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スライム食ったら世界を救うことになった  作者: エリト


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【第47話】変態たちの思惑と、王族との謁見

「ゼレナ山脈か……ふふっ。実は前から一度、中に入ってみたかったんだよな」


最悪の目的地が判明した直後。エルウィンさんは、まるで新作のスイーツ店にでも行くかのようなウキウキとした口調でそう言い放った。なんでも、いくら彼がガバレリアのトップ魔術師とはいえ、正当な理由もなくあんな国境の魔境へ入ることは許されず、入りたくても入れなかったらしい。


「ちょうどいいわね。ドラゴンの心臓の入手に困っていたところだし、私もこの機会に『狩場』を下見しておきたいわ」


エルザもエルザで、不敵な笑みを浮かべて扇子をパチンと鳴らした。


(狩場じゃねーよ! 俺たちが『狩られる場』だろうが!!)


この変態二人は、完全に魔境へ乗り込む気まんまんだ。各国の精鋭調査隊が何度も壊滅させられている曰く付きの土地だって、さっき自分で言ってましたよね!?


「……あのさ、まずはグスタフ学長に相談してみない?」


横で見ていたクレムが、ふと冷静な提案をした。


(おおっ、クレム! お前、たまにはまともなこと言うじゃないか!)


俺は心の中で幼馴染に盛大な拍手を送った。そうだ、あの大師匠なら、絶対にこんな無茶な遠征は止めてくれるはずだ!


「「……ちっ」」


エルウィンさんとエルザが、あからさまに舌打ちをした。こわーっ! この二人マジでこわい! 命知らずにも程があるだろ!


というわけで、俺たちは急いでグスタフ学長の元へ向かった。地図とこれまでの経緯を説明すると、学長は顎髭を撫でながら重々しく首を振った。


「当然だが、魔法大学のフィールドワークの一環としてゼレナ山脈へ行くことは、学長としては許可できない」


(っしゃあ!!)


俺は内心でガッツポーズをした。そりゃそうだろう。大人がまともな人で本当に良かった。ホッ……。


「だが、どうしても行きたいと言うのなら、国の重鎮である『グランゼン様』に相談してみるしかないな。幸い、私の伝手で聞いてみようか?」


(いや、その提案、マジで不要ですっ!!涙)


俺のささやかな安堵は、一瞬にして打ち砕かれた。

グランゼン・フォン・リディア。現国王の叔父にあたる王族であり、現在の『魔法師団』の副団長を務めている超大物である。

ちなみにリディア国の魔法師団は、もう一人の副団長であるディーノ・フェルディナント(あのヴェルナーの祖父だ)と、グランゼン様の2名がトップとして実権を握っている。団長は国王が兼務しているのだが、現国王は魔力を持たないため、「王が魔法師団長を兼ねる」という長い歴史のしきたりのもと、実質的にはこの副団長二人が国の魔法師団のトップなのだ。


「是非、お願いいたします」


エルウィンさんが、俺の絶望をよそに食い気味で頭を下げた。


「うむ。では、さっそく手紙を書いてみよう」


数日後。なんと「直々に会って話を聞きたい」と、王都の魔法師団本部から連絡が来た。これには俺たちも驚いた。相手は実質的な軍のトップであり、王族である。いくら学長の紹介とはいえ、滅多なことでは会える相手ではないのだ。


さらに数日後。王都の荘厳な応接室に、接見の場が用意された。俺、クレム、エルザ、そしてエルウィンさんの4人で、その重厚な扉をくぐる。


「久しいな、エルウィン」


上座に腰を下ろしていたのは、威厳に満ちた白髪交じりの屈強な男――グランゼン様だった。簡単な挨拶を交わすなり、その鋭い眼光が俺たちを射抜く。


「なぜ、あんな危険な場所へ君たちが行きたいのだ? 突如現れた洞穴や、銀の騎士の伝承については手紙で読んだが……それだけの調査で行くには、あまりにも危険すぎる魔境だと分かっているはずだが?」


王族の放つ圧倒的なプレッシャーに、俺は息が詰まりそうになった。だが、俺たちの引率者マッドサイエンティストは、まったく動じることなく一歩前に出た。


「国のためです」


エルウィンさんは、右手を胸に当てて恭しく頭を下げた。


「詳しくは分かりませんが、将来この国に未曾有の危機が訪れる可能性があると予言が出ております。また、銀の騎士に関しては、失われた『銀の時代』と繋がっている可能性が極めて高い。その遺物は必ずや国の役に立つかと存じます」


(……この人、すげぇ)


俺は呆れを通り越して感心してしまった。「ドラゴンが見たい」とか「ダンジョンの謎を解きたい」といった自分の変態的な趣味には一切触れず、これだけしれっと国を想う忠臣の顔ができるなんて、さすがは領地のトップを張っているだけはある。


「ふむ……一応、ちゃんとした『目的』は作ってきたな」

グランゼン様は、ふっと口元を緩めて笑った。


(あれ? バレてるやん! 汗)


俺が冷や汗をかく中、エルウィンさんは完璧な笑顔のまま、一切表情を崩さない。


「実を言うとな。私も改めてゼレナ山脈への『調査隊』を組むところだったのだ」


「え?」


グランゼン様の意外な言葉に、俺は素っ頓狂な声を出してしまった。グランゼン様もゼレナ山脈を調査する予定だった?


「優秀な部下数名を行かせる予定だったのだが……エルウィン、お前も行くとなれば都合が良い。彼らと一緒に、山へ行ってきなさい」


なんかよく分からない政治的なやり取りが大人たちの間で交わされた結果、俺たちはあっさりと、最悪の魔境・ゼレナ山脈への立ち入り許可を手に入れてしまったのだった。


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