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9.路傍の花

 世界がおかしくなってから1ヶ月近くが経ち、市内は上下水が復旧して、どうにか町らしさを取り戻しつつあった。


 私は今、熊とこどもと『番狂(giant -)わせ(killing)』と同棲している。




 国土の地下全域にダンジョンができている。手近な京都御所にある入口から中へ入る。

 守衛は私に気づきはしなかった。まぁ仕方がないか。


 ゴブリンの後ろに回り込み、後頭部を金槌で思い切り殴る。死んだゴブリンが燃え尽きるように消え、ビー玉ほどの玉が一つ残る。これが1個2万ほどで買い取られる。だいたい元のひとり暮らしのひと月分の電気量を賄える。倒した後に玉が残るのは4回に1回程度。


 はじめは小剣で急所を一突きしようと考えたが、非力な私では刃が流れたり通らず無理だった。実際は金槌みたいな重いもので頭でも殴ったほうが非力な者には効率的だ。


 流れ作業で見かける鼻からやるだけだ。割とラッキーでどうにか玉を4個手に入れたところで終わりにした。


 森で小さな紫色の花に噛みつかれ、咄嗟にそれを引き千切って捨てたというだけの夢をみた。


 起きたら、世界がこうなっていて、私は誰にも気付かれなくなっていた。声を掛けようが、肩を叩こうが。他人に全く気付かれないというのは、便利な反面、非常に不便で危険だ。


 ダンジョン入口近くの市営買取所に行き、客が途切れた頃合、職員が下を見たときにスマホの音を鳴らす。彼がこちらを見ると私はちゃんとそこにいる。客が来ていると探してくれたとき、認識される。

 直接、声を掛けたり、私が足踏みで音を出しても気付かない。スマホが音を出し、スマホにはその持ち主がいるから反射的に探す。そういう現代人の無意識行動の結果だと結論付けた。


 見えていても、むしろ見えているからこそ、気にしていないものをわざわざ更に探しはしない。でもそれはほんのきっかけ一つで変わる。そのことを重々注意して行動するのにようやく慣れてきた。玉は2つ換金した。


 買取所から出ると、表が騒がしかった。

 熊と男の子と『番狂わせ』だ。話題の有名人達。

 近頃は異世界人もちらほらと町で見かけるようになってはいたが。


 玉で電力が供給出来ると告知され。手に入れた玉でスマホを起動したとき、ブラウザを起ち上げると勝手にどこかに繋がった。


『COD’S SITE』と銘打たれており、次のコンテンツがあった。 

・変化後の世界のある程度の仕様解説

・各地のリアルタイム映像

・掲示板

・オークション

・動画投稿、配信、ブログ、拡散系の各種SNS

・個人情報管理

・ランキング


 最後のランキングは、強敵を倒した者のランキングが載せられている。

・5位 『番狂(giant -)わせ(killing)』 Lv 6 戦士(brave) 132pt 単眼の巨人(サイクロプス)の単独撃破

    活動拠点 京都 日本 出身 (the)(earth)


 気の毒なことに顔写真付きだ。2番目のリアルタイム映像とともに一体どこから撮っているんだ。


 そういうわけで、彼は顕示欲の強い腕自慢に付け狙われ、もう何人も返り討ちにしている。私ならたぶん気付かれることなく後ろから一撃必殺できるだろうが。


 気付かれず、、、。何となく彼らの後をつけて歩いた。マンションまでついていく。熊さんが玄関で梃子摺っている間に中に入った。幼児がTVでアニメのビデオを見たりして過ごしている。

 

 それから、一緒にダンジョンに同行したり。

 

 私は今、熊とこどもと『番狂(giant -)わせ(killing)』と()()()同棲している。 



路傍(wayside -)の花(flower)

『此の特性を持つ当該者を認識しようと意識していない状態の者は、当該者が視界に入ろうが音を立てようが接触しようが認識しない。当該者より小さいものに限り身につけているものに効果が及ぶ。』

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