7.考察
運が良かったのだ。『番狂わせ』の発動が間に合っていなかったら、やられていた。そして二重に運が良かった。『番狂わせ』は、脳筋型のモンスターに対して絶大な効果を発揮するだろう。たぶん、名前から、夢であのゴブリン『番狂わせの グヴィン・ゴヴィン』を殺したことで得た特性だろう。ダンジョンの夢は元こちらの世界の住人は皆みたようだが、皆が何かの特性を得たのだろうか。
「凄かったねぇ。まさか一人で倒しちゃうなんて。二体目の単眼の巨人が出たときには、助からないと思った。」
サイクロプスを倒し終えたミシェルが裸のまま駆けよってきた。
「あたしも絶対死んだ、悪かったなって思ったさ。それにしてもあんた、見かけによらず凄い怪力だね。巨人と力比べして、逆に返り討ちしちまうなんてさ。こっちの世界にも普通の人間じゃぁないのがいるんだねぇ。」
マーゴもやってきてミシェルと俺を呆れたように見ながら相槌を打つ。
「『番狂わせ』!『番狂わせ』!」
ミシェルがはしゃぎながら連呼している。
「随分珍しい特性だね。」
どうして俺の特性が分かったのかと思っていると、マーゴが察したらしく教えてくれた。
「強力な特性が発動すると、近くにいるものにもそれが伝わるんだよ。でもたぶん、そういうのは特性強化で防げるように出来る筈だよ。」
実は、単眼の巨人の玉の分で、まだ特性強化をすることが可能だ。単眼の巨人はそれだけの強敵なのだろう。
ただ、また選択肢が二つ出てきたのとミシェル達を気にして保留していたのだ。
一つは、特性発動時に、脳内に勝ち確BGM(負け確BGMでもある)っぽい曲が流れるようになる。
マーゴが言ったようなのとは違った。てか、何だこれ。
二つ目は、前の選択肢がそのまま残り、『番狂わせ』の発動率を上げることができる。
俺は一つ目の強化内容をみたとき、こんなことになった世界を管理する者の存在を確信すると同時に、馬鹿らしく、情けないが、大事な何かを共感して一つ目の強化を選ぶことにした。
今となってみれば、世界がこうなる前から、音楽など芸術鑑賞で、心を打たれ、盛り上がるのだって、似たようなものなんじゃぁないか。みんな何故だかわからなくても受け入れていた。
休憩をとりながら、『番狂わせ』の仕様について少し考察してみるか。
ミシェルは、回復の自然の呪歌を全員にかけていた。マーゴはどこからか狩ってきた野兎を調理し始めた。森は動物、果実と豊富な食料を恵んでくれる。モンスターの脅威にさえ対処できればだが。
さて、『番狂わせ』の説明を読んで考えたのだが、疑問がある。それは、複数の敵を相手にした場合、どうなるのか。例えば自分より強い2体の敵と弱い3体の敵とほぼ同時に戦闘開始となった場合。
1.ほぼ同時とはいえ、0.01秒でも早く戦闘開始となった相手を基準として、発動の判定、及び、効果の決定をし、その相手との決着がつくまで、他の敵に対してもその効果(基準となった敵から算出される力を得た状態)のまま続く。
2.1集団で1つの相手とみなし、合計値を基準として、集団の最後の1体との決着がつくまで、その効果のまま続く。
3.2と同じだが、平均値を基準とする。
4.2、3の場合で、敵が減ったさいに、再計算される。
5.考察として大雑把だが、発動判定、効果判定を、相手ごとにする。この場合、切り分けが多すぎて面倒になり、とりあえず一まとめとした。
複合や全然他にも考え方があるだろう。想定したとしてもやってみなければ分からないのだ。やってみても正直体感で判別できるだろうか。特性強化でさらに詳しい説明が出てこればいいのだが。
思索から戻ると、ミシェルが毛皮をかけられてスヤスヤと寝息を立てていた。
梟熊形態、特に飛行は相当疲労するらしい。
勢いで推敲もせず直打ち投稿していることがあり、投稿後に、特に1時間くらいの間、文章手直しすることがよくありますのでご容赦下さいませ。




