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王女様は狂剣士 ~乙女ゲームの悪役令嬢に転生したのに気付いたら、すでにヒロインにざまぁされてました。その上、現在進行形で命狙われてます~  作者: 透坂雨音
第二部

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第16章 勉強会




 遺跡とテストの一件が無事に終わって、世界は確実に良い方に向かっているらしい。

 私達にはピンとこない事だったけれど、魔物に襲われる人の被害が減ったり、精霊使いの素質がある人が急に増えたりしているらしい。

 相変わらずいつも通りの日々を送っているけれど、私達って改めて考えるととんでもない事をしてしまったのでは……?


 それはともかく、その日は勉強会の日だった。

 私達は学生で、学生の本文は勉強にあるのだから、世界が大変な事になろうと良くなろうと、学校に通っている現状がある限りは、学びに励まなければならないだろう。


 でも、蓋をあけるとそこには悲惨な光景しか残らない。


 一体なぜ、こんな事に?


「どうしてこんな事になるのよ」


 眼の前に横たわる死屍累々を見て、私は頭を抱える事しかできない。


 頭が痛い。

 物理的にも、精神的にも。


 どうしてこんな事になってしまったのか。

 始まりは、何でもない一日だったと言うのに。





 ウティレシア邸


「スっテラちゃーん、やっほー。あーそびましょー」


 その日は、進級テストの件で遅れた分を取り戻す為に、皆で勉強会をする日だった。


 決めていた時間になれば、友人達が続々と家に集まって来た。


 一年の最後に出された課題が大変だったこともあり、今年の分は反省も含めて早めに予習をしておこうという事になっていたから。それぞれが持ち寄る教科書や参考書の量が結構多かったりする。


 やってきたニオが玄関口で、はしゃいでいるとそこにツェルトとライドがやってくる。


「そうだ、ここがステラの家。大きいだろ!」

「ふぅん、剣士ちゃんの家って感じがするのな。上品な感じだな」


 なぜかツェルトがまるで自分の家の様に自慢しているのは置いといて。

 家にあまり人を呼んだ事のないので、結構どんな感想を持たれるかドキドキしていたのだ。

 だが、彼らが口にしたのはいたって普通の感想だった。


「もっと、どーんと豪華なのかと思ってたけど、意外と普通? ステラちゃん意外に慎まし生活してるんだね」


 元王女という身分を考えて、もっと立派な所に住んでいるとでも思われていたらしい。

 残念ながら私の屋敷は、そこそこ名前のある貴族の家よりも小さいくらいの大きさだ。


 そこで悲しいかと思えば、そうではないから複雑になるが、とりあえず引かれはしなかったらしい。


「良かった……」

「え、どうしたんだステラ。そんな安心したような顔をして」

「ううん、何でもないのよ。気にしないで」

「ステラの何でもないは、何かありますが大抵だと思うんだけどな」

「何でもないってば」


 他の人と比べて一緒にいる(というか構ってあげている時間が)長いせいか、最近ツェルトの勘が鋭くなってきたような気がする。


 私の嘘も見破れるようになったし、なんだかんだいって何か困っているとよく手伝ってくれるし、気が付いてくれる。


 嬉しく思うけど、どうしてそんなに懐かれているのだろうという、戸惑いの感情もある。


「あれ、何かどこかで俺にとって不都合な勘違いが起きてる気がする、気のせいかな。ひょっとしてステラとか?」


 なぜか違和感の根源を私に聞いてくるツェルトを誤魔化しながらも、私は彼らを自分の部屋へ案内した。


 途中途中で家のスケールに驚かれたりはしたが、やはり懸念したような反応は出なかった。


 お金持ちだとか言われて距離が開いたらどうしようかと思ったけど、この分なら大丈夫そうだ。本当に良かった。

 ツェルトを家に招待した時は、何を聞いても「良い」とか「楽しい」とか「嬉しい」しか言わないから、逆に気を使われているのではないかと思って、ちょっと不安だったのだ。


 私は内心の緊張を悟られなように平静を装いながら、自分の部屋へと皆を案内した

 

「す、好きにくつろいでくれていいわ。ゆっくりして」

「ステラちゃんかわいー。ひょっとして緊張してる?」


 そんな事ないわよ。


 ニオの言葉に否定する言葉がぎこちなくないだろうか。

 なんか急に色々な事が心配になってきた。


「何する何する? 今日は楽しく思い出作っちゃおー」

「でも、こういう集まりって初めてだから何をすればいいのか分からないのよね」

「そこは人それぞれ、人の数だけある感じ。ひゃっほーい!」


 好きにしていいと言う言葉を受けてニオがさっそく、私が飾っておいたふかふかクッションにダイブしていた。


 慣れるの早すぎ。

 ニオの様子はまるで猫の様だった。

 それも、借りて来た猫で無い方の奔放な猫だ。

 それは好きにしすぎだと思う。


「友達の家ではー、楽しくお喋りしたりー、お菓子食べたりー、遊んだりするのが一般的かなー」

「それって、いつもやってる事よね」


 放課中にお喋りしたり、お菓子食べたり、遊んだりしているし。

 それを言うなら、特別な事は無いという事になるんだけど。

 それってどうなのだろう。

 お作法とか本当にない?


 私がそう言えば、ニオは何かを思いついたような顔をしあ。


「ないって、もー。そうだ、こういう事はもうちょっといつもはしない事をしたり、もう一歩踏み込んだりするかなー」

「例えば?」

「気になるあの人と急接近、とか、気になるあの人との恋の話とか」

「ええと、恋愛の事……かしら。それだと私、期待するような事喋れないんだけど」

「物の例えだよー。なんとなーく喋ってる内に、色々分かって来るから大丈夫。ふふふ、全てニオ様にまさせて、ステラちゃんはただ身を任せてくれるだけでいいのですよ、うふふふふ……」


 口調が怪しいのだけど、本当にただいつも通りの事をするだけなの?


 手をわきわきさせているニオを前にして冷や汗を流していると、外から扉がノックされて、聞き覚えのある声がした。


「お嬢様、お客様がお見えになられましたよ」

「ありがとう、通してちょうだい」


 部屋に入ってもらうように言って、アンヌが案内したのはエルルカだった。


「……何、やってるの」


 少し遅れて来たのは、お小遣い稼ぎで仕事をしていたからだろう。

 彼女は最近、町の人達に向けた占いの仕事で、忙しくしているようだった。


 そんな彼女は部屋の状況を身て、端的な述べる。


 比較的扉の近くにいて私達二人に、いつもと変わらない表情でじっと視線を注ぎながら。


「……へんたい? 邪魔なら、どこか行ってるけど……」

「え、えっと?」

「エルルカちゃんって、ひょっとしておませさん?」


 どういう想像をされたのか分からないけれど、たぶんそういうの違う。

 ともかく、これでメンバーが全員そろったようだった。


 シェリカも呼ぼうかどうか迷ったけれど、家の用事で予定を空けられなかったようだ。








 それから小一時間程。

 勉強会は、順調に進んでいった。

 でも、少し気が散るとすぐに煩くなるのがこのメンバーの特徴なので、一日が終わるまで油断はできないのが難点だ。


「うーん、難しい! もっと手加減した課題出してくれればいいのに」

「お、ニオちゃん。そこなら俺が教えてやれるぜ」

「やだ」

「即答! 見事なほどにすげない返事な」


 ニオとライドが話しを始めたかと思うと、今度はツェルトが私に構われたがって来る。


「なー、ステラ。ここの式ちょっと違くね。俺のも分かんないから、教えっこな」

「いいけど、ちゃんとまず自分で解きなさい。人に聞いてばかりだと、クセになっちゃうわよ」

「それはその通りだけど、うーんもっと合法的にステラと長話する方法ないかな」

「もう、お喋りしないで真面目にやるのよ」

「お喋りがしたいんじゃなくて、ステラと話したいんだけどなぁ」


 そうなると、空気が弛緩するのは早かった。

 皆休憩モードになって、雑談になりはじめてる。


「大変そう……」


 そんな空気を見てか、ひとり黙々と作業をしていたエルルカが話しかけて来た。


「そうね、正直大変かも」


 このメンバーの手綱を引く役になりがちな私は、いつも皆より一日に使う労力がかなり多くなっている事だろう。


 でも、と私は、部屋の中の様子を見て思う。

 次に発したその言葉はエルルカとちょうど被る形になった。


「楽しいわ」

「楽しそう」


 私達は顔を見合わせる。


 エルルカも私もきっと似たような表情をしているけれど、その中身は違うものだろう。


 私は彼女の表情を見て、問いかける。


「エルルカは楽しくないの?」

「私は……」


 浮かない表情をするエルルカは、何かを言いかけて口を閉ざした。

 悲しそうにしながら、顔を伏せる。


「姉さんだったら、ここにいてもおかしくなかったと思う。でも、私なんかがいても……」


 場違いだと思っているらしい。

 よく見ないと分からないくらいだったけれど、たぶんその時の彼女は、他の者達に羨ましそうな視線を注いでいただろう。


 エルルカはその場から立ち上がって、こちらに背を向ける。


「帰る。用事……、あるから」

「え? ちょっと待って」


 そんな流れでそんな事を言われたら、放っておけるわけないではないか。

 エルルカはどことなく私と似ているところがある。

 このまま見て見ぬふり何てできるわけがなかった。


 私は慌てて彼女の背中を追いかけた。




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