表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レゾンデートル・オン・ザ・ムーン  作者: 伊豆泥男
第2章 月と義妹と生きる意味
7/8

第0話

「42」


 「それ」が口から放った数字と同時に、壁がひしゃげ、床は剥がれ、天井は落ちる。最先端の技術を結集して造られたであろうウェブスターの居城が、積み木のように崩れる。


 その数字自体には意味はない。あくまで算出された結果に過ぎない。しかし、そこに行きつくまでの計算が異常なのだ。本来ならば、世界中の量子計算機を直列につなげ、さらには膨大なエネルギーを費やさなければ行えない演算。「世界の答え」を求める方程式。そんな莫大な演算を「それ」は、その小さな肉体ひとつで、知育玩具のパズルでも解くようにさらりと導き出す。その異常な計算能力に、現実そのものが辻褄を合わせようとする。――この破壊は、その結果生じたものだ。世界が、本来演算に必要であるはずのエネルギーを、周囲の物質から無理やり巻き上げようとしている。質料を強引にエネルギーに変換することで発生する余波を、「それ」は更なる計算により自分の意図したところに発生させ、暴力的な破壊を巻き起こしていた。


「42」


 もう一度、数字が放たれる。兵士のウェブスターが、研究者のウェブスターが、役人のウェブスターが、演算の副産物により引きちぎられる。武装したウェブスターらも、世界そのものからの破壊には耐えられない。「それ」の引き起こす計算の帳尻を合わせるためだけに、ウェブスターたちがバラバラに分解されていく。


 余波により拘束を完全に破壊しつくした「それ」は、ユダと俺を見つける。にたりと、顔の端まで裂けそうな笑みを張り付け、「それ」はこちらに歩を進める。その姿は、悪魔か、天使か。とにかく、地球人にも月の神にも見えないことは確かであった。


 一体どうして「それ」――すなわちカグヤは、こんな化け物になってしまったのか。俺は記憶を整理する。


 話は、地球時間で二日前に遡る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ