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洗車しようぜ

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 二学期が始まり二週間が過ぎた。

 俺は夏休みの間にバイクを手に入れ、その他色々あった。

 友人のデリは最近ラップにはまっているらしいが、どうでもいい。

 もう一人の友人クロスケはスマホゲームで猫を集めているらしいが、こっちもどうでもいい。

 ヘいぞーは最近忙しいのかあまり捕まらない。


 そして斜め前の、杉明菜さんとの関係はそのままだ。

 目があえば挨拶はするし、席が近いので勉強のことで質問したりされたり、それ以上の会話は無い。


 深夜走行の後、時々スピアーになった杉さんが戦っているのを目撃したりもするが、槍形態を手に入れパワーアップしたのが利いたのか、俺が手助けする必要なく一人で片づけている。

 もともと関係の薄い間柄だし、それ以上の進展もないだろう。

 クロスケに聞けば、それなりに情報に通じてそうではあったのだが、あえて聞かないことにしている。

 これ以上首を突っ込んでも、特になることはなさそうだからだ。

 たぬきうざいし。


 そして日曜日、洗車でもしようかと起き上がった所でへいぞーから連絡が入る。


「サク、おひさー、ツーリングいこーぜ!」

「いきなりだな、へいぞー」


 なんでも最近忙しそうにしていたのは、ツーリングのための資金造りに励んでいたとの事だ。


「しかし、俺のインパルスは400、お前のKSRは110ccだろ。ペース合わせにくいぞ」

「心配しなさんな。実はニンジャ250に乗り換えたんだーーー!!」


 おお、そいつはびっくりだ。


「ま、サクだって最近買ったばかりなんだろ。今日はお互い慣らしってことでまったり行こーぜっ」

「そうだなぁ」


 デリはけっこう回すし、クロスケに至っては泥遊び派だ。

 たまには男二人でまったりツーリングに行くのも悪くはあるまい。


「待ち合わせは…」


 翌日の放課後。


「という事がありまして」


 いつものようにデリ、クロスケと集まって雑談をかわす。


「ンー、じゃ何でへいぞー居ないん?」

「昨日のツーリングで調子に乗って金使いすぎて、また金策に走ってる」

「うわ、アホだ」


 デリの評価は容赦ない。


「ンー、最近あっちの方はどうなん?」


 クロスケいうあっちとは、おそらくあのことだろう。

 上代公園で何度か遭遇した魔法少女と黒魔獣と呼ばれる敵の戦い。


 斜め前の席に座る、地味なクラスメイトの杉さん。

 二人にはまだ彼女の正体は明かしていない。

 しかしクロスケは以前からご町内の異変を察知していたフチがあるし、デリはよく分からん。


「特に進展無いわ。出番もないしね。このままフェードアウトして普通に暮らす」

「ンー、ま、それで行けるならそれに越したことはない」


俺は違和感を感じた。この言い方はクロスケらしくない。

それにこの件は一歩引いた感じで、こちらから質問を引き出すようなマネはしそうになかったんだが。


「ンー、実はちょっと事情があって、先週何度か様子見に行ってね」


 ほう、そいつは興味がある、俺意外の目にアレがどう映ったのか。

 デリも興味を引かれたのか、食いついている。


「ほう、どうだった?魔法少女かわいかった?お前は何ライダーって名乗ったん?」

「ンー、何かしらの『チカラ』が動いている気配はあったんだが、公園には入れなかった」

「あ?どういうこと?」


 俺は先週は直接介入していないが、公園に入って戦いを目撃している。

 俺は普通に入れて、クロスケは入れないとはどういうことだろう?


 「ンー、文字通り。公園には『何らかのチカラ』を察知できない人間は近づけないようになってた。そして察知できても物理的に入れないようになってた。たぶん結界的な何かがあるんだな」


 俺が疑問に頭を捻っているうちに、デリがまとめに入る。


「要するに当事者以外は立ち入り禁止ってわけだ。それなら公共の場でバトってる割に誰にも目撃されず、周囲の噂にもならないってのにも納得がいく」


 言われてみればそうだが、そうだったのか。


「あのけっこう抜けてる杉さんが、秘密を維持できるのも納得がいったわ、いやーすっきりすっきり」


 うん、そうだな。


「…ってデリぃぃぃ!なんでお前が魔法少女が杉さんだって知ってんの!?」

「ンー、そこまで情報掴んでなかったんだけど、魔法少女って杉さんだったの?意外だなぁ」

「いや、サクが魔法少女の正体掴んでるっぽいけど、話さないんでカマかけてみたんだけど、当たりだったか、いやー、俺すげー」


 しまった、罠か、狡猾な!


「そもそも俺、けっこう抜けてるとか言えるほど杉さんのこと知らんし」

「ンー、俺もあの子のことはよく知らんな、そもそもよく知ってる女子居ないけど」

「言われてみれば俺もよく知らんわ」


 とはいえ、確認しておかなければならない。


「てか、デリよ。カマかけるにしたって、どこで杉さんに目星つけたんだ?」

「ああ、なんかよく分からん二足歩行するタヌキっぽいの連れて、商店街歩いてるところ見かけた。あんなの普通いない」

「そこか!」


 杉さん、もうちょっと警戒しろよ。


「そんなの不思議生物連れ歩くって、まぁ怪しいし抜けてるって評価になるだろ」


 そこから来たのか、確かに良く知らなくても抜けてると言わざるを得ない。

 デリの謎が解けたら次はクロスケの方だ。


「で、お前は何でチカラだの結界だの把握してるわけ?」

「ンー、俺の家、上代神社の管理を受け持つ家系でさ。その関係でいろいろあんのよ」


 上代神社は、上代公園の近くの丘の上にある小さな神社だ。今は神主不在で近隣の寺社関係者が管理していると聞いたが、クロスケの家が関わっていたのか。


「ンー、あんまり部外者には話せない事柄とかあるから、これ以上突っ込まないでくれるとありがたい。お前がこの件に関わって、どうこうしようってんなら、いくらか開示できる情報もあるけど」

「だったら、それは今はいいや。また深く関わるようなことがあったら話してくれればいい」


 現時点でどこまで関わるか知ったことじゃないからな。

 俺はたまたま通りがかっただけで、特殊な能力もなければ、杉さんと特別親しいという訳ではない。


 何より判断材料に欠ける。

 ならば、当事者ともう少し話をしたほうが良いのではないだろうか?

 俺は杉さん、いやスピアーと対話を試みる決意をする。

 果たして彼女は何者で、どういった事情で戦っているのか。

 黒魔獣とやらは何なのか、またその目的は。

 そもそも俺にできることはあるのか?

 確認しなければならない。


 そして夜が訪れ、俺はまた走り出す。

 衝撃(インパルス)、この相棒とともに。

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