複数の『(ぞく)』として分けられていて、その為自身の『族』が亜種や魔族などとして括られる事を不快に思う者も少なくはない。


 もちろん人種の中にも、自身を周りと同じ人間と表すのを嫌う者も少ないが存在してはいる。


 人種と亜種が住んでいる土地は、そこそこ広い海を挟んだ大陸として『人間大陸』と『亜種大陸』で分かれている。


 これは『進化』の過程や、種族を創った『神』が別であるなど様々な説があるらしい。


 因みに魔族は、ラキネが向かおうとしていた魔界を中心に存在しているとされている。


 話が脱線してしまった。


 俺は無意識に動かしていた足を止め、再び生命創造について考える。


 何故そこまで慎重に考えていたのかというと、この能力は未知数だからだ。


 簡単に確認した帝国から強奪した書物にも、もちろんスレーラルやドルスの記憶にも存在してはいない。


 唯一の手がかりとなったラキネの知識からも『十二体の魔王の配下を生み出す』という事だけだ。


 そして、これまでにあった謎の妖精の登場や、魔王城発動による()()()()()()から、俺はより慎重に事を考えなければと決心したのだが……


 そう言っても、この生命創造をいくら考えても時間の無駄でしかない。


「……今は、思い通りに動いてやる。」


 小さく息を吐き、誰に向けて言うわけでもなく自分に向けて宣言するように俺はそう告げると、丁度そのタイミングで調教を終えた人化中のラキネが跪きながら口を開く。


「ヲル様、亜人の調教が完了しました。能力を持った亜人が三匹おりましたので、そいつらのみは闇ではなく外に隔離させております。」


「そいつらを玉座に連れてこい。」


「了解致しました。」


 そんなラキネの言葉を聞き終える前に、俺は第八階層への階段へと歩みを進めて目先にある目的を無意識に発した。


「実験だ」




 ーーーーーーーーーーーーーーー

 『今日から俺は、魔王となる。』

 ーーーーーーーーーーーーーーー




 第八階層、玉座の間。その玉座の上には(ヲル)が座り、その目前には人化中のラキネと三人の亜人が頭を下げている。


「顔を上げろ」


 そう俺が指示をすると、小刻みに震えながらもゆっくりと顔を上げる三人の亜人。


 俺はそんな亜人達の顔を見ると同時、目を見開いた状態で固まる。


「…シュリ?」


 俺から見て右にいるシュリと瓜二つの亜人を見て、無意識にそう溢す。


 髪色は薄い赤のような色でシュリの薔薇色とは異なるが、俺の瞳にはその顔のパーツひとつひとつが、自身の妹の小さかった頃と重なって映る。


「…どうされましたか?」


 そんな驚きで固まっている俺に対して、ラキネが不思議そうに声を掛ける。そのおかげで、俺は冷静さを取り戻し、少し付け加えた形で言葉を続けた。


「能力と()()を言え。」


 ラキネと出会った時とは違い、知りたいという意欲が生まれた。


 それは魔王となってから初めて抱いた復讐とは関係のない欲であったが、そんな事をヲル自身が気づく事はない。


 ヲルの指示を聞いた三人の亜人は、お互いを見合って誰から名前を言うかを探り合っている。


 それを見たラキネは呆れたような様子で、シュリと似た亜人とは反対の亜人から順に言うように指示をしていた。


 それに合わせて、黒肌で鮮やかな紫色をした髪を長く伸ばした亜人が、怯えた様子で喋り出す。


「私、は、ルールと、申し、ます。の、能力は、死者操作(デゾーグブル)といっ、言って、死体、を、あ、操る能力、です。」


 死体を操る、か。その死体の性能次第では軍隊として使える有能な力だ。


 そうやって冷静に評価をしていたヲルだが、シュリと似た亜人に無意識に視線を送っていた。


 それに唯一気付いていたラキネは、不思議そうな表情を再び浮かべているが、余裕がなくなっているヲルはその事には気づいていない。


 そんな中ルールと言った亜人の隣にいる亜人族、紺色の髪を伸ばし清楚な雰囲気を漂わせた女が息継ぎもせず早口で語った。


「私はレアリルと申します、能力は復元(イムローグ)と言って触れたものを十秒前の状態に戻す能力です」


 要するに、死んでも十秒以内なら戻るという事か?実験する必要はあるか。


 そして最後に、シュリの容姿と瓜二つの亜人が口を開いた。


「私の名は、フテューレと申します。能力は未来視(プルエピ)と言い、一秒後の未来を見る力でございます。」


 声は全くと言って似ていない。だが、その仕草がシュリに見えてくるのは何故だ。


 俺は、無意識のうちに妹を見るような優しい瞳となる。だが、それは一瞬。すぐにでも頭は冷静になり、今の自分の考えを否定した。


『余計な事を考えるな』


 そしてフテューレの能力について思考する。


 戦闘でかなり有効な能力だ。そして、今も連続して未来を見ているのだろう。だからこそ、他の亜人達とは違い落ち着いているのだろうか。


 俺は甘い考えを抱いた自分を試すと同時に、彼女のそれが上っ面なのかどうか試すことにした。


 俺は瞬時に闇を展開してフテューレの心臓を完全に消し去る。


 そしてフテューレは必然的に、崩れ落ちるように倒れていった。


 しかしフテューレは、最後まで命を惜しむ仕草をしなかった。


 遅れて隣で立っていた亜人が困惑の様子を見せる。しかしそれも一瞬で、もし俺の癪に障れば自身の命が短くないという事を理解していた。


 あたふたしていたが、彼女らも冷静に判断ができている。


 改めてその三人の評価をしながら()()()()()()()、俺はレアリルと言った亜人にフテューレの心臓を復元するように言う。


 するとすぐにレアリルは傷口に手を触れ、能力を発動させる。


 淡い光が傷口に広がり、やがて消えた胸の形と一致する。そして、一秒も掛からぬうちにその心臓は元の形に復元された。


 それを見ていたヲルに、もう安心感や孤独という感情は無い。


 意識の戻ったフテューレは辛そうな表情をしつつも、その瞳に怒りや憎しみなどの敵対する色は宿していない。


 そうしてフテューレは少しふらつきながらも立ち上がり、レアリルも元いた場所に立ったことを確認し終えてから俺は口を開く。


「お前らに俺の配下となるか、死ぬか。どちらか選ばせてやる。」



















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― 新着の感想 ―
[一言] いい感じで進んでますね。楽しんでます。 勇者サイドもきな臭そうだしね。
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