6.単眼の巨人
梟熊形態のミシェルが空中から急降下し肢で頭を狙うが、巨人は棍棒でそれを防いでいる。
単眼の巨人。神の末裔である種のおそらく劣化種なのだろうが、体長5m弱、体重は1tを優に超える。
2mを超える巨体と600kgの重量を誇る熊人マーゴが、サイクロプスの前蹴りで軽く吹っ飛ばされた。ちなみに梟熊形態のミシェルはそれより少しでかいが。
マーゴという熊人は存在自体がかなりファンタジーだ。彼らは大熊が二足歩行しているような見た目だが、言語を持ち、複雑な道具を作ることもできる等、人間並みの知能を持つ。そして今は、言語を持つものは、皆そうなるのか、俺たちともその言葉が通じるのだ。兵装は、金属兜をかぶり、強化手甲、革肩当、膝当をつけている。格闘タイプなのがサイクロプスとは相性が悪いみたいだ。
いきなり出会った単眼の巨人との戦闘になるとき、俺は逃げてもいいかミシェルに尋ねたが、「足が速いから無理。頑張って攻撃かわせ。」とアドバイスされた。
彼はスバッと堅皮鎧を脱ぎ剥がすと、「うーっ!がんだぁー!」と鉾斧を両手で意味深に横から縦に回転させながら変身した。
そして、二匹?でコンビネーションをとることで、何とか互角以上に戦い今に至っている。
だが、まずいことが起きた。
二体目の単眼の巨人が俺の傍に回り込んでいた…。
守護神達は、手が離せないらしい。そんな強敵の同類を俺一人で何とかできるわけがない。
俺など、一撃もらえばお陀仏だ。根本的にサイズが違う。戦いは質量の差で決まり、差があるほど短時間で片が付く。
せめて、片足靴屋のブギィに『大地の饗宴』を皆にかけておいてもらいたかったが、さっきまで散々荷物を持たせて連れ回したせいで、今は精霊界(仮)でクールタイム中だ。
頑張って避けることに集中、しなければいけない筈が。振り回してきた棍棒を、鈍臭く避けられない!それが現実世界住人の無様な現実だった。
「あかん死ぬっ!」
俺はもうただ我武者羅に鉈で受けようとし。その時。
――『番狂わせ』発動。言葉でも声でもない感覚で頭に強烈に浮かんだ。――
非力なハズのこの俺が、巨人の放った棍棒の殴撃を受け止めている。手にズシンと電流を受けたような痺れを感じるが、あの重かった大鉈の重さを今は全く感じない。力みなぎる。
俺は棍棒の重心をずらし、回り込むと、奴のひざ裏、かかと上のアキレス腱、と鉈を叩きつけた。
巨人が片足から崩れ転ぶ。
俺は雄叫びを上げながら、ところ構わずメッタメタに鉈を打ちつけまくった。
戦いは質量の差で決まり、差があるほど短時間で片が付く。俺の質量は今どうなった。
サイクロプスは、急激な多量の失血で、ついには絶命した。
血臭ただよう中、疲れ果て座り込んでいると、目の前のサイクロプスの亡骸は灰が燃え尽きるように消えていき、後にはこぶし大の玉を一つ残した。
拾い上げると、瞬間それが伝わってくる。
俺は『番狂わせ』という特性を持っていて、この玉を使ってそれを強化できると。
そうしたいと念じると、玉は輝き、そのひかりは全身に吸い込まれた。
今度は、二つの選択肢が発生した。
一つを選べば、『番狂わせ』がどういう特性なのかが分かるようになる。
もう一つは、『番狂わせ』の発動率を上げることができる。
二つ目の選択肢が出た時点で、『番狂わせ』が確率発動型の特性だと分かった。だが、俺は当たり前に一つ目を選んだ。
・番狂わせ
『発動すると、相手の力が自分より強い場合は相手の倍、弱い場合は相手の半分の力にされ、同時にそれを行使し得るだけの肉体的頑強さを得る。戦闘開始時に最初の判定がなされ、発動しなかった場合、以降3分毎に再判定される。発動すると戦闘の決着がつくまで効果が続く。』




