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悪の組織は貴方の側に  作者: コグマ
最強の戦士、フラッシュマン登場
2/6

1-1

「宇宙に輝く星達が、悪を倒せと俺を呼ぶ。太陽の光を身に纏い、正義の拳を振りかざす。我の名は、最強の戦士、フラッシュマン」


- バァーン


効果音に合わせて七色の煙が噴出している。オレンジのマントを翻し、赤いマスクを被ったフラッシュマンが両手と右足を挙げてポーズを決めている。正直に言って、格好悪い。額に輝く黄色い模様が格好の悪さを際立たせている。


- シーン


何時もなら悪の組織の幹部が、悪態を付くところなのだが何の反応もない。その代りに、トカゲの怪獣と全身黒タイツの人が、道路に落ちている石ころを一生懸命にカバンに詰め込んでいる。


「コホン」フラッシュマンはわざとらしく咳払いをする。


- セカセカ、セカセカ


怪獣と全身黒タイツの人は、フラッシュマンには見向きもしない。フラッシュマンは、しつこく咳払いをするが、怪獣たちは相手にするつもりは無いらしい。

「お前らいい加減にしろ。俺が名乗りを上げてるんだろう。反応しろよ。は・ん・の・う。それから責任者どこだよ。お前らだけで来たのかよ。」フラッシュマンは捲し立てる。自分達が声をかけられている事に気づき彼らは振り向きながら答える。


「チョロチョロ」

「ひゃー」


「何を言っているかわかんないだろう。おい。責任者出て来いよ。」フラッシュマンの呼びかけに答える者はいなかった。何時まで経っても答える者が居ないことに気づいたフラッシュマンは、大きな声で叫びながら地団駄を踏み始める。それに合わせて、木々が揺れ枯葉を落し、犬達が一斉に鳴き始める。奇声は発するフラッシュマンに脅えた全身黒タイツの人は、怪獣の後ろに隠れて足をブルブルと震わせている。


それを見たフラッシュマンは、頭に血を上らせ、全身黒タイツの人に襲いかかる。




ここN県大豊市たいほうしは、十数年前まで何処にでもある小さな町だった。しかし、フランスのルイ=エティエンヌ=エルネスト博士によってこの町から104番目の元素が発見された。世界各国の研究機関がこの町に多くの科学者を派遣し、元素の研究を進めさせた。研究の過程でこの元素には、物質の大きさを変化させる特性を秘めている事が判明した。その性質から『GRグロース』と名づけられた。エネルギー、医療、軍事、あらゆる分野で活躍が期待され、研究が続けられたが、ある物質しか大きさを変化させない事が化学的に判明した。


それが、『怪獣』だった。


あらゆる国々はその実用性の無さに見切りをつけて、大豊市を離れていった。以前の小さな町に戻るのかと思われたが、悪の組織や、マッドサイエンティストが大量にやって来た。それを追いかけて正義の味方も大量にやって来た。悪の組織と正義の味方が一つの町で飽和状態となり、血で血を洗う戦いが連日の様に繰り広げられた。このまま続けばお互いに共倒れになる事を感じた悪の組織と正義の味方は、代表者同士で話し合い『ヒーロー三大協定』を作成する事となった。

実は彼らは運命共同体であり、正義の味方は悪の組織がいないと廃業する。悪の組織は、正義の味方が居ないと新しい怪獣を試せない。なのでスムーズに協定は結ばれる事となったのでした。




「ちーちゃん、今日もバイト?」帰り支度をしていると、何時ものように可愛らしい女の子が、私の元に駆け寄って来る。

「ごめんね。暫くはバイト休めないんだ。」私が答えると同時に、女の子が目頭にじわーっと涙を溜め始める。あー、この子は何時もこうなのだ。女の子の名前は姫野ひめの 桃香ももか。私と同じ紅葉高校こうようこうこうに通う1年生で、幼馴染。私は、『もも』と呼んでいる。とても可愛い女の子で、肩まで伸びたさらっとした髪の毛と、ぱっちりとした大きな眼は、道行く男の子の注目の的となっている。学校でも人気で声をかけてくる男の子も多く、その度に、「ちーちゃんとお話し中だからあとにしてね。」と答えるものだから、男の子には恨みをかっているようだ。影で『ガーディアン』と呼ばれているのはそのせいかな。

「おいおい、桃香を泣かせんなよ。」どうやらあいつが来ている様だ。

はる、うるさい。何であんたここに居るのよ。」声の主に向き直り彼を睨みつける。

「友達に借りてた教科書を返しに来ただけだよ。そんなに邪険に扱わなくてもいいだろう。付き合い長いんだしさ。」彼の名前は桐生きりゅう 春希はるき。ももと同じ幼馴染の一人で、1年C組。私とももはB組で彼とは別のクラス。昔は小さくて良くイジメられていたので私が助けてあげていた。その度に、ちーちゃん大好き。と言っていたのに・・・。


ももに袖口を掴めれ、思考の奥底から現実世界に戻ってくる。少々、頬が熱くなっている気がする。きっと気のせいだろう。

「余計なこと言うからでしょ。用がすんだら早く帰りなよ。」恥かしさを隠すように語気を強めて春に答える。彼は、近くの男の子に数冊の本を手渡し、二言三言会話をしてから私に答える。

「用も済んだし帰るよ。」春はそう言い残して右手を上げてドアに向かって行く。ドアに向かって数歩みだした後、急に振り返えり、「忘れてた。お袋が、お前の事心配してたぞ。『何時でもご馳走するから遊びに来てね。』だったさ。」それだけ言い残してドアの向こうに消えていった。

暫くドアを眺めていると、袖口を掴んでいるももが、ムスッとした顔で私を見つめている。

「ねー、ちーちゃん。私と遊んでくれるよね。」ももって可愛い生き物だよなー。彼女の頭を撫でながら頷くと、嬉しそうに抱きついてきた。可愛いのですが、過剰のスキンシップは少々ご遠慮したい。なぜなら、季節は夏なのですから。


私の名前は、『和泉いずみ 知沙ちさ』。勉強、運動、容姿の全てが平均レベルの15歳の女の子。他の子達と違うところは、一人暮らしをしているところ。私の両親は、高校進学が決まると同時にメリケン国に海外出張。当然、私も連れて行くのかと思いきや、「英語の出来たいあんたは、向こうでは生活出来ないよ。引き篭もりにでもなるつもり?」と厳しい言葉を浴びせられ、マンションと共にお留守番。両親が共働きのだったので、家事全般は全く問題が無かったのですが、ある事件に巻き込まれ、私の生活は一変しました。


ある事件とは、私の家が爆破されました・・・


正確に言えば、隣の家に爆弾がしかけられ、私の部屋も吹っ飛びました。お気に入りの服も、誕生日に貰った髪留めも。誰が弁償してくれるのよ。大切な物だったのに・・・。

後で聞いた話ですが、お隣の住人は悪の組織のボスで、部屋と一緒に吹っ飛んでしまったそうです。ご遺体も見つからない程の爆破だったとか。他の住人に、死傷者が居なかったのが不幸中の幸いでしょうか。何でも、爆弾を仕掛けたのは正義の味方だったとか・・・。

だから私は、正義の味方も、悪の組織も大嫌いです。


警察官から部屋が爆破されたのを聞いたのが、お昼ご飯を食べ終わった後。心配するももを引き剥がし、先生に事情を話して、自転車に飛び乗って大急ぎで帰りました。それが間違えだったのか、幸運だったのか、時速30キロ超の暴走自転車は、人を撥ねてしまいました。私は、家も失い、人を傷つけ、パニックを起こして泣き出してしまいました。その後の事は覚えていませんが、その人が後処理を全てしてくれたそうです。


その後、「新しい家を探すから。」とママに言われ、家が見つかるまでは、ホテルで暮らす事となりました。その間は、学校休みましたよ。ももから大量のメールが送られて来た事は想像に難くないでしょう。


再びママから電話があったのは2日後。なんでも、新しい家の大家さんがホテルに来てるらしい。

私が部屋で緊張して待っていると、フロントから来客を告げる電話がありました。手と足を同時に出しながら廊下を歩く私は、とても奇怪だった事でしょう。初めて会うオーナーさんにどんな顔をすれば良いのかわかりませんでした。

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