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悪の組織は貴方の側に  作者: コグマ
最強の戦士、フラッシュマン登場
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1-3

フィギアが50万円以上するとは思いませんよね。でも、話を聞いてみると納得しました。フィギア作りの匠にオーダーメイドで作って貰ったとか。どの世界にも匠っているんですね。

壊れたフィギアは全部で3体。赤いマスクの額に黄色い模様のついたフラッシュマン。黒いシルクハットに蝶ネクタイのジェントルマン。金髪に白いドレスを着たプリティーウーマン。格好も悪いし、名前が安易。正義の味方ってセンスが悪いですね。人の家を爆破する様な人達ですから、何を考えているのかわかりません。


ママに相談しようかと思いましたが、「自分で弁償しなさい。本当にこの子はドジね。」と散々罵られお小遣いまでストップされそうなので言うのを止めました。「アルバイトをするしかないかな。」と考えていると、毒嶌ぶすじまさんがにこやかに言いました。


「そうですね。体で支払って貰う事にしましょう。」


はー、このモアイは何を言い出すの。ママの知り合いの調査結果では、悪い人では無いって言ってたよね。えー、嫌だよ。私は、いざというときのために武器を探しました。お皿とお箸は使えそう。気づかれない様に手元に引き寄せました。

モアイはいろいろと話したあと、私に同意を求めました。


「嫌です。」私は即答しました。


「夜だからかな。」

「当たり前です。」


「そんなに汚い仕事ではないよ。」

「いいえ。不潔です。」


「そうか嫌か。」

「嫌だって言ってるでしょう。」


このモアイ、私に何をさせるつもりだ。左手にお皿を持ち臨戦態勢に入る。


「そうですか。残念です。給料いいんですけどね。」


よし、次に何か言ったらお皿で殴ろう。うん。それがいい。


「ビルの夜間清掃って、そんなに嫌われる仕事なのですかね。」


今、何と言いました?ビルの清掃??話が噛み合っていないような・・・。

持ち上げたお皿を口に付け、残りの食べ物をかきこみました。よし。誤魔化せた。毒嶌さんが驚いていましたが気づかなかった事にしよう。

どうやら、毒嶌さんのオフィスの清掃のアルバイトを紹介してくれていたようです。もっとわかり易く説明できないのかな。掃除して沢山お金貰えるって、すごく条件の良い仕事だったのに。こんな説明しか出来ない社長の下では従業員は大変だろうな。


私も毒嶌さんも話す切欠を失い、黙々と残りのご飯を食べ始めました。冷めた雰囲気の中で食べたご飯は、全く味がしませんでした。食事が終えて一息ついた所で、毒嶌さんが「戻りましょうか。」と声をかけてくれました。雰囲気に耐えられなかった私は、喜んで従いました。

会計を済ました毒嶌さんと外に出てみると、雨は止んでいました。車に向かいながら、毒嶌さんはもう一つ紹介出来るバイトがある事を教えてくれました。どうやら紹介する事に悩んでいたようです。

話の内容はこうでした。「新しい事業を始めようと思っています。従業員は一人居るのですが全く役に立たないので、彼女を補助をする人材を探している。バイトは週5日で、時給が安いので人が集まらない。」モアイもやれば出来ますね。ちゃんと意味がわかりました。


さて、どうしよう。私としては、恋したり、おしゃれしたり、高校生活をエンジョイしたいのです。バイトが週5日は正直きつい。断ろうかな。

「もし、バイトしてくれたら、借金を減らしてあげますよ。」私が断る事に気持ちを傾けたのを気づいたのか毒嶌さんが言いました。

「はい。やります。」私は、元気良く答えてました。借金を減らして貰えると言われれば断る理由はありませんよね。元気良く返事をしたのは何年ぶりでしょうか。前回は、ママに「洗物をしたらお小遣いあげるよ。」と言われた時だったかな。私は、お金が絡むと元気良く返事するわけではないですよ。たまたまです。そう。たまたま。毒嶌さんは、嬉しそうにしていました。



この時は知りませんでした、バイト先が悪の組織だった事を・・・



ももと校門で別れた私は、灼熱の太陽の下をふらふらと歩きながらバイト先に向かいました。アスファルトの照り返しが私の肌をじりじりと焦がします。早く涼みたい。気持ちとは逆に、体力と水分を奪われた私の足取りは重い。

朦朧としながら何とかバイト先に辿り着いた私は、勢いよく引戸を開けました。涼しい風が私の肌を静かに撫でます。私は、挨拶をしながら急いで部屋に駆け込みドアを閉め、一番涼しい場所を陣取りました。

「わーい。エアコンだ。涼しいな。」私は、ブラウスの第二ボタンまで外して風を体全体に取り込みます。

「可愛いのに。そんな格好してたらモテないよ。」ソファーに座って雑誌を読んでいた、金髪にウエーブのかかった美しい髪をした女性が呆れたように言いました。

「大きなお世話です。撫子なでしこさんも外に出ればわかりますよ。灼熱地獄ですよ。」胸元をパタパタさせながら私は答えました。

撫子さんの本名は、白草しらくさ 撫子なでしこ。初めて会ったのは、ホテルのロビーラウンジ。すごい学歴の持ち主で、国立T大を卒業後、ブリテン国の大学に留学したとか。世界的に有名な科学雑誌に論文を発表した事もあるそうです。

「エアコンの効いた部屋の事しか知りたくないよ。」手元に置いていたカップに口を付け彼女は答えました。先程まで気づきませんでしたが、部屋一杯に鼻翼をくすぐるいい匂いが溢れています。きっと、ダージリンの匂いかな。後で私も頂こう。

「もし、私ではなくて、モアイが居たらどうするつもりだったの?」雑誌のページをめくりながら私に問い掛けてきました。

「大丈夫です。あの顔は嫌でも気づきます。」撫子さんは笑いながら頷いていました。


撫子さんと他愛もない話をしていると体を包んでいた熱が下がってきました。「仕事をしようかな。」と思いパソコンの電源を入れました。ブーンとファンの音が鳴り始め、パソコンがパスワードの入力を要求してきました。私が、『0123』と入力すると画面中央に格好の悪い組織のロゴが表示された後に、デスクトップにいろいろなアイコンが表示されました。その中からメールソフトを選択してチェックを開始しました。

『構成員衣装作成のご案内』、『怪獣オークションのご案内』、『正しい悪の組織セミナーのご案内』、『幹部求人のご案内』などなど。あとは、解読不能なメールが数通。

私は、全てのメールを印刷して撫子さんに手渡しました。セキュリティーがなんとかかんとかで印刷したメールは消す事になっています。説明されたのですが理解出来ません・・・。簡単に言えば、読んだら消しなさいって事ですね。

撫子さんはとても面倒臭そうに紙の束を受け取り、パラパラとめくりました。

「捨てといて。」私に紙の束を渡しながら撫子さんは言いました。撫子さんってすごいんですよ。少し見ただけで理解できるんです。速読って言うらしいですね。

私は、受け取った紙の束をシュレッダーで切断しました。このシュレッターは、直ぐに紙屑が溜まるのでごみ捨てが面倒なんですよね。撫子さんがパソコンのメールを直接見れば良いのですが、操作方法を覚えず、何度もメールを消してしまった事があるので触らせて貰えないそうです。でも、たまにパソコンでゲームをしています。自分の興味の無い事は覚える気が無いようです。

私に残された仕事は、電話対応と来客対応。でも、電話は鳴らないし、誰も来ないので実質的にこれで終了。こんなに簡単な仕事なのにどうして人が集まらなかったのかは疑問です。



毒嶌さんとの契約は、時給700円。内500円は借金返済に当てるので支給は200円。週5日出勤で1日4時間働いて欲しい。出勤日数は多少は相談に乗ってくれるそうです。テスト期間中はバイトなんて出来ませんからね。借金を56万4千円から50万円に減額して貰ったので、計算上では1年と数ヶ月で借金が返済出来るとか。「借金返済後も続けてもらってもいいよ。」と言われていますが、これ以上、悪の組織とか正義の味方にかかわりたくありません。

そうそう、毒嶌さんの事は『ボス』と呼ぶ様に言われました。悪の組織では、これが決まりらしいです。その時に、『モアイ』の方が良いと思った事は内緒です。

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