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何で学校にいたの?



 夢の衝撃から落ち着いた頃、私はどうしてステラちゃんが学校にいるのか尋ねてみた。

 すると。


「ええと、何か今夜あたりとってもショックな事があるかもしれないし、ないかもしれないから、目に届く所にいろって先生に言われて……」

「まさかの先生が過保護だったパターン!」


 メディックとかいう怪しげな研究者のお薬をしっかり警戒していたのは、プラス3点だが思わぬ過保護っぷりに引いた分が3点。


 友人が深夜の職員室でこき使われていた驚きの裏事実に驚愕したけど、実際に体験した事を思い出してそれも行きすぎではないかなと思い直した。

 ステラちゃんが、あんなショッキングなものを見てなくて良かったと思い、私はとりあえず安堵する。


「それでツェルト君は?」

「私が学校に泊まるって言ったら、俺もって言ってたから……」

「あー、うん、ツェルト君ステラちゃんの事大好きだもんね」


 そりゃ、そうなるわけだ。

 とても納得した。


 職員室には他の先生の姿が見えないので、ツヴァイ先生はもともと宿直当番か何かだったのだろう。

 いくら先生でも、好きな女の事二人っきりにはしたくないはずだ。


 視線の先では、ツェルト君が書類の山に埋もれながら寝苦しそうに寝ている。


 途中まではきっとステラちゃんの手伝いをしていたようだけれど、持たなかったのだろう。

 という事は、もしかしたらツェルト君もあの薬の被害にあってるかもしれない。


 ステラちゃんも疑わしいけど、これから睡魔に負けた時、大丈夫なのかな。


 そんな事を考えてたら、がばっとした感じでツェルト君が起き上がった。


「はっ、ここはどこだ。知ってる教室だ、俺学生、うん良かった」

「そこは知らない天井だって、言ってみたらノリが良くて面白かったんだけど、おはよーツェルト君。汗びっしょりだね」

「ん? 何でニオがいるんだ?」

「別に隠す事じゃないから良いけど、でも話すとそれなりに長くなるよ。色々あったんだよ」

「そっか」


 ツェルト君はいつも見せないような神妙な顔をして、私を手招きした。

 向かうと、ステラちゃんには聞かせたくないことがあるらしく、小声になって喋った。


 ツェルト君がステラちゃんの近くでふざけてない。

 とっても珍しい。


「なあ、大切な人が自分の敵になったらニオはどうする?」

「うん?」


 さすがの私でも、それだけじゃちょっとよく分かんないかな。

 もうちょっと聞かせてくれないと。


 視線で先を促すと、ツェルト君は離しにくそうに、何を夢で見たのか喋ってくれる。


「えーとだな、夢でちょこっと見たんだけど。俺にとって大事な人が……例えばだぞ。例えばステラとかが、俺の敵になったりして、俺の事恨んでて、俺もステラの事を憎んでたりしたらどうする?」

「ええー、何そのありえない展開。ちょっと無理がある話の流れだね。プロット作りからやり直した方が良いよ」

「プロットって何だ?」

「あ、そういう話でもない?」


 とにかく真面目な話そうだから、続きはちゃんと聞く事にする。


 それ、あれだよね。

 やっぱ薬の効果だよね。

 心配してたけど、被弾しちゃったみたいだ。


 ツェルト君んはその時の事を思い出しているのか、顔色を青くしながら声を震わせ、会話を続けていく。

 えーと、大丈夫?


「互いの大切な友達とか、友人とかが一人ずつ消えていくんだ。で、最後に残ったのが俺と相手の二人だけっていう、退くに退けない状況。そんなとこにいきなり放り出されたら、俺どうなっちゃうんだ。どうにもなってないよ。時間切れだったけどな」

「ああ、うん大変だったね、ツェルト君」

「あれ、ニオが俺に優しい? 珍しいな。うん、でもまあ凄い大変だった。あー、へこむなー」


 別にひどい態度で接した覚えはないが、ツェルト君的には珍しかったらしい。


 うなだれて落ち込む級友をそんな感じで慰めていると、扉を開けて入って来る男子生徒が一人。

 というか書類束を持ったライド君だった。


 割と珍しいシチュエーションのはずなのに、何だかいつものメンバーが集合してしまった。


「あれ? ライド君まで居残り?」

「あー、生徒会室の手伝いで、会長がドエスなもんでね」

「大変だねー、新学期用の書類に間違いがあったんだって?」


 なるほど居残り理由に超納得。


 生徒会の会長さんは、結構生徒にも人気で、仕事も早いんだけど、性格がアレなんだよね。

 ライド君は何でか気に入られちゃったみたいで、よくこきつかわれてるみたい。 


「そうそれな。よく知ってるな、ニオちゃん、そうなの俺、それで駆り出されてた。先生達もそんな感じで、忙しいみたいだわ。いやいや、そうじゃなくて聞いてニオちゃん。居眠りしてたら、変な夢見た。何か剣士ちゃんが学校の生徒に悪役みたいに嫌がらせとかしてて、最後にやり返されて刺殺される感じの。おかしいだろ?」


 ライド君は作り上げたらしい書類を、指定の場所に置いた後に、先ほどからずっと「?」を浮かべているステラちゃんに歩み寄って、肩に手を置いた。


「あー、なんかな。どんまい。」


 うん、ニオもそんな気持ち。

 ひょっとして、呪われてるのかな?


 ニオはもうちょっと幸せなステラちゃんの話が聞きたいです。


 ステラちゃんの運命って一体どうなってるんだろう。




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