序幕
十二の女神には、お気に入りがある。
それは、場所であり、物であり、人間だ。女神たちは、自分の気に入った場所で一年のほとんどの日々を過ごし、気に入った物を護り集め遊び、そして、気に入った人物に加護を与えて動向を見守る。それが、ほぼ唯一の"楽しみ"であった。
ある種の"趣味"と言えよう。悪趣味だという人もいるかも知れないが、女神と人では見解の相違が千尋の谷ほどあるものだ。少々好みが違っていても、「そう言うものだ。」と割り切ってしまえば、さしたる問題ではない。
さて、物語の舞台は中央に移り、季節も動いた。彼らが今目指している地には、『女神のお気に入り』が住んでいる。一般に、"憑き人"と呼ばれる『お気に入り』と、神楽たちの出会いは、その地に何をもたらすのだろうか。
作者は今回もまた、神楽とシュンの様子を遠くから窺うことにする。彼らの行く先には、私の暇を潰してくれる面白い何かが、必ず現れるように思うからだ。
そういう点で言えば――――――加護を与えることは出来ないが――――――作者自身の趣味も、女神たちに近いのかもしれない。公正で、冷静で、無関係で無責任な第三者として、私は彼らの旅路を、ただ傍観していこうと思う。




