四十五分のお弁当
* * *
親睦が深まったらお次はお弁当。
ちはに尋ねると今はちょうど十二時ごろで、みんなのお腹も食を求めて鳴き出すころだろう。あたしのお腹もちょっと鳴ってしまった。
お弁当を食べる場所のまきばのひろばは、赤いコンクリートの道の両脇に黄緑の芝生が広がっている。その芝生は大きく、それに綺麗だ。
先生から集合は十二時四十五分と伝えられた後、みんなはさっとグループに固まり、早々にいい場所をゲットしていってしまった。
あたしたちのグループは、探しているときに見つけた売店の近いちょっと小さな芝生。売店も近いせいで一般客もある程度いる。
見つけた場所はみんなのところよりも小さくて、六人が座って少しのスペースが余るくらいしかなかったんだ。けど、まぁうちの班がみんな座れればいいし。
様々なレジャーシートが敷いてある芝生は、崩れないようにか石で包囲してあった。なんかオシャレ?
周りを見れば女子と男子で混ざったり、向き合いながら食べるグループもあるけど、春子率いるこの班は女子が男子に背を向けてる。
春子のレジャーシートがすっごく大きかったから半分に折って、みんなで重ねたんだ。ずいぶんと余裕があるよ〜。
後ろの男子たちを見ると、自由な雰囲気がぷーんと漂ってくる。
住吉は大きなレジャーシートの端にしか座ってないし、それに比べて小松なんかレジャーシートが小さくてリュックを芝生の上に置いてるみたい。
なぜだか大東はぽつん……という効果音が聞こえそうに見えたけど、三人ともレジャーシートはくっついてる。なんでだろう。目の錯覚かな?
ていうか住吉、小松に半分ちょい譲ってあげろ!
あたしのお弁当は、おにぎり二つにいつもより小さなお弁当箱。
お弁当箱のふたを開けると、中にはコロッケやトマト、ブロッコリーやウインナーが顔をのぞかせた。隅っこにはデザートに赤いさくらんぼ。
おにぎりのラップを剥がしてから一口食べる。
ん、これはおかかと梅だ。まぁ、見てわかったけど。
食べながらあたしはちはと春子のお弁当をじっと見つめた。
他人のお弁当とか……自分のじゃないのを見るのって、なんだか好き。面白い。
お弁当を見ていると、左隣でシャラシャラ音が鳴ってるから、なにかと思って左を向く。
「あっ! それリラックスクマじゃん! 可愛い〜」
ついつい指差してしまったそれは、春子の持つリラックスクマのふりかけ。あたし、大っっ好き。
そのふりかけの柄はホットケーキとはちみつ、幸せそうな顔をしたリラックスクマたち。一面オレンジ色だ。
春子は微笑みながら、「ね〜」と言ってオレンジのふりかけをひらひら振った。
次にちはのお弁当を見ていると、
「あっ! アスパラベーコンじゃん! あたし大好き!」
「だよね! すっごく美味しいよねー!」
なんか、趣味が合うと嬉しいなぁ。
あたしはあまりの欲しさにちはにねだってしまった。
「ねぇ、アスパラベーコンなんかと交換して〜」
最近全く食べてなくて、ついつい……。
しばらくえー、と嫌がっていたちはだったけど、やがてため息をもらした。
「いいよ、あげるよ。うちは優しいからね〜」
「マジで!? やったー、ありがとー!」
差し出された弁当箱から掴んだアスパラベーコンは、自分の弁当箱の空きスペースに置いた。
言ったけど、好きな食べ物は取っておく派だからね。
あたしは、弁当箱をちはに向けた。
「好きなの取っていいよ」
ちははう〜んと呟きながら、あたしのお弁当を見てたけど、しばらくして言った。
「なんでもいいよ〜」
もう、みんないっつもコレ。あたしもたまにしちゃうんだけどさ。結構困るよね。
でも、全部あたしが指名してて悪いんですけど……。
「えー、もうなんでもいいから取ってよ」
あれ、若干押し付けてるね。
「もうなんでもいいよー」
面倒くさそうにちはが言う。
あれ、遠回しに「いらないよ、あんたのなんて」とか言ってないよね?
「じゃあねぇ〜……」
このまま言い合っててもらちが明かないし、あたしも面倒くさいから適当に二つあるおかずを箸でつまんだ。あたしまだ箸を使ってないから大丈夫だよ。
半分に切って弁当箱に入っていた、かぼちゃのコロッケをちはの弁当箱に入れたあと、おにぎりを口に頬張る。
あ、そうだ、玉子焼き。
あたしは口に入っているごはんを、急いで噛んでから飲み込んだ。
「ちはー、さっきのゲームで男子と手をつないでくれたからさ、お礼に玉子焼きあげる〜」
「え、いいよー」
そんなことを今更言われても、あたしはもう玉子焼きをあげる準備満タン!
「いいっていいって。お礼なんだから」
玉子焼きを箸で持ちながら、あたしは笑って言った。
すると、ちはがゆっくりうなずく。
「じゃあ……もらおっかな」
あたしは再び、ちはの弁当箱の空きスペースに玉子焼きを置いた。
一時からはオリエンテーリング。
なにをするかはまだ知らされていないけど、きっと班でのチームワークが試される。
楽しいものとなるかは、班しだい。
お弁当の具の交換って学生ならではですよね!
大人になってもやるのでしょうか?
次回はオリエンテーリングです。
「オリエンテーション」と「オリエンテーリング」は違いますよ〜。
オリエンテーションとは、新しい環境などに人を順応させるための教育指導。
対してオリエンテーリングとは、山野で行われるスポーツの一。地図と磁石を使って指示された地点を発見、通過して目的地に達する速さを競うもの。
goo辞書より
全く違いますが似てて面倒(笑)




