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スライム食ったら世界を救うことになった  作者: エリト


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【第3話】自暴自棄になって野盗を殴ったら、檻ごと木っ端微塵になった件

最低限の泥水のような水と、石のように硬く干からびたパンだけを与えられ、ガタガタと揺れる荷台で過ごすこと数日。

俺たちは鬱蒼とした森の奥深く、日すらろくに当たらない場所にある野盗のアジトへ到着した。そこは粗末なテントがいくつか張られただけの野営地で、集落の入り口近くにある簡素な太い木で組まれた檻の中に、俺はゴミのように放り込まれた。


檻の中には、俺の他にも数人の子供たちが捕まっていた。みな服はボロボロで、頬はこけ、目には生気がない。野盗たちの会話を盗み聞きしたところ、どうやら明日、街から来る裏の奴隷商人にまとめて売り払われるらしい。


薄暗く冷たい檻の中、他の子供たちはガタガタと震え、親を呼んで声を殺して泣いている。

……なのに、なぜか俺は不思議なほど怯えていなかった。

(たぶん、10年間暗い洞穴で毎日スライムを叩き潰すサバイバル生活をして、地上に帰ったら村が激変してて、父親が亡くなってて、初馬車で野盗に攫われたから……もう恐怖や悲しみのキャパシティを完全に超えて、脳の処理落ちが起きてるんだろうな)

もはや現実感がなく、どこか遠い作り話の中にいるような奇妙な冷静さがあった。


その日の夜。野盗たちが焚き火を囲んで酒を飲み、下品な笑い声を上げている中。

捕まっている子供の一人が、耐えきれなくなったのか、檻の隙間から見張りの野盗に向かって必死に声を振り絞った。


「ここから出してください……っ! お願いします、家に……家族が待ってるんです……!」

涙声で懇願するその少年の声は、あまりにも悲痛だった。


「あぁ? うるせぇぞ、クソガキッ!」

酒を飲んで顔を赤くした大柄な見張りの野盗は、鬱陶しそうに舌打ちをして檻に近づき……あろうことか、懇願していたその少年の腹を、檻の隙間から容赦なく蹴り上げたのだ。


「ゲホッ……!! うぅ……っ」

少年は胃液を吐き出し、腹を抱えて泥だらけの地面にうずくまった。

「いいか? お前らはこれから金になる商品なんだ。顔に傷をつけると売り値が下がるから腹を蹴ったが……無事でいたいなら大人しく黙ってろ!」

野盗はゲラゲラと笑いながら、再び焚き火の輪へと戻っていった。


その圧倒的で理不尽な暴力に、他の子供たちは完全に萎縮し、息をすることすら恐れるように固まってしまった。

だが、俺は違った。その瞬間、俺の頭の中で何かが『ブチッ』と音を立てて切れたのだ。


自分でも自暴自棄になっている自覚はあった。相手は剣や斧といった武器を持った大人の男たちの集団だ。逆らえば殺されるかもしれない。

だが、目の前の理不尽なクズを、どうしようもなくぶん殴ってやりたいという衝動を、どうしても抑えきれなかった。父さんを失い、母さんに会えないイライラも相まって、俺の怒りは頂点に達していた。


俺は無言で立ち上がり、木組みの檻の隙間から腕をスッと伸ばした。そして、焚き火に戻ろうとしていた見張りの野盗の背中めがけて、思い切り、ありったけの怒りを込めて拳を振り抜いたのだ。


ドゴォォォォォンッ!!!


「……え?」


凄まじい爆発音のような轟音が森に響き渡った。信じられない光景が広がっていた。

俺の小さな拳が当たった瞬間、体重80キロはあろうかという大柄な大人の野盗が、まるで弾き飛ばされたゴルフボールのように、悲鳴を上げる間もなく数十メートル先の巨木まで一直線に吹き飛んでいったのだ。ドシャァッ! という音と共に木に激突し、ピクリとも動かなくなる。


しかもそれだけではない。俺の拳が空気を叩いた衝撃の余波、ただの『風圧』だけで、頑丈だったはずの太い木の檻が、まるで爪楊枝のようにバキバキとボロボロに砕け散ってしまったのである。


(えっ!? なにこれ!? いくら俺の頭に血が上ってたとはいえ、10歳の子供のパンチで大人があんなミサイルみたいに飛ぶか!?)


自分の拳を呆然と見つめたが、今は自分の謎パワーにツッコんでいる場合じゃない! 凄まじい音に気づいて、奥のテントから他の野盗たちが武器を手に出てくるはずだ。


「みんな、今のうちに逃げよう!!」

俺は砕け散った檻の中で固まっている他の子供たちに声をかけた。だが、すっかり恐怖に支配された彼らは「無理だよ……見つかったら殺される……」と首を振って一歩も動こうとしなかった。


だが、先ほど腹を蹴られてうずくまっていた少年だけは違った。

痛みに顔を歪めながらも、しっかりと俺の目を見返し、自らの震える足で立ち上がったのだ。

「……僕も、行く」


「よし、行こう! 俺の手を掴め!」

俺はその少年の手を取り、木っ端微塵に砕け散った檻の残骸を飛び越えた。松明の光が届かない、漆黒の暗い夜の森へ向けて、俺たちは一目散に駆け出したのだった。背後からは「おい! ガキどもが逃げたぞ!! 追え!!」という野盗たちの怒号が響き始めていた。


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