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スライム食ったら世界を救うことになった  作者: エリト


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【第33話】天才の戦術と、脳筋勇者の物理的(?)大勝利

俺の戦略は、極めて単純だ。

まず、光魔法のア・レイ(光線)を使って遠距離から攻撃する。そして一気に接近したらフラッシュ(閃光)を放って強烈な目くらましを行い、相手が怯んだ隙に、無属性で強化した拳で物理的に殴る。以上である。


己の魔力量の多さに物を言わせ、この燃費の悪いコンボを連発することで、準々決勝までの相手はなんとか沈めてきた。


ちなみにこのア・レイ、光魔法の中では珍しい物理的な破壊力を持った攻撃魔法だ。光の筋となって飛んでいくため攻撃速度が異様に速く、貫通力も高い。非常に有効な魔法なのだが……欠点もある。

威力が高い分、使う魔力量がやたらと多いこと。発動までにややタメ(時間)がかかること。そして何より、「直線にしか飛ばない」という致命的な弱点だ。


いくら弾速が速くても、相手にガッツリ構えられている状態から撃てば、軌道を読まれてあっさり避けられてしまう。

よって、実戦でこれを当てるには「隠れてこそこそ撃つ」という、光属性らしからぬ非常に陰湿な戦法を取らざるを得ない(笑)。


(余談だが、光の攻撃魔法の代表格といえばピュリファイ(浄化)がある。しかしこいつはアンデッドや瘴気には特効でも、生身の人間や物理的に存在する普通のモンスターには一切効かない。こういう対人戦の場ではマジで1ミリも役に立たないのだ。涙が出そうである)


対して、目の前に立つ因縁の相手ヴェルナーは、火・水・土・風の4属性を極めて器用に使いこなす。

いくら俺がスライム産のチートでレベル30オーバーだとはいえ、真正面から純粋な「魔力のぶつかり合い」になれば、出力の差で俺が勝つのはヴェルナーだって分かっているはずだ。そんなバカ正直な戦い方は絶対にしてこないだろう。

しかも、俺の光線からの物理殴りというワンパターンな戦法は、これまでの試合で完全にバレている。当然、対策は練ってきているはずだ。


さてさて、どうなることやら。


「はじめッ!」

審判の先生の号令が響き渡り、準決勝の火蓋が切られた。


俺は作戦通り、開幕と同時にア・レイを放つ。

ピシュッ! という鋭い音と共に光の矢が一直線に飛んでいくが、当然それを読んでいたヴェルナーは、流麗なステップで左右に避けながら杖を振るった。


「遅いな! ウィンド・ブラスト!!」


ヴェルナーが放ったのは、遠距離からの広範囲な風魔法。直接的なダメージよりも、俺の姿勢を崩し、動きを鈍らせるための牽制だ。

突風に煽られて俺の足が止まった、まさにその一瞬。


「捕まえたぞ! アース・バインド!!」


俺の足元の石畳が液状化し、泥の枷となって両足から胴体へと一気に絡みついてきた。完全に土魔法による拘束である。

動きを封じたところで、とどめに高火力の火魔法を叩き込む――対人戦における、美しき王道のコンボ戦術だ。


これに対するセオリー通りの対抗手段は、水の魔法で相手の火を遮るか、こちらも土の魔法で防御壁を作ること。

……しかし、残念ながら俺は光と無属性以外の魔法が全部苦手だ(涙)。

そして、そういう「魔法使い同士の高度な駆け引き」を、ヴェルナーは一流の家庭教師から腐るほど学んでおり、なおかつセンスも抜群に良い。


(あかん、これ俺に勝てる要素ないわ……)

なんて、内心でちょっと自虐してみる。


だが――正直、レベル差という圧倒的な現実は、小賢しい戦術の壁を容易くぶち破るのだ。


「ふん、お前の魔力が異常に高いことは分かっている。これならどうだ!」

ヴェルナーは俺を土魔法で拘束した後、俺の力任せの抵抗を警戒し、普段よりも念入りに追加の拘束魔法を重ね掛けしてきた。俺の全身が、分厚い岩の塊に飲み込まれたように固定される。


さすがにもう身動きが取れないだろう。

これを決定的な勝機と見たヴェルナーが、とどめを刺すべく杖を構えて一気に距離を詰めてきた。


「もらったァ!!」

「――甘い!」


俺の無属性パワー(身体強化)を舐めるなよ。


レベル14の土魔法での拘束?

レベル30超えのステータスからすれば、こんな岩の塊、ゼリーのようなものだ。


「ふんぬッ!!」

俺が無属性の魔力を全身に巡らせて力を込めると、バキンッ!! という爆音と共に、何重にも掛けられていた強固な土の拘束が、まるで薄いガラスのように粉々に砕け散った。


「なっ……!?」

まさかこうも容易く抜け出してくるとは思っていなかったヴェルナーが、信じられないものを見るように驚愕に目を見開く。


それでも、さすがは天才児。

一瞬の硬直の後、すぐさま俺のア・レイやパンチの反撃を受けまいと、とっさに身を屈めて完璧な回避体制を取った。並の生徒なら、このまま無防備に殴り飛ばされていただろう。


(おっ、すげえ反応速度。……でも、殴るのはお前じゃない!)


俺は、自分の足元に散らばっているものを思いっきり蹴り飛ばした。

――たった今、俺自身が粉砕した、ヴェルナーが出した土魔法の残骸である。


「えっ」

「そらよッ!!」


ドゴォォォォンッ!!

俺の規格外の脚力によって蹴り飛ばされた粉々の石礫いしつぶてが、散弾銃のように広がり、回避体制を取っていたヴェルナーを問答無用で吹き飛ばした。


「ぐはぁぁぁッ!?」

魔法の盾を展開する暇もなく、物理的な石の散弾を浴びたヴェルナーは、闘技場の端まで一直線だ。


勝負ありだ!


「そ、そこまで! 勝者、カール・アークライト!!」


静まり返った闘技場に、審判の先生の試合終了の合図が響いた。

正直、正統な魔法での勝利とは言い難い、やや脳筋寄りの勝ち方だが……それでも勝ちは勝ちだ!

俺は先生の合図を聞いて、闘技場の中央で堂々とガッツポーズをとるのであった。

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