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日常には、たくさんのカラフルな色が溢れかえっている。
物にも、言葉にも、雰囲気にも、人の心にも。
人の心にはハートがあって、些細なことでもなにかある度に色が変わる。
いつでも心の色は変わっているんだ。
だから、この、灰色のあたしの心にもいつか、なにか色が足されるのかな。
いつかこの心のカラーだけじゃなくて、あたしの言葉にも、雰囲気も、イメージも。
明るいものになれたらいいな。
* * *
ぽかぽかと、春の日差しがふりそそぐ中。桜の花びらが春風に乱れ美しく舞う。
ちらちらと白い貝のような花びらが、風に流れる道をあたし 吹田都は友達と歩いていた。
少し茶色の混ざった黒いポニーテールに、大きな目、小さな鼻。丸みのある輪郭と、少し太めの足……。だけど体重はそんなに重くないんだからねー。
そして、昨日入学したばかりの中学校の制服。紺のセーラーで、水色のラグビーボールのような形のリボンが、胸のあたりに垂れてるの。可愛いと思うけど、下のスカートはヤンキーみたいで嫌なんだ。一年だし、上げたら先輩に目をつけられそうで怖い。……って、友だちが言ってた。
なんとなくわかると思うけど、これがあたしの姿だよ。学校まで一直線のこの道を歩く人は皆同じ色、格好で何だか不思議な気分になる。
制服なんて幼稚園ぶり。だから、制服というものに大人になった気分でうきうきするんだよね。
あたしは目の前を舞う桜の花びらを、なんとか一枚、指でつまんでみせた。
「桜の花びらとれたー」
あたしの隣を歩く池田玲奈に見せると、「ほんとだ」と言って、花びらをつまみ始めた。
玲奈は綺麗な黒髪のストレート。前髪が長いからわけていて、おでこがつるつるで羨ましい……。ニキビとか一つもないもん。目はぱっちりしていて、背も高い。なによりオシャレ。
そんな玲奈を見てあたしは笑い、つまんでいた小さな桜色のそれを指から離した。
踊る桜の花びらは、とても綺麗。人がつまむと、あっという間に汚れていってしまいそうなほど。
あたしと玲奈はこれからの中学校生活について話しながら、中学校の門へと歩いていった。