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日常賛歌  作者: しろくろ
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第二十話 授業風景と不思議法則

 こんにちは、遥人です。はい、ちょっとフレンドリーな感じでいこうと思って挨拶してみました。やっぱり大切だよね。こう、会話に距離を感じないようにするのは。


 何が言いたいのかと言うと、『授業つまんねー』ってことです。今は授業中なんだけど、眠くて眠くて仕方ないんですよ、これが。


 なんでこんなにつまんないかなぁって考えてて、とりあえず一つそれっぽい答えが。


 フレンドリーさがない。全然ない。教師はこちらに何かを教えようとしているわけですが、それを聞く気になれないんだよね。


「ではこの問題を……氷名御、答えてくれ」


 あんな聞く気の起こらない話に対して解答を求めてくるのはどうなんだろう?まぁ簡単に言えば、そんな機械的でつまらない話を聞いてられるかコノヤローってことです。


 話す内容が『勉強』でこれは『授業』なんだから当然。そう言われればそれまでなんだけど。いや、中には同じ条件で面白おかしく授業をする先生もいるのだから、それは言い訳にならないよね?


 まぁぶっちゃけた話、これも俺が授業に集中出来ない言い訳なんだけど。さて、俺に問題を答えろと。えーと、問題は?


『孝司君は二人の妹と一緒に六個のシュークリームを分けることにしました。さて、孝司君の取り分はいくつですか?』


 へー、今数学の授業だったんだ。いや待て!これどちらかと言うと算数じゃん!とても高一がやる問題じゃねぇよ!


 まあいいや、退屈しのぎにちょっと遊んでやる。


「答えは……六個です」


「全部持ってくんか!妹の分は!?」


 すかさずツッコミを入れるのは桐原疾風。残念ながら、俺が一番親しい友人である。


「えと、孝司君はめっちゃ腹が減っていました」


「そういう問題じゃねぇ!妹泣いてるぞ!」


「孝司君は半泣きの妹たちに汚い笑顔を向けつつ、最後の一個を頬張りました」


「悪魔か!?えげつねぇにも程があるだろ!」


 いやぁ、しっかりツッコミを入れてくれてありがたい。なかなか使える男だ。


「でもさ、仕方ないじゃん?この問題『均等に分けろ』みたいなこと書いてないんだから」


 だから孝司がこうしないとも限らない。教科書会社のミスだな。


「ばか。下をよく見てみろよ」


「え?」


『注、妹はそれぞれ九歳と六歳。好物はシュークリームで、物欲しげな目で孝司を見つめています』


 だからなにっ!?何で情に訴えかけてんの!?『均等に』って書けばいいだけじゃん!何この『ここは普通均等に分けるよね?人として』みたいな追記は!こんな書き方だったら逆に全部あげちゃうぞ俺は!


「答えはゼロだ。シュークリームは兄弟愛の法則により妹に三個ずつ分配される」


「先生っ!?」


「まったく、この前習ったばっかりだろ?」


 疾風ちゃっかり正解してるしっ!え?なんか周りから一斉に赤ペンで丸をする音が聞こえたんですけど!?俺だけなのか?その兄弟愛の法則が解らなかったのは俺だけなのか!?


「これは試験に出るのでしっかり覚えておくように」


「は、はい……」


 なんかみんな『うわ、最低。人として終わってるよあいつ』みたいな目でこっち見てるよ!


 俺かっ?俺が死ねばいいのかっ!?


「寝てばっかいないでちゃんと授業聞いてろよなぁ」


「常にゲームやってるお前に言われたくない」


 今も机で隠して携帯型ゲームをピコピコしているこの男。こんなだがテストではかなりの高得点をマークしている。理不尽だ。今や数学を兄弟愛で押し通すことのできる柔軟な思考がなければダメなのか……。


 そういえば、さっき第四ステージに差し掛かっていた疾風。目の錯覚か、今は第七ステージと表示されている気が……。


 いやいや、あり得ない。あのゲームは俺も知ってる。一つステージを進めるのにもなかなか時間がかかるはずだ。それを俺にツッコミを入れながら三つ?……うん、あり得ない。


『☆第七ステージクリア☆』


 あり得ないあり得ない。あのゲームの表示は目の錯覚だ。まだ目が覚めきってないんだろう。目で追えぬ速度で動く疾風の指も、俺の動体視力の低下が原因だろう。親指が六つに見える。


「……勉強しよう」


 因みに、俺が答えた数字は今寝ている生徒の人数でもあるのだけれど、先生は気づかなかったみたいだ。


 嗚呼、空が青い。先生、どうして俺がノートに写そうとした部分から的確に消していくんですか?


 疾風、お前目がイッてるよ。それは暗い部屋でニヤリとしながらひたすらパソコンを弄る引きこもりと同じ目だよ。


 嗚呼、空が蒼い。



「遥人さん、プリン食べましょうよ」


「食べましょうよぉ」


「あぁ、俺はいいや。食べちゃっていいぞ」


「え?どうしたんですか?」


「珍しいですねぇ」


「いや、ちょっとな」



 こんな一日

 そんな日常。

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