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最果ての翠玉  作者:
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馬車の中で

大国ルノワールの宰相ルーク•タイスは自身の目の前に座る少女を興味深く見てしまう。


余りにもエヴェリーナ王女に生き写しで自身が文官として王宮に上がった時の王女が時が止まったまま現れた感覚に陥るからだ。

冷静沈着であると自負している自分でもイーサン家で初めてオリヴィアを見た時には思わず全王女の名を呼んでしまった。


「そんなにお母様に似ていますか?」馬車の外に目を向けていた筈の緑色の瞳でルークを真っ直ぐに見据えて尋ねる少女に最初に抱いていた印象がここまで変わる人物も珍しいとも感じていた。



最初はルノワール王国の翠玉とその王家特有の瞳になぞって宝石と称えられる位美人であった母親譲りの儚げな美貌と共にイーサン夫人に支えられる姿は大事に育てられてきた令嬢の様であまりにもその様子にぴったりだった。


その次に父親を傷つけられたと時の憤りはその小さな身体の何処からその力が出るのか不思議になる程全身で怒りを表わしていた。その後に逃げ場がない事が分かると落胆を隠しきれていないにも関わらず父親の事を考えて泣く事を堪える姿は全身で喜怒哀楽を表現し何時も静かな微笑みをたずさえて令嬢の鏡の様に奥底の考えが見えなかったエヴェリーナ王女とは正反対の印象を抱かせた。


これからこの実直な少女が巻き込まれるであろう中央の権力争いを想像し巻き込んでしまった張本人としては冷徹な宰相として名を馳せているルークでも罪悪感を感じ得ずにはいられなかった。


ため息ひとつを飲み込む様にして少女の質問に答える「先程はエヴェリーナ王女とお呼びしてしまい申し訳ありません。ええそうですね、瓜二つと言っても過言ではありません。私以上の年齢の物はエヴェリーナ王女の事をご存知です。皆一様に同じような反応を取られると想像して頂いて構いません。」


特に気分を害した様子も見せずオリヴィアは質問を重ねる

「分かりました、私は今後どういった経緯で王宮に上がる事になるにですか?」


「ライリー殿下の一般市民から見初められた寵姫として王宮に上がって頂く事になります。エヴェリーナ王女は除籍されており正式に王女の娘として王宮に上がればオリヴィア様の存在を喉から手が出る程欲しがっていた貴族の方々に新たな攻撃の手を与える事になりかねませんので。オリヴィア様の存在を我々の陣営にある事を示し相手側に取られる事のないようにする事が目的です。オリヴィア様の容姿は先程申し上げた通りエヴェリーナ王女にそっくりです。公然の秘密といった形オリヴィア様にとって頂きます。」


オリヴィアは「そうですか、分かりました。その事でお父様やイーサン夫妻へ害が無いように十分取り計らって頂けのですよね?」と自分自身に与えられている課題を特に気にした風もなくただ愛する人の心配だけを口にする。

「必ずその点についてはお約束させて頂きます」

ルークの言葉に少し安心したように頷いてオリヴィアは再び窓の外に目を向ける。


極度の混乱と父の手前泣くことも出来ずにいたオリヴィアの気持ちを表すかの様に馬車の外ではシトシトと雨が降り始め早朝にも関わらずどんよりと辺り一面が暗い雲に覆われていた。

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