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魔王城編 第2話 黄金の扉。

【 報 告 】

この魔王城編のみ、お試しという形で冒頭途中でタイトルを入れます。

 帝国から秘境へ向けて歩みを進めた二人は、道中を魔法の練習や体力の確認や強化をした結果一睡もせずに走り続けることとなった。


 その道中では、ラキネが自身の知識のほぼ全てをヲルに伝えている。


 そうして何事もなく二十三日経った今日、今まで走っていた森に突如濃い霧が現れる。


 しかしスレーラルの知識を元に行動をしているヲルにとって、それは驚くべきことではなく逆に待ちに待っていたものが近いというアイズであった。もうすぐ秘境に着くという事である。


 それから霧の中へと入って数時間が経つが未だ霧が晴れる事はなく、勿論だが秘境の影も形も見つけられてはいない。


 記憶では、もう着いていい頃だと思うのだが。


 そんな事を考えていると、霧の奥にある小さな影をヲルの魔眼が捉えた。


 それが何かと確認する為にヲルはその影の方向へと近づき、そして理解する。


「……こんな森に、村だと?」


 ヲルはスレーラルの記憶にはない村を見て、ほんの少しだが驚きの表情を露わにした。




 ーーーーーーーーーーーーーーー

 『今日から俺は、魔王となる。』

 ーーーーーーーーーーーーーーー




 俺は目前にあるボロボロな木の板を手で持ち上げながら、この村の状態について思考する。


「全て空き家か。」


 その言葉が終わると同時に、ラキネがその村の様子を見て思った事を報告する。


「最低でも数十年、あるいはそれ以上は使われていないように見えますね。」


 霧の森で俺が捉えた村は、文字通り廃村と化していた。


 扉はもちろんの事、家や井戸はボロボロで畑はなんとか形を認識する事ができるというくらいで、実際に使われていた時期を判断するなどは不可能に近い惨状である。


 そして、ラキネが言うように誰かがここを通ったような形跡もない。


 過去に滅びた村、そして最近も使われた様子がないのならばもうこの村はスルーすれば良い。


 俺はそう決めつけようとする。


 だが、何故かこの村に入ってから違和感のようなものを感じる。


 何か、そう。本当に何故かわからない。だが、胸に突き刺さるにも思える違和感を。


 それは魔王としてのものではなく、もっと根源にあるような。


 俺は無意識に細めていた目を戻し、深呼吸をする。


黄金の扉(イラーオヴィ)』…?


 唐突に脳裏で浮かんだ単語。だが、そんな単語を聞いた記憶は無く、もちろん魔王の知識の中にも無い。


 この村に来た覚えもない。元々、生まれてこの方クレセリア王国の領土から出た記憶もない。


「ラキネ、黄金の扉を知っているか?」


 一抹の希望も込めて、俺はラキネに聞いてみる。


「分かり兼ねます。」


 しかし俺の希望も儚く、ラキネの知識にも無い。


 ならばなんなんだ?

 思い過ごし?

 それとも、スレーラルとかいう人間か?

 いや、あれの記憶にもない。他の人間の記憶にもだ。


「いや、その前に。」


 ヲルは、重要な事を見落としていた事に気づく。


 何故、スレーラルという人間はこの村に来ていない?


 俺は、言うなれば彼女の記憶を布石に秘境へ向かっている。


 アレが忘れているであろう秘境への道も、全て俺の中で復元させ寸分違わぬ道筋(ルート)で来ていたはずだ。


 にも関わらず、村への記憶は一切なかった。


 霧の中だから間違えたのか?いや、確実に記憶と一致させた。これは、もう確信がとれている。


 俺は考察に考察を重ね続けた。


 幻?

 否。

 復元が不完全?

 否。

 あれから村ができた?

 否。


 いや、もしかしたら……


「……霧の中自体が別世界?」


 答えを今知ることはできないその疑問。


 しかし俺の発した言葉に、ラキネではない子どものような甲高い声が答える。


「ぴんぽーん。だいせーかーい!いやー、待ってたよー!」


「「!?」」


 その声を認識した瞬間、俺は瞬時に空中へ()()の漆黒色の剣を具現化させ、ラキネは頭上に白い炎を三つ生み出す。


宙を舞う闇の魔剣(ダンシングリベリオン)

白炎(ヘブル)


 俺はここへ向かう途中で、身体能力や魔力の底上げに徹した。


 それ故に、過去では三本だけしか扱えなかった闇の魔剣(リベリオン)も、今では八本ならば自由自在に操れる程度にはなっている。


 しかしこの濃い霧の中、俺の魔眼をもってしてもその存在を認識する事は出来ない。


「待ちんさーい!ボクはキミの敵じゃないよ?味方でもないんだけどね!!」


 三百六十度────全方向から聞こえてくるその声は、重複して聞こえるわけでもない。なのにも関わらず、その何かが声を発している位置すら俺では認識する事が出来なかった。


 俺は全神経を研ぎ澄ませながら聞く。


「誰だ?」


  それを待っていたと言わんばかりにその声は語り出す。


「キミに会いにきたんだよ!キミに!覚えてない?って、覚えられる訳ないかぁ。」


 少し残念そうな感情を含めた声で、その『何か』はそう言った。


 そして「ボクはね」と前置きを入れた上で、そいつは意味深な言葉を続ける。


「キミの案内を頼まれた妖精さ。魔王くん」




















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