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スライム食ったら世界を救うことになった  作者: エリト


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【第37話】大師匠からの招待状と、見透かされた『お願い』

「やあ、カールくん。そこへ座りたまえ」

重厚な木扉の向こう、学長室。

部屋の奥にある豪奢なデスクから立ち上がった白髭の老人は、優しげな笑みを浮かべて向かいのソファーを勧めてきた。

「は、はい。失礼します」

俺はガチガチに緊張しながら、やたらとふかふかなソファーの端っこに腰を下ろした。

「改めてになるが、私はここの学長を務めている、グスタフ・ヴァイゼルだ」

グスタフ学長は、俺の対面に座ると、ゆっくりと紅茶を注ぎながら口を開いた。

「知っていると思うが、私は君の『師匠』であるエルウィン・アークライトの師匠にあたる。だから、君のことは身内のようなものだと思っているよ。そんなに緊張しないでくれたまえ」

(いやいやいや、知ったのほんの数十分前ですから! 大師匠相手に緊張するなと言う方が無理ですって!)

心の中では全力で首を振っていたが、口に出せるわけもなく、俺は引きつった笑顔で「はい」とだけ答えた。

「君のことは、エルウィンから聞いてるよ」

学長はティーカップを傾け、フフッと笑った。

「あいつが手紙でね、『うちの身内がそっちへ行くが、間違いなく問題を起こすだろうから、少し目をかけてやって欲しい』と」

(エルウィンさん……! 出立直前に立てたあの不吉なフラグ、わざとかよ!!)

俺はガバレリア領の方向に向かって、心の中で盛大に中指を立てた。あの変態マッドサイエンティスト、確実に面白がって俺をこの爺さんのところに送り込みやがったな。

「あと、君については色々と『面白い話』も聞いてるよ」

学長はカップを置き、俺の目を真っ直ぐに見据えた。

「それについて、少し話をさせてくれ」

(きたーッ! ついに来た!!)

俺の背筋にゾクッと冷たい汗が流れた。

ヤバい人からの、ヤバい追及が来る。スライムのことか? バグのことか? それとも俺の異常な魔力(レベル30超え)のことか?

どう答えればいいのか、俺の脳内コンピュータがフル回転で言い訳を検索し始めた――その時だった。

「――おっと、そうだ。その前に、先に『君たち』のお願いを聞こうか」

「……ん?」

俺の思考がピタッと止まる。

(きみたち? なんで、俺一人の『お願い』じゃないって分かってるんだ??)

ポカンとする俺を見て、グスタフ学長は人の悪そうな――どこかエルウィンに似た――笑みを浮かべた。

「ふふっ。まぁ、君の『お願い』の内容は既に分かっているがね」

「え?」

「先に結論を伝えておくと、禁書庫へは『3人とも』入室して構わないよ。後で鍵を渡そう」

「…………こ、こわい!!」

俺は思わずソファーから飛び退きそうになった。

なんで知ってるのこの人!? もしかして魔法使い!? ……いや魔法学校の学長だから正真正銘のトップ魔法使いなんだけど、そういうギャグはおいといて、マジでなんで全部お見通しなんだ!?

「そんなに驚くことではないよ。君たち3人で、放課後に散々図書室で調べ物をしていたろ?」

学長は、まるで孫のいたずらを見守るような穏やかな口調で種明かしを始めた。

「君たち3人は、入学当初から色々と『訳あり』で目立っていたからね。私の元には、すぐに報告が上がってきていたのだよ」

「えっ……目立って、た?」

「ああ。そして今回、トーナメントの優勝報酬を発表した途端、君たちが明らかに目の色を変えてやる気を出し始めた……と。そこまでピースが揃えば、君たちが調べ物のために『禁書庫』に入りたがっていることくらい、私のような老人でもすぐに想像がつくよ」

なるほど。

言われてみれば、確かに容易に想像がつく。俺たちの行動は単純すぎた。

そして何より――俺たちは「目立たないようにしよう」と誓っていたくせに、思っている以上に学校側からガッツリ監視(注目)されていたらしい。(汗)

「そしてね、カールくん」

学長の目が、スッと細められた。

「君たちの探し物の1つは、禁書庫に『答えの一部』がある」

「えっ!?」

「わざわざ禁書庫の膨大な資料をひっくり返して調べるまでもない。その答えなら、私が後で教えてあげよう。だから、後ほど君の仲間である二人をここに呼びたまえ」

(えーっ!!)

俺は内心で絶叫した。

この学長、エルザが探している『究極魔法』の一部を知ってるのか!?

しかも、それをあっさりと教えてくれるなんて……さすがは元12魔術師、魔法大学のトップ! 話のスケールが違いすぎる!

「さて、二人を呼ぶ前に――」

グスタフ学長の空気が、一瞬にして変わった。

先ほどまでの好々爺のような雰囲気は消え失せ、底知れぬ魔力を持った『本物の魔法使い』としての重圧プレッシャーが、部屋の空気をビリビリと震わせる。

「君一人に、どうしても聞いておきたいことがある」

学長の鋭い眼光が、俺の心の中まで見透かすように突き刺さった。

「――君たちの村の近くに現れたという、『例の洞穴ダンジョン』についてだ」

(ッ……!!)

ついに。

ついに、この話をする時が来てしまったか。

俺は、これまで生きてきた中で――あの巨大スライムと対峙した時以上に――かつてないほどの強烈な緊張感に包まれ、息を呑んだ。


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