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はるかかなたのエクソダス0 ~一粒の麦  作者: 風庭悠
第4章:一粒の麦~不知火尊が戦う理由
1/4

第1話 (本編第25話) 妹とスイーツ

N2401CY 「はるかかなたのエクソダス」のスピンオフ。エピソード1です。できれば、本編24話(11月19日配信予定)を読んでからこちらをご覧ください。次回は11月20日、正午に投稿予定です。

 4話完結です。本編の4章になりますのでお願いいたします。

 朝6:00。目覚まし時計のベルがけたたましく鳴り響く。しかし、電子音なのにいまだにベルというのはどうかとも思う。俺の名前は不知火尊。(しらぬいたける)。今日から高校2年生になる18歳だ。え?計算が合わない?あらやだ奥さん。さ・ず・か・り婚ですのよ…。じゃねえ。

 

 とりあえず俺は枕を抱きかえ、二度寝を堪能することにした。

「お兄ちゃん!」

どたどた足音を立てて妹が階段を上がってくる。

「おい、起きろ。」

布団をめくると、柔らかい足の裏でげしげしと踏みつけてくる。ああ、妹よ、それはマッサージにすぎない。


「だー、痛い。顔を踏むな。起きるから、ちょっと待って。大体兄に対する敬意はないのか。」

突然の無慈悲な攻撃に俺はたまらず抗議の声を上げる。

「今年から同級生じゃん。悔しいかね?。尊君。」


妹の名前は茉莉まつり。同じ高校に通う一つ年下の妹だ。彼女が窓を開けるとまだ肌寒い9月の風が吹き抜ける。

「寒いよ。着替えられないじゃないか。」


 俺は抗議の声をあげるが、庭に咲いた河津桜のビビッドなピンク色が目に飛び込んできて春がもうすぐであることに気付いた。え?季節がおかしい?

ここは南半球のオーストラリアだからねえ。これでいいのよ。


「もう、毎日毎日手をかけさせないでよね。」

スクールバスを降りても妹のお説教は続く。

「おす!尊。なんだまた『血茉莉ちまつり』に挙げられてるのかよ。」

先輩になった友人に冷やかされる。

「大変なんですよ。先輩。」

ふざける俺とは対照的に、

「先輩それやめてください。なんだかそれ、定着しそうで怖いんですけど。」

茉莉も抗議する。


 第三次世界大戦から70年がたち、俺たち大和人が集団移住を始めてからもそれくらいたった。ここ南オーストラリア州にある大和人居住区、通称「秋津洲あきつしま」である。とはいえ、俺には戦争の記憶もないし、大和へ行ったこともなければ住んだこともない。俺の故郷はここだ。それで十分だ。

 

 秋津洲はオーストラリアで最も繁栄した地域で、人口も一番多い。ここ数十年は、白人系オーストラリア人も含めてたくさんの人間が流入している。そのため、さらに街には活気があふれるようになった。

 

 ただ残念なことに、活気と治安は並立しないらしく、女性が夜道を一人歩きできる時代はとうの昔に終わっていた。俺のダブった理由について語ろう。俺が通う誠心館高校は秋津洲でも有数の進学校である。


 そして俺の妹、茉莉は本当の妹ではない。 俺たちはステップファミリーなのである。つまり俺の父親と茉莉の母親は俺たちを連れて再婚した。それはまだ6年くらい前のことだ。茉莉はかなりの美少女であり、肩までかかた長い髪に白い肌、濡れたような大きな黒い瞳を持っていて、初めて会った時の俺の感想は「まるで生きた人形みたい」だった。


 それまで茉莉も俺も、幼いながらに親との死別を経験していて、やっと立ち直りかけたところでの再婚話であったのだ。当時、思春期に入ったばかりの二人は再婚に反対だったし、親に反発もしていた。


 たぶん、無意識のうちに両親の中にある男「性」、女「性」であることに嫌悪感があったのだろう。だから親にとって自分が「生きがい」ではあっても「支え」にはならないことを理解したのはまだ最近のことだ。

 それでも、俺は彼女を一目見た時から「保護欲」をかきたてられたのである。

 

 あまり社交的ではない俺だったが、彼女の心を開こうと努力はしていた。転機になったのは、やはり妹を持つ友人が「女は甘いものをくわせておけばたいていご機嫌だ」という信念を俺に教えてくれた時だ。俺はネットでレシピを調べ、比較的安易なぜりーを作り始めた。「ちょっと味を見てくれないか」、という控えめな入り方で、だんだん「もうこれだけ? 」という感じで俺は妹の餌付けを始めた。


 この効果は抜群で、妹と会話する機会も増えてきた。俺はさらにプリンやケーキとステップアップしていく。俺が手作りにこだわったのは単純に金がないからで、継母にも必ず一つ作っておけば、材料はいくらでも使ってよい、という許しがあったからだ。そのうち、家を訪ねてくる妹の友人たちにもスイーツを振舞うようになり、俺はだんだん性格も社交的になっていった。なんでも一つ自信のあるものができると、人間は積極的になれるものだ。


 妹の俺の呼称も「尊さん」から「お兄ちゃん」になるまでステップアップしてきた。まあ、このままでは再び「尊くん」にグレードダウンする悪寒がするが。

 俺は中学では優秀な方で、この地区では一番の進学校である今の高校に入学した。まあ、さすがにここでは中の上くらいの成績ではある。一方、俺なんかよりさらに輪をかけて賢い茉莉も俺と同じ高校に上がってきた。


 ちなみに俺は「義妹」という表記はしない。彼女とは一切そういう気持ちを抱かず、ただ兄として守っていきたい、そう誓ったあの日から彼女は実の「妹」なのである。

次回は11月20日、正午に投稿予定です。尊さんがダブったわけは?

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