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日常

シリーズに突入します

 ――あれから数年が経ち僕は17歳になっていた――


 神童の家に引き取られた。神童流師範、神童風雅しんどうふうがの指導のもと武術を体に叩き込まれてきた。そんな俺を、兄弟子たちは、「忌み子」や、「分家の者」などと虐げられた。そんな時僕を助けてくれたのが神童夏目しんどうなつめだ。彼女がいじめられている僕を守ってくれたおかげで、今の僕は腐らずに修行に励んでこれた。今でも実の父が残してくれた剣道を続けている。


 精神を統一する。抜刀もしてないのに鞘から冷気のような冷たさ、神童の技を使う重圧がかかる。すぅーっ。と息を吸い、一息に目の前を切る―――――前に頭を叩かれた。

「お前は、何するんだ。夏目!」

「何って稽古だよ。けいこ。ひーちゃん弱いから少しでも強くならないとね」

「お前はいつもいつもいつもそうやっていきなり現れて!」

「あははー。ごめんごめん。でもそろそろ学校だよ。言っとくけど学校でむやみに力を使わないでね」

「ああ、そうだな」


 ネームレスたちの襲来以来学校のカリキュラムが変わった。高校に上がる頃から科学科と剣術科の二つに分かれてしまった。科学科はネームレスの生態や弱点などの研究。剣術科はネームレスに対抗する戦力を育成するために設立された。

 大学というものがなくなり、代わりに王立騎士団に加入することになる。人類は奴らに住処を奪われ、世界は大小合わせて24の国へと変わってしまった。今まで国境が存在していたがネームレスにより意味をなさなくなった。人類は城壁を築き、ネームレスの進行を阻んだ。


 今日は高校2学年の春季成績発表の日だ。4月から6月までの期間の成績が反映される。今回はせいぜい中間発表みたいなもので、実際は3年の冬期成績発表。つまり3年間の集大成となる試験が重要というわけだ。この試験の結果次第で、王立騎士団になった際の待遇が少し異なってくる。


「今回も夏目に負けたかもなー」

「そんなことないよー。筆記はともかく剣術の方はいい勝負だったと思うよ。長谷川くんはもう少し勉強したほうがいいんじゃない?」

「…お、張り出されるみたいだぞ。えーっと……俺は」


 第6期生春季成績発表

 

 剣術科


 神童夏目 1位

 長谷川広 9位


「予想はしていたが……」

「まぁ、仕方ないよ。広くんはもう少し座学にも力を入れるべきだよ」

「わかってはいるんだがな、イマイチ気合がはいらないんだよなあ」


 教室に向かおうと夏目に言われ、剣術科のある第3体育館へ向かうことにした。夏目と並行して廊下を歩く。物理室の前に通り過ぎたとき、ドアに人影が映ったのを見た僕は素早く夏目の手を掴み体を引き寄せた。


「ひっ…ひーちゃん!?」

「危ねーな、ドアを急に開けんじゃねよ!」


 今さっき夏目がいた位置にドアが勢いよく開く。男の人が出てきてこちらに気づいたのか振り向いて頭を下げる。


「ごめんなさい。お怪我はありませんか?本当にごめんなさい」


 そういって走っていった。


「広くん。その…ね?あんまりこうしていられると…恥ずかしいなぁ…なんて」

「うぉっ!ごめん。つい反射的に、ごめん」

「ううん、いいよ広くんは私を守ってくれたわけだしね」


 再び俺たちは体育館へ向けて歩き始めた。体育館に着き、中を一瞥する。数名いた。剣術科は総勢80人で構成されている。俺たち入学試験において上位40人に入ったので下から2番目の階級に属している。

 

 カースト制度を知っているだろうか。上の階級に行けば行くほど人数を減らして、頂点には各国の国家元首が連なっている。ネームレス討伐作戦に参加可能なのは兵隊クラスからであるが、この階級では親父を殺した奴を直接倒すことができない。自分で倒すには最低でも佐官のクラスまで上がる必要がある。


「倉橋さん、小暮、大山お前ら早いなー」

「ええ。もちろん」

「うん。僕も大山も結果が気になったからね」

「で、どうだったんだ?」

「まぁ悪くはなかったわね」

「長谷川ももう少しな…」

「うるせっ小暮。剣術科なんだから剣さえ振れてればいいんだよ」


 始業までの時間他愛もない話をして過ごした。先生が体育館に入って出席をとる。担任の平田陣先生だ。


「はいはいみなさん、よく聞いてくださいね。これからゴブリンの討伐訓練を行う5人でレイドを組んでください」


 俺たちはこのまま5人で組むことにした。クラスで合計8つのチームができ、俺たちは討伐へ望むことにした。


「えーでは次、夏目くんの班ね」

「よしいくぞ!」


 戦闘において役割ロールを決めることでパーティーの力はいくらでも大きくなる。俺は大山と共に前衛に立つ。倉橋と小暮が後方に立ち、射撃をする。夏目は部隊の指揮をするため必然的に後方となる。


「やっぱりゴブリンレベルだとさすがに相手にならないか。だったら少しレベルを上げてみよか」


「な…なんだ、ゴブリンが集まってどんどん大きくなっていく?」

「みんな気をつけて!長谷川くん、大山くんは後退。倉橋さんと小暮くんと私で後方射撃!構えて!てぇっ!!」


 普通、ゴブリンは一般の武器でも討伐することは可能だ。しかしゴブリン以上の敵。例えばオーク。ゴブリンの集合体である彼らだが、その力はゴブリンの十数倍だと言われている。当然銃弾などでは歯が立たない。


「なんだ!…オークじゃないか。夏目!」

「わかってる。みんなは周りのゴブリンをお願い!行くよ、長谷川くん!」


 銃から、剣に変えた夏目と俺は、オークに向かって直進する。オークの腕が上がりハンマーを振り下ろす。夏目と俺は左右に別れそれを回避する。

 夏目はすぐさま接近し、オークの横腹を切りつける。オークは雄叫びをあげ、、体を捻り俺にハンマーを当てようする。そんなタメのない攻撃なんて受け止めようと腕を上げて防御の構えを取った。しかしハンマーの衝撃は想像を上回るものだった。


「ぐっ…」


衝撃を耐え切れず後ろに飛ばされる。なんて力だ、思っていたよりも全然強い。


「長谷川くん」

「来るなっ!」

「きゃっ!」


 俺を助けに来た夏目がオークの不意打ちを受けオークの後ろ方向に体が飛ぶ。体が後方へと飛ばされバウンドする。体育館の壁にぶつかった。動かない気絶してしまったのか。夏目の周囲を見てぞっとした。ゴブリンの集団に囲まれてしまっていた。今すぐにでも向かわないと夏目が…


 …仕方ない。ごめん夏目後で謝るから許してくれよな。


 刀を鞘に収め、呼吸を整え、無駄な力を抜く。見えるのは剣の射程と夏目だけだ。


 神童流抜刀術 輪火りんか 駆けろ大蛇おろち!!


 神速の速さで剣を振るう。射程はどう考えてもゴブリンまでは届かない。しかしオークとゴブリンたちはその場に倒れた。


 刀を鞘に収め夏目のもとへ急ぐ。夏目を抱きかかえる。

「夏目!大丈夫か。怪我はないか!夏目…あぁ夏目あぁぁぁぁ………」


 平田先生が「ちょっと下がっとれ」と言ってきた。先生の手つきは手馴れたもので頚動脈けいどうみゃくに指をあて、一息はいたあと、親指を立てて見せてきた。

 担架を持ってきた大山と共に夏目を保健室に運んだ。大山に「俺、このあとの授業休むって言っといてくれ」と言い保健室に残った。


 午後の授業も終わり、気づけば放課後になっていた。


「夏目ごめんな。俺がいながらお前を危険な目に遭わせちまった。それに…約束破っちまった」


 夏目の髪をかきあげ、右頬に触れる。暖かい…。


「ん………ん?ひーちゃん…」

「おおっ!大丈夫か」

「うん。その…ありがとう」

「帰ろうか、夏目」


 その日、夏目のことを考えてタクシーを読んで神童の屋敷に帰ることにした。屋敷について夕食を食べたあと、夏目に今日のことを話した。最初は難しい表情をしたものの最後は「悪いのは油断した私だから。ひーちゃんは悪くないよ」と言った。これ以上何も追求すまいと思った。何を言っても夏目は自分を責めてしまうのだから。そうゆうやつだ。

人物の紹介をしていきましょう。

神童夏目《しんどうなつめ》 神童家の人間でその才能は多岐にわたり、ヘラクレスの生まれ変わりと言われています。広とは仲のいい関係を築いており、2人きりの時は名前で呼ぶが、人前だと苗字で呼び、広と幼馴染の関係をひた隠しにしている。


倉橋伊澄《くらはしいずみ》 由緒ある家柄の持ち主。倉橋家の人間は純潔を尊びネームレスに汚染された人間を嫌うが、身内の人間には優しい。


小暮勇太《こぐれゆうた》 常に敬語を使う。旅館の息子。


大山哲也《おおやまてつや》 陽気な性格。ネームレスに体を侵食されたことで人間にはありえないほどの運動神経を得た。

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