プロローグ
長谷川広は幼い頃から父子家庭で育ち。母親は、帝王切開の際、命を落としたとされている。現在、その父も亡くなっている。ネームレスと呼ばれる侵略生命体によって、自体は一転する。彼らは、ほかの生物に卵を産み付けることで、子を増やしていった。世界各国でこの生物が暴れ、たちまち国は滅んでいき今では世界24ヶ国となっていた。人々はその生物をネームレスと呼んだ。ネームレスと戦う手段は人間が使う魔法しかなかった――――――そして、これから話すのは僕たちがネームレスを倒していく出来事だ。
僕が小学生に上がった時から剣道を教え込まれてきた。家が道場だったこともあり、毎日のように剣を振ってきた。母が交通事故で亡くなって以来、父と2人暮らしだ。父に褒められるのが嬉しくて毎日が幸せだった。
だが幸せは、そう長くは続かなかった。
小学3年生の頃だ。剣道の夏季大会で僕は初めて負けた。父は、言った。
「この軟弱者め。お前はあんな剣しか振るえない相手に負けたんだ。恥を知れっ!!」
父のあんな怖い顔を見たのは初めてだ。小さい頃から、遊びの時間も、勉強の時間もすべて剣道に注いできた。たったひとりの家族である父に喜んで欲しかったから―――――
「そんなお父さんなんて嫌いだ!剣道なんてもうやらない!」
そういって会場を抜け出し街の商店街の中を歩いていた。靴を履いて出てきたが袴姿なのでいかんせん目立ってしまう。
「おっ。広くん、いいところに来た。今、コロッケが出来上がったところだ。食べていきな」
いつも大会のあとに寄るコロッケ屋のおじさんだ。
「いらない…」
「どうした、どうした。元気がないな。よしっおじちゃん広くんのためにサービスだ」
おじさんはコロッケや唐揚げの入った包を僕に握らせてくれた。
「ありがとう…おじちゃん……」
「おうよ!それ食って元気出せな。男がそんな顔してちゃモテねぇぞ!なんてな」
おじちゃんはいい人だ。おじちゃんが僕のお父さんだったらなとも思った。
「きゃぁぁあ!!」
遠くの方で女の人が悲鳴を上げていた。周りの人たちが空を指差し叫んでいる。
大体50cmくらいの線が空をまっている。鳥だ!
鳥はみるみる下降してきて暗闇が広がり、みんなパニックになった。
商店街天井のガラスが割れ、ガラスと鳥の羽が僕たちに雨のように降り注ぐ。商店街は真っ赤に染まった。みんな倒れている。
なんでぼくは怪我してないんだろ。僕に何かが覆いかぶさってる。男の人だ。コロッケ屋のおじちゃんなの?
「コロッケのおじちゃん!しっかりして!!」
「誰がおじちゃんだ…このたわけ……」
「お…お父さんっ!!」
「いいか、よく…聞け。お前は走って、神童の…おじいちゃんのところに行く……んだ……」
「でも…でもぉ……」
腰をコロッケのおじちゃんに抱えられお父さんから遠ざかる。
「離せ!離せえぇぇえ!!お父さんが!お父さんがああああ!!」
僕は叫び続けた。何度も何度も………
あれから僕は神童家に養子として迎え入れられることになった。あの日のことを鮮明に覚えている………