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スライム食ったら世界を救うことになった  作者: エリト


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【第42話】究極魔法の歴史と、少しだけビッグになった日

「今から1800年前に存在した伝説の魔術師バルタザールは、真の天才だった」

グスタフ学長は、懐かしい昔話でもするように語り継ぐ。


「彼は無尽蔵な魔力量と、柔軟な発想力、そしてそれを形にする圧倒的な具現化力を兼ね備えていた。次から次へと新しい魔法を産み出し、今では『魔術師の祖』とも呼ばれているよ」


彼が編み出した数々の魔法の中には、彼自身の規格外のスペックゆえに、彼にしか使えない魔法も多数存在したという。

そして晩年の彼は思った。「なんとか、私しか使えないこの強力な魔法たちも、次代に引き継げないか?」と。


そのうちの1つが、光と闇の究極魔法『アトミックブレイク』だった。


「バルタザール自身は、あんな危険な魔法は引き継がなくて良いと考えていたらしい。だが、当時の国王がこの魔法の再現を強く望んだんだ。伝説的な天才である彼を自由に動かすことは出来ないが、この魔法のシステムさえ自国で再現出来れば、最強の魔法国家を作ることが出来る、とね」


時の権力者の命令ということもあり、国家の威信をかけて何十年もの間、アトミックブレイクの再現研究に取り組まれた。

その結果、ようやく出来上がったのが、複数人の上級魔術師とドラゴンの心臓を媒介にするという、今の無茶苦茶な条件のアトミックブレイクである。


「だが、皮肉なことにね。その再現システムが出来上がった時には、研究を命じた国王も、バルタザール本人もすでに亡くなっていたんだ」


新たに即位していた次の国王は、戦争反対派の平和主義者だった。

彼は、たった1回発動するためだけに何人もの希少な上級魔術師をかき集め、さらに超貴重な素材であるドラゴンの心臓を消費するような、あまりにも非効率でコスパの悪い大量破壊魔法には全く興味を示さなかったのだ。


こうして、究極魔法は一度は再現されたものの、国家の兵器として定着するには至らなかった。


「……とまぁ、軽い歴史の授業はここまでだ」

学長は一息つくと、俺たちを見渡した。

「君たちは、時を経てその『何とか1回だけ再現されたアトミックブレイク』を、現代で再び再現させる必要があるというわけだ」


学長の話によれば、一応、当時の研究者たちがどのように再現したのかの手順や試行錯誤の過程は、書類として残っているらしい。

しかし、一番肝心な「成功した際の正確な再現方法」や、「ドラゴンの心臓を具体的にどうやってコアとして使ったのか?」等の詳しい情報は、なぜかスッポリと抜け落ちていて書かれていないそうだ。


まったく手掛かりがない状態から比べれば、だいぶ前進したはずだ。

だが、ドラゴンの心臓だのなんだのと言われて、再現の難易度の異常な高さに、俺としては余計にゴールが遠ざかってしまった気がする。


(さて、この無茶苦茶な話を受けて、さすがのエルザもかなり厳しいと思ってるのかな……)


と、俺が隣をチラリと盗み見ると。


「では、再現は『可能』なのですね! 素晴らしいですわ!!」


エルザは、青い瞳をキラッキラに輝かせて両手を組み、歓喜の声を上げていた。

あんな無茶苦茶な条件(ドラゴン必須)を聞いて、絶望するどころか大喜びしている。

……俺は出会った時からこいつを変だとは思っていたけれど、想像以上に変な子だった。(呆れ)


「詳しいことは、禁書庫にある『バルタザール魔法集 Vol15』を読んでみなさい」

俺のドン引き顔とエルザの歓喜顔を交互に見て、学長はふふっと笑った。

「さぁ、今日はトーナメントでの戦いもあって疲れただろう。鍵を渡しておくから、禁書庫へはまた後日ゆっくり行きなさい。今日はもう帰りたまえ」


こうして、怒涛の情報量だった学長との長い会話は、ようやく終わりを告げた。


◇ ◇ ◇


夕暮れ時の帰り道。

俺たち3人は、魔法大学の石畳を並んで歩いていた。


俺の頭の中は、激しいトーナメントの戦闘をしたあとに、新情報や新しく考えなければいけないこと(隣国への訪問、銀の騎士、ドラゴンの心臓など)が一気に増えすぎて、マジでパンクしそうだ。


でも――不思議と、心はとてもスッキリしている。


「カール、ちょっと一人で抱え込みすぎだよ。次からは絶対僕らにも相談してよね」

「そうよ。あなたのその無駄な魔力、私の究極魔法のためにちゃんとこき使ってあげるんだから」

「へいへい。悪かったってば」


これからは、仲間であるクレムやエルザと隠し事なしに前に進める。

(まぁ、エルザがどうして究極魔法を欲しがっているのか、その個人的な『重い理由』はまだ秘密のままだから、完全な隠し事なしとは言えないけど)

それでも、一人で世界のバグの尻拭いを背負っていた孤独感は、もうない。


加えて、魔法大学の学長であり元12魔術師という、これ以上ないほど心強い大人の味方が出来た。


「そして何より……」


俺は、自分の手の中にあるトーナメント優勝の証、小さなトロフィーを夕日に透かして見た。

最初は目立たないように消化試合で終わらせるつもりだったけど、結果として、リンギア魔法学校の名物である『勝ち抜きトーナメント』で優勝してしまったのだ。

これは、この国の魔術師においてはとても名誉なことらしい。


ただの村のガキだった俺が、魔法のエリートたちが集まる大会で頂点に立った。


「ふふっ」

俺は思わず口元を緩ませた。

将来でっかい男になる! と洞窟で叫んでいたあの頃から、少しは俺もビッグになれた気がして、ちょっぴり、いや、かなり嬉しかったのだ。


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