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Code Revive  作者: 太陽さん
Code.1 Awakening
3/5

Code.1-3 瘴魔

「俺たちが…この街に閉じ込められている?それはどういう…」


「こんな言い方をしておいて何だけど、分からない。ただ確かなことは12月24日の深夜…気が付けば私達はこの街で倒れていた。」

「私達って事は他にも?」

「うん…でも会うのはまず零君の傷が癒えてから」


「…そうだな、早く治さないとまたあの怪物みたいなのが出てきたら…ってそうだ怪物!」

「怪物?…そう、零君はもう見たんだね。あいつらは"瘴魔(ショウマ)"、私たちがそう呼んでいるだけだけど…」


"瘴魔"…その言葉を聞いた瞬間、心臓の鼓動が強くなる


「主な特徴としては…奴らは"影の様に真っ黒"で、"人型"。"夜…というか暗闇を好む"せいかは分からないけど"日が出ている間は絶対に出てこない"の」


「何というか…幽霊みたいだな」

「それは幽霊に失礼だよ?…で、瘴魔の中でも変異を遂げた固体は"現瘴魔"といって人型を捨て怪物と呼ぶに相応しい姿になるの」

「俺が見たのは確か…辛うじて人型に見えたが巨体で、尾があって…腕がまるでカマキリの様だったな…」


思い出した途端あの腕で叩きつけられた傷が蘇る様に痛む

あんな怪物相手によく生き延びたな本当に…


「私も詳しい事までは分からないけど…力の使い方が分からない状態で"現瘴魔"と遭遇し生き残れたのは本当に奇跡だったと思う」

「あぁ…そういえば、あの時助けてくれたのは―――」


咲姫なのか?―――そう言い切る前に咲姫が突然立ち上がった

その表情に先ほどまでの笑みなど微塵もない


「零君はここに居て…すぐに戻るから!」


そう言い彼女は急かされる様にして走りながら保健室を去って行った…

ふと窓を見ると、夕日は完全に落ち外は夜の暗闇に支配されていた…

……

………













咲姫が出て行ってから30分は経っただろうか…

一向に戻ってくる気配のない状態に不安が募る


そういえば、咲姫は言っていた…怪物もとい瘴魔は暗闇を好むという

明かりの点いていない保健室や廊下を見るに、

今ここは瘴魔が現れてもおかしくはない状況ではなかろうか…


俺を助けてくれたのが咲姫なら瘴魔と遭遇しようが対抗出来るだろう

でも俺の勘違いなら?咲姫はただの一般人で――


「……」


そんな考えに至った瞬間、いてもたってもいられなくなり

気が付けばベッドを抜け廊下へ駈け出していた


俺が行った所でどうこう出来る訳ではない

現瘴魔に襲われ、逃げる事しか出来ず無様に殺されかけた奴が何をなせるというのだろう

おまけに、身体を動かす度に節々から鋭い痛みが走る

まったく勇者様気取りも甚だしい


でも、そんな事は分かってる当たり前だ…でもだって仕方ないじゃないか

何故か身体が動くんだよ、咲姫を助けろって…


飛び出しておきながら当てもなく廊下を走る

案の上どこも明かりは点いておらず月明かりが僅かに照らすだけだった。




保健室のある1階から2階へ上がり一通り見て回ったあと3階へ上がり始めた時だった

遠くから咲姫らしき悲鳴が聞こえた気がした


「…ッ!」


聞こえた方角から察するに反対側の校舎からだろうか

見当違いな場所を走り回っていた自分に憤りを覚えつつ来た道を引き返そうとし…


「…なッ!?」


後ろを振り向いた瞬間飛来してきた黒い物体が頬を霞めた

いつの間にいたのか、そこには影の様に黒く塗りつぶされた人型の怪物…瘴魔が何体も此方へ徐々に近づいてきていた


「まさか…渡り廊下からか!?」


ここにいては殺されるだけだ…

急いで1階へ降りようとするが、既に下からも瘴魔が階段まで来ておりそちらへは逃げられない


追い詰められるだけだと分かっていながらもまだ瘴魔のいない筈な上の階へ必死に逃げる

こんな逃げ回ることしか出来ない奴が咲姫を助けようだなんて…本当に勇者様気取りも甚だしい



「チクショウ……どうする…どうすれば…ッ」



―――いつまで"何も知らない無力な一般人"でいるつもりだ?



「殴って蹴って斃せる相手ならそうするさッ…でもアレはそんな事でどうこう出来る存在じゃない…」


気が付けば階段を上がりきり屋上まで来ていた。

当然、出入り口は上がってきた階段のみ。逃げ道も然りだ


「ほんと…馬鹿みたいだ…いや馬鹿だな。…いっそ飛び降りてやろうか」


後ろを振り向くと既に瘴魔は階段の踊り場まで来ており、完全に逃げ道は絶たれた

悪あがきにと屋上の端まで走る



―――このまま、怪物に殺されるか?



瞬間、脳裏に血まみれの少女が浮かぶ

それが誰なのかは記憶にないが、何故かその光景に激しい憤りを覚える



―――さぁ…あの日の悲しみを、怒りを、思い出せ

―――繰り返したいの?…なら次は――



「――黙れッ!違う!!俺は…俺は…」



血まみれの少女は俺に囁く



―――覚醒(おめざめ)の時間よ



「―――接続(アクセス)―――レギオン 我らは奴隷」



気が付けば、俺はそう呟いていた

瞬間、身体中の血管という血管に溶岩でも流し込まれたような錯覚に襲われる


「ぐ…がっ…ぁぁぁああああああアアアア!!!」


頭がはち切れるんじゃないかと思う程の激しい頭痛に襲われ地面をのた打ち回る

過ぎた痛みはあらゆるモノを無感にさせ、何も聞こえず見えず感じれない

拷問じみた時間は永遠に続く様でたった一瞬の出来事の様で…


「はぁ…はぁ…ぐっぁあ…」


気が付けば先ほどまでの事が夢だった様にすっと収まっていた

前を見ると丁度多数の瘴魔が屋上に辿り着き此方へと徐々に距離を詰めてくる



瘴魔を見定め、いつの間にか手に握っていた短剣を構える

前方には瘴魔が3体固まっており、その後ろに2、1、1…と疎らにいる



このまま戦っても良いのだが、校舎内には奴らが犇めいている筈だ…

真面に戦っていれば咲姫の元へは一向に辿り着けないだろう


とすればやることは一つ


「…冗談のつもりだったんだがなぁ」


瘴魔に背を向け一気に駆ける


「とっど――けぇぇぇぇぇッ!!」


目標は反対側の校舎…その屋上へ向け跳躍する

実質助走なしだったが、軽くビル3階分ほどの高さまで飛び上がり

十数Mもある距離を悠々と飛び越え反対側の校舎の屋上に着地した


「――ッは」


この超人的身体能力を不思議に思う事は無かった。

まるで"それが当然である"かの様に…

在るべきものが在る、ただそれだけの事だと他でもない自分自身が告げる



「咲姫!」


屋上からグラウンドを見下ろす

そこには現瘴魔であろう巨大な黒い影があった。

その姿はまるでトカゲをそのまま巨大化させた様だった。


咲姫はその瘴魔より少し離れた場所に倒れていた

現瘴魔はゆっくりと咲姫の方へ近づいていく…


「やらせるかよ…ッ!」


一々階段を下りて行っては間に合わない、とフェンスを乗り越え屋上から飛び降りる

そのまま重力に身を任せ現瘴魔の真上へ落下していく


「これでも…喰らっとけッ!!」


武器を構え、落下と同時に短剣を脳天へと突き刺した

現瘴魔は突然の乱入者と突き刺された痛みに驚いたのか大きく頭を揺らす


更に深く突きたてようとしたが、揺れに耐えきれず振り落とされた

受け身を取り急いで咲姫の元へ走り抱き抱える


「大丈夫か!?咲姫!咲姫!」

「…ぅ……れぃ…ん…?」


良かった意識はある…

服の所々が破れ血が滲んでいる

一先ず安全な場所まで運びたいが…


「―――■■■■■■」


回復したのか現瘴魔は此方へ振り向き咆哮と共に尻尾で俺たちを薙ぎ払おうとする

咲姫を抱え跳躍し何とか回避する


残念ながら大人しく逃がしてくれそうには見えない…

校舎の中はあの瘴魔が犇めいているから駄目だ

…そういえばあれだけ校舎内にいた瘴魔が何故グラウンドには一体もいないのだろうか


「―――っと!?」


再び薙ぎ払われた尻尾を紙一重で回避する

今は咲姫とあの現瘴魔だ。


逃走が不可能である以上、現瘴魔を何とかするしかない


「…結局、斃すしかない、と」


咲姫を丁度近くにあった物置に寝かせ現瘴魔を見定める



―――さて…初戦(リハビリ)の始まり始まり



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