【第30話】究極魔法の正体が「大規模破壊兵器」だった件と、利害が一致した極秘同盟
ヴェルナーの一件から数日後。恐れていた通り、カルバン領のエルザから「放課後、第3特別教室に来るように」というお誘い(という名の強制招集)の手紙が届いた。
(この間の貸しがある以上、断れるわけがない……!)
俺とクレムがビクビクしながら指定された教室の扉を開けると、彼女は待っていましたとばかりに優雅な笑みを浮かべ、さっそく本題を切り出してきた。
「よく来てくれたわね。それじゃあ、私たちがこれから目指す『究極魔法』について、詳細を説明するわ」
彼女の話を要約すると、こうだ。
その魔法は過去の文献にわずかに記されているだけの『未完』の魔法であること。莫大な魔力を制御するため、上級者(しかも相反する光と闇の属性)が複数人必要になること。そして、大人になれば領地の仕事で忙殺されるため、比較的自由に時間が使える『学生のうちに』魔法を完成させたい、ということらしい。
「なるほど、共同研究ってわけだ。……で? その究極魔法って、結局どんな魔法なの?」
肝心な利用目的を一切話そうとしない彼女に対し、俺が恐る恐る尋ねると、エルザはサラリととんでもないことを言った。
「究極の『破壊魔法』よ」
「…………はい?」
「光と闇、相反する2つの強大な力の『反発』を利用して、大規模に、かつ対象を粉々に消し飛ばす魔法らしいわ」
ぶっそう!!
いやいやいや、ちょっと待って聞いてないよ! 究極魔法ってもっとこう、世界を平和にするとか不老不死になるとかそういうロマン溢れるやつじゃないの!? 大規模に粉々にってそれ、完全に『大量破壊兵器』じゃん!
「そ、そんな物騒な魔法、完成させてどうするつもりなのさ!? 学生のうちに作るって……数十年後とはいえ、それ使うの確定してるんでしょ!?」
俺が思わず身を乗り出して抗議すると、エルザはスッと目を伏せた。
「あなたが思っている事はわかるわ……。でも、詳しい理由は言えないの」
そして、いつも余裕たっぷりで小悪魔的な彼女が、ふと、酷く辛そうな、思い詰めたような瞳で俺たちを見た。
「大丈夫。絶対に、悪い使い方はしないから……。どうか信じてちょうだい」
(……なんだ?)
ただの我が儘な大貴族の令嬢かと思っていたが、彼女にも何か、誰にも言えない重大な事情(重すぎる使命のようなもの?)があるのだろうか。
(……まあ、ヴェルナーから助けてもらった恩があるし。ここで断って、物理的に闇魔法で葬られるのも御免だしな)
俺は小さくため息をつき、「わかったよ。しばらく付き合ってみる」と頷いた。クレムも「カール君がやるなら、僕も手伝うよ」と同意してくれた。
「ありがとう! そうと決まれば、まずはお互いの正確な実力の把握(自己紹介)からね」
パァッと表情を明るくしたエルザは、俺の顔をジッと見つめてニヤリと笑った。
「カール、あなたの魔力レベル、本当は『20』は超えているんでしょ? じゃなきゃ、いくら2人がかりとはいえ、あんな中級魔法が暴発するわけないもの」
「う、うん! ちょうど20くらいだよ、あははは……」
俺は引き攣った笑顔で激しく頷いた。(本当はスライムのおかげで『30』以上あるんだけど、これ以上化物扱いされたくないから黙っておこう……!)
その後、俺たちは今後の具体的な計画について話し合った。
「リンギア魔法大学では、高学年(4、5、6年生)になると、実践実習として国中を各地へ回る機会が格段に増えるの。私たちはその外出の機会をフルに使って、各地の遺跡や古い文献から究極魔法のヒントを探すわ」
(どおりで、学内で高学年の姿をほとんど見かけないわけだ)
大貴族の令嬢なのに、泥臭く自らフィールドワークに出るつもりらしい。無理をするなぁ……と呆れつつも、俺の頭の中では別の野心がパズルのようにカチリと組み合わさっていた。
(いや待てよ……これ、俺にとってもめちゃくちゃ『好都合』じゃないか?)
俺は、ダンジョン崩壊の際にお告げで聞いた『銀のヴォルク』を探さなければならない。この首都リンギアでも隙を見て探すつもりだったが、学校の行事に便乗して「国中を回れる」のなら、調査の範囲が爆発的に広がる。
大規模破壊魔法の完成を目論む闇の美少女と、世界を救うために銀のヴォルクを探す妥協の勇者(レベル詐称)。
お互いの裏目的がピタリと噛み合い、俺たちはここに『極秘の同盟』を結成した。
まずは彼女の研究に付き合いながら、俺の伝説の次なる一歩を探し出すとしよう。




