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王女様は狂剣士 ~乙女ゲームの悪役令嬢に転生したのに気付いたら、すでにヒロインにざまぁされてました。その上、現在進行形で命狙われてます~  作者: 透坂雨音
第一部

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第27章 次の時代に、次の世代に



 それからは三人がかりで、何とかガーディアンを追い詰めた。


 首が一つだけになっても、馬鹿にできない戦闘力のままだけれど、力を合わせればそんなのどうって事なかった。

 いや、嘘だ。見えを張った。

 実際は結構厳しかった。


 痛みの混乱から立ち上がった竜の相手は骨が折れる。


 けど、それでも一人も欠けなかったのは、皆がいたからだと思う。

 誰が欠けても、きっと駄目だった。


「決定打になる攻撃があれば、良いんだけど」


 一番の攻撃力を誇る先生は戦闘を続けたせいで、もう力が出せないようだった。


「ステラード、こっち来い」


 そんな先生に呼ばれて、戦闘の隙を見て私は近づく。

 ニオ達やツェルト達だけでも頑張っていられるのは、今までに相手に与えたダメージのおかげだ。


「お前がトドメを刺せ」

「わ、私がですか? でも私の剣の腕じゃ」


 どう考えても力が足りないはずだ。

 だが、代わりに先生はとんでもない事を提案する。


「お前を勇者の後継者候補にするから、その力で切れって事だ」

「後継者……えぇぇ!」

「何だ、嫌なのか」


 嫌ではない。とても嬉しい。だが勇者の後継者なんてだいそれたものが、自分であって良いのだろうか。


「ロクデナシのこんな俺でもなれたんだ、お前なら余裕で問題なんてないだろ」


 私の顔色を読んで先生はそう言ってはくれるが、いきなりな提案過ぎてこちらは考えが追いつかない。


 だが、先生はそんな時に限って意地悪な事を言いだしてくる。


「時間が無い。ステラード、俺はお前ならできるつって声かけたんだ。師匠の期待に応えてくれねぇのか?」


 でも、分かっている。それが先生なりの優しさでもあるのだと。


「そんな風に言われたら、答えないわけにはいかないじゃないですか。良いですよ、先生より立派な勇者になってみせますから」

「よしよし、その意気だ」

「子供扱いしないでください」


 ちょっとは一人前として認めてくれたと思ったが、まだまだ先生の中では私は未熟者みたいだった。

 それでも、自分の後を継がせても良いと考えてくれているのなら、見所はあると思われているのだろうか。


 その後に行ったのは、簡易的な継承儀式。


『明ける空の担い手から、導の星へ。俺の力の一端を譲渡する。その力は光。その力は導。彼女は、万物の、生きとし生けるあらゆる生命の望むべき未来の先へ行く。新たな道を示す者なり』


 そう言って、私の手を取った先生。

 数年前はいつも私の頭を撫でてくれていた、安心できる手のひらだ。


 その手から、何か大きな力の流れが伝わって来る。


「これで?」

「ああ、完了だ。と言ってもまだまだひよっ子程度の力しか渡してないけどな」

「……」

「何だよ、不満か」

「いえ、ああいうかしこまった言い方もできるんですね。それと、先生にステラードじゃなくて彼女って呼ばれたのは何だか新鮮で」

「そこかよ」


 望んだ答えではなかったのか、先生は脱力する気配を見せる。


「変な意味じゃねぇから安心しろ、俺の隣は予約済だ。それはまあ、あれだ……一人前への第一歩だ」

「変な意味?」

「言うんじゃなかった。何でもねぇよ」


 よく分からないが、先生がステラの事をほんの少しだけ認めてくれた証ならそれでいい気がした。


 体の中にある大きな力を意識しながら、鬼の力を使って渡り合うツェルトとニオの様子を伺う。


 学生である二人が一瞬と言えども竜と戦う事が出来ているのは、相手の力がもうわずかしか残っていない事の証拠だった。


「二人共、下がって。後は私が」


 声をかけて、二人が十分な距離をとったのをみて、私は剣を構える。


 暴れる竜と一瞬だけ視線があった。

 遺跡を荒らしているのはこちらで、相手はただ自分の場所を守ろうとしているだけだとは分かっているが、ここで死ぬわけにはいかなかった。


「ごめんなさい。でも私達は貴方に勝って帰りたいの、だから眠ってもらうわ」


 竜へと向かって、剣を振り抜く。


 その一撃は、重く。

 勇者の力を守ったものであり。

 弱った竜に最後のトドメをさすには、申し分のない物だった。


 床に倒れた竜が最後にもがいて、くわえたがれきをこちらへ飛ばしてくるが、避ける必要はなかった。


 ステラ達の前で、粉々に砕かれたそれは、地面へと落ちていく

 やがて力尽きた竜が瞳を閉じるのを見届けて。戦闘が終了した。






 遺跡の中を駆けまわって温まっていた体の熱がすっと引いていく。


「いるんでしょう、出てきなさい。ライド」

「あらら、バレちゃってた?」


 私が背後に声をかけると、聞きなれた声が帰って来る。


「あ、ライド君。今更来て何のつもりー」

「怒んないでってニオちゃん。俺だってちゃんとさっき活躍したじゃんか」

「えーどこが?」


 肩を怒らせてライドに詰め寄るニオに、ステラは先程の事を説明する。


「竜の最後の攻撃をどうにかしてくれたのは貴方でしょう? どういう力かは知らないけど、王族に依頼をされるくらいだもの。特別な力の一つや二つあってもおかしくはないんじゃない?」

「ええ、さっきのバラバラってなったの、ライド君の仕業なの!?」

「ご名答。まあ、正体に関しては企業秘密って事で、これでも危ない橋を色々と渡ってるんでね。ところで……」


 ライドは、その場にいる者達を一人ずつ眺めてから、最後にステラに問いかけてくる。

 色々とお見通しの様だった。


「収まるべきところに収まったみたいだけど、俺の処遇はどんな感じなの?」

「保留かしら」

「あらら? それで良いの? 剣士ちゃんちょっとお人よし過ぎない?」


 それはニオにも言われた事だ。


 だが、そんなに彼が思っているより善人ではない。

 ニオは結局誰も傷つけなかったが、彼はツェルトを刺したのだし。


「そんな事ないわよ、ニオは許したけどライドは保留だもの」

「いやそれでもねぇ」

「だから、ツェルトの分まで許されるとは思わないでね」

「あ、なるほどね」


 場を明け渡したツェルトの制裁は、笑顔を見せてからの腹部へのパンチだった。

 男の子の仲直りの仕方となると、皆あんな感じなのだろうか。

 他の例を知らないので、分からない。

 ともかく、彼等二人が何か言い合っているのを横で聞きながら、私はこれからの事を考える。


「学校に戻って退学にならないといいけど」


 最悪の事態は防げたものの、これからの事を考えると少し憂鬱になってしまった。

 そんな気分の私の頭に誰かが手を載せる。

 先生だ。

 確かめなくても分かった。


「それを何とかするのが俺の役目だろ。課題リストの不具合は向こうの非なんだから、それで何とか押し通してやる」

「あ、それなぁ……」


 だが、珍しくも頼もしい先生の言葉に口を挟むのはライドだ。


「いじったの俺なんだわ。生徒会の仕事を手伝ってる時に。ほら、生徒会って教師近くの領分もウロチョロするだろ。ぼろ雑巾として最近よくこき使われてたから」

「うわー、ちょっとライド君、空気読みなよ。せっかく大円団になりかけてるのに」


 ニオの言う通りだと思う。







 とりあえずライドの一言は聞かなかった事にした。


 生徒達と合流して、ちょっとだけお願いしてニオ達の事を口止めし、遺跡を出た後は無事に帰った。

 その後で、フィンセント騎士学校の教師と舌戦を繰り広げた先生は、本当に私達に述べた通りに問題を何とかしてしまった。


 それで罰を免れたその代わりに清掃などの罰をいくつか言い渡されてしまったが、そこは仕方がないだろう。


 そのついでといっては何だが、不備があった課題リストの影響で試験が中止になったのは大きな変化だ。


 公平な課題の合否が決められなくなったと言う事もあって、一年生たちは臨時の措置で全員課題が合格になった。


 私達は、例年より一足早く二年生への進級が決まったのだった。


 ……。


 そういえば、あの後先生は遺跡の中で何かしていた様だった。

 女神さまの復活がどうのとか、動かす遺跡がまだ足りないとか。


 学校に帰って来てからも、各地の遺跡の場所について調べていたりしている。


 先生がこの学校にやってきた事となにかきっと関係があるのだろうけれど、私はとりあえず聞かないで置いた。


 今はただ戻って来た日常を味わっていたい。

 何かあるにしても、できれば先生の方から話してくれれば良いと思ったのだ。



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