【第6話】初めての街で観光してたら、幼馴染(22歳・ムキムキ)にスカウトされた件
目の前にそびえ立つ、見上げるほど高い石造りの外壁と、槍を持って武装した屈強な門番たち。
簡単な木の柵しかない辺境の村で育った田舎者丸出しの俺とクレムは、「うおお……すげえ……」と口を開けたまま、期待と不安が入り混じったドキドキする胸を押さえつつ、街の入り口へと近づいた。
門番の厳ついおじさんにビクビクしながらも、野盗に攫われて逃げてきた件を説明すると、おじさんの態度は一変した。
「なんだと!? あの街道に出没していた野盗の残党か! よく無事で逃げてきたな!」
俺たちはすぐに街の庁舎へと連れて行かれた。役人のおじさんは、俺たちが提供した野盗のアジトの場所や人数の情報を大いに喜んでくれ、俺とクレムがそれぞれの故郷の村へ向かう安全な商隊に乗れるよう、至れり尽くせりの手配をしてくれた。
しかも出発までの間、街の綺麗な安宿にタダで泊まれるようにまでしてくれたのだ。
(ありがてぇ……! 街の役人さん、野盗とは大違いでめっちゃ優しい!)
翌日。泥汚れを落とし、久しぶりに屋根のある安全なフカフカのベッドでぐっすりと眠れた俺とクレムは、初めての大きな街を興味津々で観光していた。
「カール君、あそこのお店、本物の鉄の剣や鎧がいっぱい並んでるよ!」
「うおぉ、こっちの屋台の肉串、すげぇいい匂いがする! 買ってみようぜ!」
二人で目を輝かせ、お小遣い代わりにもらった銅貨を握りしめていると、急に背後から野太い声で声をかけられた。
「あれ……? もしかして、お前……テルト村の、カールじゃないか?」
振り返ると、そこには立派な銀色の鎧を着込んだ、筋骨隆々の大柄な青年が立っていた。身長は180センチを軽く超え、日に焼けた顔には精悍な傷跡がある。
見知らぬ兵士かと思ったが、その目元の面影には絶対に見覚えがあった。
「もしかして……ジャック兄さん!?」
俺の村で、よく一緒にチャンバラごっこをして遊んでくれていた近所のガキ大将、ジャック兄さんだった。
当時12歳で細身だった彼は、10年という歳月を経て、すっかり22歳の立派な大人の男へと急成長していたのだ。
「うおおおっ、カール! お前生きてたのか!? ずっと行方不明だったから、みんな死んだと思ってたぞ! って言うか……なんでお前、10歳の時のまんまなんだ!? 全然背が伸びてないじゃないか!」
(いや、それはこっちが一番知りたいんだよ!)と心の中でツッコミつつ、俺は街角の静かな場所に移動し、深い穴に落ちてからの、かくかくしかじかな事情を説明した。
最初は「お前、スライム食って10年寝てたって、どんな冗談だよ」と笑っていたジャック兄さんだったが。
俺が「怒りで野盗をミサイルみたいに吹っ飛ばして、檻を粉砕して、素手でウサギを爆散させた」という話を真剣な顔ですると、次第に彼の顔つきから笑みが消え、兵士としての鋭い真剣な表情へと変わった。
「カール……お前、それはただの腕力じゃない。本当に『魔法』が使えるようになっちまったのか……?」
「えっと……まあ、たぶん……?」
すると、ジャック兄さんは俺の両肩をガシッと掴み、とんでもないことを言い出したのだ。
「俺は今、この『ゾル街』で兵士をやっている。実は明日、お前たちが情報をくれたあの野盗のアジトへ、俺たち討伐隊が本隊として踏み込む予定なんだ」
「へぇ、そうなんだ。頑張ってね、ジャック兄さん」
「カール。お前も一緒に討伐隊についてこい!」
「……はい?」
俺は思わず間抜けな声を出してしまった。
「えっ!? ちょっと待って!? 俺、見た目も中身も10歳のただの子供だよ!? なんで俺が討伐隊に!?」
いくらビッグな男になるという野心家であっても、いきなり武器を持った大人たちが殺し合う討伐クエストの最前線に巻き込まれるなんて聞いてない。
「詳しい話は後だ! とにかく上官に話を通すから来い!」
強引に腕を引かれ、俺は街のど真ん中で思いきり戸惑いながら、ズルズルと兵士の詰め所へと引きずられていくのだった。




