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魔王城編 第5話 裏切りの妖精。

「魔王は見つかったか?」


 透き通るような声で、妖精王は蒼く小さな妖精に向けて言葉を放つ。


 それに対してその妖精は自然な仕草で答えた。


「いいえ、未だ見つけられておりません。」


 その言葉を聞いた妖精王は、玉座のような椅子の肘掛けに置いていた右手を顎下に持っていく。


「そういえば、君は先代よりなんと名を授かった?」


 その言葉を聞いた妖精は、変わらず無表情のまま答える。


「ペリセです。」


 それを聞いた妖精王は「そうか」と小さく頷いたのち、鋭くペリセに目を向けて言葉を続けた。


「ならば、その名に誓って答えろ。その身に残っている忌々しい魔力、何故嘘をつくッ」


 その言葉が終わると同時に、妖精王から濃い緑色に可視化される程にまで強力な魔力が発せられる。


 しかしペリスは驚く様子を見せることもなく、眉ひとつすら動かさずに無表情で悪びれもなく言った。


「妖精王様、あなたはわかっていない。」


 意表を突かれた妖精王は、苛立ちと驚きを込めた表情で聞き返す。


「何?」


 その様子を見て何か面白かったのか、無表情だったペリセが悪意のある笑みを浮かべて言葉を続けた。


「この世界の摂理を。理念を、運命をッ!」


 ペリセはまるで狂人のように身振り手振りをし、表情はまるでゾンビのような酷さをしていた。そして口をめいいっぱい開けて、言葉を続ける。


「ただ個人の思想でその摂理を壊してはならないのにッ!それが妖精王であれ、獣王であれ、魔王であれ、聖王だろうが、なんら変わらずッ!全ての生命が反してはいけないぃい世界そのものなのにぃッ!なのになのになのになのになのになーー」


 それを聞いた妖精王は、自身の顎を乗せていた右手をペリセに向けた。


 瞬間、ペリセの腰の部分が捻れるように潰れる。


 しかしグチャグチャとなったペリセの表情からは、苦痛の様子どころか満面の笑みを浮かべていた。


「な、なの…にな…の、に。な……で」


 声が止まると同時、ペリセは蒼い光となる。そしてこの光はやがて森に還り森の養分となる。


 しかし妖精王はその光を自身の右手に持っていき、握り潰す事でその魂を永遠に復元できない形とした。


 こんなモノを愛する森の養分にしたくないという思いからなのだろう。


「ホーズル」


 妖精王の一声に、背後から羽を囃した成人男性のような容姿をした妖精が現れる。


「こちらに」


 握り潰した光が空中へと散っていくのを見ながら、妖精王は言葉を続けた。


「外に出ている妖精を全て戻せ。それと、先代の妖精王の書物を全て集めておいてくれ。」


 その瞳には、森よりも深い怒りの色が浮かんでいた。


「了解しました」




 ーーーーーーーーーーーーーーー

 『今日から俺は、魔王となる。』

 ーーーーーーーーーーーーーーー




 (わたくし)ラキネは酷く動揺していた。


 発動された【魔王城】とほぼ同時に、ヲル様の意識が飛び地面に倒れ込んまれたのである。


 しかし、動揺した理由はそれだけでは無い。


 発動された魔王城はヲル様の意識が飛んでも尚、無限なヲル様の魔力を吸い続け成長を続けたのである。


 私がヲル様の魔力を送っていた右手に触れようとするとその魔力は反発をするように私の手を弾かせ、どうしようもない状況が一時間も続いた。


 私の能力も、何故か発動する事が出来ない。


 そして魔力の放出が止まり、同時に魔王城が完全に完成する。


「ヲル様!ヲル様ッ!」


 私は即座に駆け寄って今の状態を確認しようと手首を触れようとする。その時だった。


 壊れた傀儡(くぐつ)のように倒れていたヲル様が、ゆっくりと起き上がると私と目とヲル様の目が交差する。


「…ラキネか?」


 その言葉を聞いた私は、自然と瞳へ涙を浮かばせた。


「はい、そうでございます!」


 しかしそんな私の様子を機にもとめる事もなく、ヲル様は周囲を見回された。


 そして背後にある黒い薔薇のような異様な城を見て、目を見開かれる。


 それもそうだろう。ヲル様の意識が飛び、勝手に魔王城が創られたのだ。流石のヲル様でも動揺を隠せ……


 そんな事を思っていた時、ヲル様から思いもよらない言葉が小さく()れたのを、私の耳が聞き取る。


「なんで、ここにこれが…」




















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