【第46話】点と点が繋がる場所と、最悪の目的地
「まずは、あなたたちの話から聞かせなさい! メインディッシュは当然後よ」
俺たちの顔を見るなり、エルザは扇子を広げてふふんと笑った。
相変わらず自信満々である。(苦笑)
俺とクレムは顔を見合わせ、この2ヶ月間の出来事を順番に説明した。アストリア国でのオズワルドさんとの面会、新たに発見された洞穴跡地、そこで見つけた『青く光る魔槍』のこと。そして、エルウィンさんの提案で、近隣諸国の洞穴調査の結果がちょうど出そうだというところまで。
「凄いわ。思っていた以上にかなり進展しているじゃない」
エルザは感心したように頷き、ふと思い出したように周囲を見回した。
「そういえば、そのエルウィンさんはまだリンギアに残っているの?」
「うん。他国の調査結果が出るまでの間、ついでにガバレリア領で発生した諸々の事象を、リンギアの魔法師団本部に報告しに行ってるらしいよ」
クレムが苦笑交じりに答える。
「まぁ、内容は大したことないらしいんだけど……なんでも『数年間分の定期報告』をずっと放置して溜め込んでいたらしくて、ものすごい量になってるんだって」
(目先の趣味……もとい、知的探究心にばかり走りすぎるからだろ、あの人……)
俺も思わず遠い目をして苦笑した。
「さて、それじゃあ次は私の番ね」
パチン、と扇子を閉じ、ついにエルザが話し始めた。
「あなた達が持ち帰ってきた話に、完全に繋がる話よ」
「え?」
「『銀の騎士』は、やはり過去に存在したわ。今はもう一体も残っていないらしいけれど」
エルザによれば、カルバン領に戻った彼女は、実家のツテをフル活用して「使役魔術」に詳しい専門家たちから話を聞き出したらしい。
「あくまで口伝レベルの話にはなるけれどね。過去に何体か存在していて、それぞれが同じオリハルコンで作られた武器を持っていたらしいの。そして……その武器には、ある共通した特徴があったそうよ」
エルザは意味深に微笑み、俺の目をまっすぐに見据えた。
「――淡く青色に光っていたそうよ」
「!!」
俺とクレムは同時に息を呑んだ。
ジャック兄さんの魔剣、そしてアストリアの森で見つけた魔槍!
『銀の騎士』と『洞穴で見つかった遺物』が、ここで完全に繋がった!
だが、大きな一歩前進ではあるものの、肝心の「銀のヴォルク」という人物(?)にはまだ繋がっていない。俺がそう思考を巡らせていると、エルザの話にはまだ続きがあった。
「その専門家から、銀の騎士がどこから伝わってきたのか、その方角も教えてもらったの。それはね……ゼレナ山脈方面よ」
「……ゼレナ、山脈」
その名前を聞いた瞬間、俺の背筋にゾクッと冷たいものが走った。
ゼレナ山脈。
ここら辺の諸国で暮らす者にとっては、お馴染みの名前だ。広大な森を有した巨大な山脈であり、どこの国にも属していない珍しい空白エリアである。
なぜ、どの国も領有を主張していないのか? 理由は簡単だ。
危険すぎるエリアだからだ。
究極魔法アトミックブレイクの再現に必要とされている『ドラゴンの心臓』。もしそのドラゴンを本気で探して捕まえるつもりなら、この山脈が最適だろう。なぜなら、ドラゴンレベルのヤバい規格外モンスターがウヨウヨ生息している魔境だからだ。
各国がそれぞれの場所から、過去に何度も調査隊を送ったり、森を伐採して領地拡大に挑戦したりしたらしいが、全て大した成果を得られずに壊滅させられたという、曰く付きの土地。
(そんなヤバい山脈を、俺たち学生が調べることになったら……完全に詰むだろ……汗)
俺が顔面蒼白になって震えていると、バァン! と勢いよく扉が開いた。
「カール! クレム! 洞穴の件の調査結果が出たぞ!」
書類の束を片手に、少し興奮気味のエルウィンさんが現れた。
「近隣諸国を調べさせた結果、君たちの故郷とアストリア国以外に、あと2か所、同じ時期に現れた洞穴の跡地が見つかった。これで合計4つだ」
エルウィンさんは机の上に地図を広げ、4つのポイントに赤インクで印をつけた。
「そして、この4つの洞穴の配置を線で結び、その中心点を割り出してみると……」
エルウィンさんの指先が、地図の中心をトントンと叩く。
「……ゼレナ山脈あたりが一番怪しい、という結論に至った」
「…………ま、まじか」
俺は、その地図を見下ろしたまま、魂が抜けかけた声を出した。
エルザの調査結果と、エルウィンさんの調査結果。二つの全く別のアプローチが、示し合わせたように同じ最悪の目的地を指し示している。
(どうすんのよーこれ!!)
頭を抱えて絶望する俺をよそに、エルザは目を輝かせ、エルウィンさんは不敵な笑みを浮かべていたのだった。




