12.青褪めた夜
俺達はモンスターを片付けた玄室で大きく重厚な宝箱を発見した。
「なにかなー。なにかなー。」
ミシェルがノリノリで宝箱を開ける。
―― トラップ魔法発動! テレポーター! 付近の生物は指定あるいはランダムな場所に瞬時に強制魔法移動させられる。 ――
彼はハッと目を見開くと茫然と謎の笑みを浮かべつつ凍りついたような表情で一瞬気まずそうに俺と視線を合わせた…。
俺たちは飛ばされた。
飛ばされた先で、、、
俺は何者かの強烈な尾撃を食らった。即死級の、全身がバラバラになるような強烈な薙ぎ払い。吹き飛んだ先にあった金銀玉の積み上げられた財物の山に叩き付けられぶち崩した。意識が飛ぶ。
『戦士』の職業恩恵、立ち向かう意思を失くさない限り、致死損傷を受けた際、日に一度だけ、レベル%分だけは生命維持可能な程度に身体を守る、のおかげで即死はまぬがれた。現在、Lv 10。
一人一緒に飛ばされたブギィが駆け寄り『大地の饗宴』をかけるが、身体外部と内部の損傷激しく回復が追いつかない。どうにもならない。
そこは何箇所か結晶柱が白い光を放つ、天井も何も駄々広い空洞で、どういうことかモンスター達が対峙している。
「ひとの寝ぐらに乗り込みやがって。ホント邪魔くせぇな。」
全身をとても堅そうな青玉のでかい鱗でみっちりと覆い、胴体より大きな巨翼を備えた体格の良い巨大なアブロニアのような生物がそうしゃべった。
頭に二本、威武堂々と角が伸びており、体長7、8m以上はあるだろう。
対して睨み合っている相手は、背に翼をもつまるまると玉のような4mを超える巨大なでぶ。それが2体。明るい黄緑色の肌に牡牛の二本角を耳の上から前方に生やす。
ブルーサンダードラゴンの棲処にピット・フィーンドが殴り込んだ構図のようだ。
刹那、ピット・フィーンド達が火の玉を撃った。
ドラゴンは突撃。ダメージをまるで構わず一匹を噛み砕く。致命傷にいたらず。もう一匹が長大なハンマーを叩き付ける。臀部でそれを受けると、ドラゴンは尾を強烈に叩き付け、二体の動きを制限する。
口を開け、浄火と雷の混じり合う息を吐き、焼いた。ピット・フィーンドにただの炎は効果がない。さらに、爪で引き裂き、今度こそ噛み砕いた。
ピット・フィーンドは灰と化し消える。後に1本、巨剣が残る。
やがて、ドラゴンの眼光が『番狂わせ』を捉えた。横でブギィが頬を張っている。
『番狂わせ』はぼんやりと意識を取り戻す。何故か生命力も損傷も本当にわずかずつ回復している。
「ドラゴンがいるな。あいつにやられたか。よく生きてたな…。まぁ助かるのか微妙だろ。」
ドラゴンは『番狂わせ』達を無視すると、空洞の一点をにらみつける。
そこに、でぶがいた。
ピット・フィーンド、、、の変異体なのか。紫の皮膚。5m超、サイクロプスを超える上背に圧倒的な重量感に圧迫感。いや圧迫感は質量だけではない。恐怖を振りまく凍り刺す気配と見たものを狂わせる猛烈ぶさいく極めた容姿だ。
「『酒呑』。もうでぶは帰ってくれ。相手したくない。」
「久しぶりに宿敵『サッピルス』ちゃんに会えると胸を震わせてやってきてあげたのに。乙女心が傷つくわー。まぁ、身の程わからないウチのがご無礼した様で、それは別に相変わらずの精悍さでステキだけどネ。」
でぶがウインクをして、ドラゴンが心底嫌そうな顔をした…。




