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冷凍ギョウザは侮れない

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 放課後。


「ツーリング先でさ、ラーメン食うだろ」


 デリの話題の振り方は唐突である。


「ンー、ギョウザも頼むよね」


 クロスケの適応力は侮れない。


「例えば…出先で田舎のしなびたラーメン屋に入るとする。チェーン店や有名店よりそういう所の方が、隠れた名店っぽくて美味そうな気がするよな」

「するな」

「ンー、するね」

「そこで味の素の冷凍ギョウザの方が美味かったりすると損した気分になるよね」

「なるな」

「ンー、味の素の冷凍レベル高ぇからな、割とあるある」


 しかも安いしな。


「ンー、サク昨日はどうだったん?」


 例によってスマホをいじりながらクロスケから振ってくる。スマホでは猫を集めている。


「放っておけって言われたのに行ったの?まぁ行くと思ってたけど」


 デリにもばれていたか、というか昨日のあの話の後じゃバレバレだわな。

 実の所、こいつらの反応が分かるから話したくないのだが、元々俺が持ち出した話だしな。


「実は…」


 エンジンを暖めると、衝撃(インパルス)が走り出す。

 四気筒のスムーズなふけ上りが俺の意識を高揚させる。

 これがスズキだ!


 そしていつものお気に入りのコースを走りきると、あの上代公園へをたどり着く。


「もう始まっていやがる」


 そこにいたのは、スピアーと呼ばれた魔法少女。華やかなピンク色のフリフリ衣装に、セミロングの黒髪は左右に分けて結わえられ、いわゆるツインテールと呼ばれるスタイルに変貌している。

 普段教室で見かけるクラスメイトの杉さんの地味さとはかけ離れた華やかなスタイルを見た俺は思わず声を漏らす。


「きっつぅーー」


 さすがに高校生にもなって、あの髪と服はちとばかし無理が…。


 相対する黒魔獣は四足歩行の獣という点は共通だが、先日とは違いすらっとした長い脚と大きく広がった角を持つ個体、あえて言うならば鹿型とでも言おうか。


 公園の真ん中で間合いを取り対峙しながらすきを窺う両者。

 タヌキ妖精は離れた場所で声援を送っている。


「たぬ、スピアーがんばってたぬ!」


 語尾うざいな、こいつ。あんまり可愛くないし、猫型にしろよ。

 ぶっちゃけ積極的に割って入ろうとしない理由の9割はこいつだ。


 戦闘に集中しているせいか、こちらに気づく気配はない。とりあえず自販機で缶コーヒーを買うとベンチに腰掛けながら様子をうかがうことにする。


「シャイニンッボム!」


 仕掛けたのは魔法少女スピアーことクラスメイトの杉さん。派手なステッキの先から放たれた光球が鹿型の足元で爆発する。

 しかし鹿型はそれをものともせず、突進してきて巨大な角でスピアー杉さんを弾き飛ばす。


「ふぎゃっぴゃぁぁぁ」


 なんとも形容しがたい声を上げて吹き飛ばされると先日のように地面に転がり、そのまま鹿型につつかれ始める。

 負けるの早っ!


 救援に入ったタヌキ妖精が、振り払われて転がるところまで同じだ。

 俺は周囲を見渡して他に仲間や助っ人がいないか確かめると、救援に入ることにする。

 顔バレしないようOGKヘルメットをかぶりインナーバイザーを下すと攻撃手段を考える。


 俺の使える武器といえば石だが、投げて外して杉さんに当てると申し訳ない。

 という訳で直接殴るために石を手に持ったまま近づくが、鹿型は俺に反応する素振りは見せない

 それ幸いに、石を鹿型の側頭部に叩きつける

 ゴムの塊を打ったような手ごたえとともに鹿型が倒れる。

 魔法少女の爆発やビームが利かないのに、石で殴って倒れるのってどうよ?


「あの、ありがとうございます!」


 いつのまにか立ち上がった杉さんにお礼を言われてしまった。


「いや、礼よりも先に奴にトドメを刺すんだ!」


 俺はやや芝居がかった口調で杉さんに指示を出す。


「ハッそうでした、えーと、シャイニンッラ」


 以前に見た極太レーザーを出そうとステッキを振りかざし、舞うようにポーズを決めるがその隙に復活した鹿型が突進してきて、再びスピアー杉さんを吹き飛ばした。


「ぶべっぴょぉぉ」


 必殺技は隙が大きすぎるだろ。

 鹿型は今度は俺のことも認識しているらしく、スピアー杉さんに追撃をかけることなく、その場にとどまり俺に威嚇をする。


 さて、どうしたものか。

 スピアー杉さんは立ち上がりステッキを構えるが、ダメージが抜けきっていないのか膝がガクガクしてる。


「なぁ、あんた。ふと思ったんだがなんで名前が(スピアー)なのに杖が武器なんだ?

「あの、え?えーと、そうなの?」


 どうやらスピアー杉さんはゲームとかやらない系の人らしく、スピアーの意味を知らなかったようだ。

 それとも妖精世界だの魔法の国だのでは別の意味があるのだろうか?

 と思っていたらいつの間にか起き上がったタヌキの奴が解説を始めやがった。


「たぬ、スピアー、そのシャイニンステッキに魔力を籠めるとシャイニンスピアーという槍になるたぬぅ」

「エ!?そうだったの?知らなかったわよ!」

「たぬ、これは魔法力がある程度成長してからでないと発動しないたぬ…でも実戦を潜り抜けた今なら使えるたぬ!」

「分かった、やってみる!シャイニンッスピアー!!」


 一々たぬたぬ言うな、うぜぇと思っているうちに鹿型は俺に向かって襲ってきた。

 それをいなしている間に話がまとまったようだ。

 鹿型の突進をかわし、角攻撃をプロテクターで受け止め、隙を見て石でぶん殴る。


「さすがコミネのプロテクターだ、ビクともしねぇ!」


 ジャンプして間合いを取った鹿型に、小石を投げつけ追い打ちをかける。

 ちらりと横目でスピアー杉さんを伺うと準備は整ったようだ。


 ステップを踏み、チアリーダーのようにくるくるとステッキを回しポーズを決め、槍型に変形したステッキを手に鹿に立ち向かうスピアー杉さん。

 俺は鹿型を誘導するため石を投げつけ、槍を構えたスピアー杉さんの方向に追いやった。


「シャイニンッエンドーー!」

 

 鹿型の突進してきた勢いを利用しまっすぐに突き刺ささる槍、さらにそのまま光り内部から爆発四散し、そのまま消滅する。


「あの、やりましたっ!」


 顔についた泥を拭い、駆け寄って来て嬉しそうに報告してくる杉さん。


「そいつはよかった。それじゃ俺はこれで」


 正直、このコスプレ感満載の姿と口調のクラスメイトと話すのはきつい。

 そのまま立ち去ろうとすると、やはりというか、聞かれる。


「あの……あなたは一体?」

「たぬ、もしかしたあなたは…!?」


 もしやって何なんだ。

 あと、たぬ言うなうざい。


「どけ、危ないぞ」


 俺はそのままバイクに跨り去ろうとしたが。


「あの、名前!名前を聞かせて!」


 う、さすがに今時「名乗るほどの者ではない」とかいうのはナシだろ。

 しかし、名前は考えてなかった、どうしたものか。

 コミネマン……だめだろ……勇者ガンメタル…福袋買ってない俺に名乗る資格はない…バイクヒーローと言えば仮面……偉い人に怒られるな、そりゃ。


「えー、アームドライダー」


 そう名乗ると俺はスロットルを開け走り出す。


 そして爆笑するデリとクロスケ。


「「ぶはははは!ネーミングぅぅぅぅ」」


 うん、分かってた。

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