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スライム食ったら世界を救うことになった  作者: エリト


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【第27話】天才(レベル10)のドヤ顔挨拶を聞き流しつつ、金髪美少女に絡まれて恋愛ルート突入の予感がする件

「あ、あの光は気のせいです! 宿のシャンデリアが反射しただけです! すみません、よくわかりません! 失礼しまーす!!」


完全にドン引きして固まっているヴェルナーたちフェルト領の一行を置き去りにして、俺とクレムは「わからない」の一点張りで強引にロビーを抜け出し、自分たちの部屋へと全力で逃げ帰った。


そして翌朝。俺たちは彼らと絶対に顔を合わせないよう、夜明けと共に息を潜めてコソコソと宿を出発した。

その甲斐あってか、その後の道中ではフェルト領の豪華な馬車と出くわすこともなく、俺たちは無事に首都『リンギア』へと辿り着くことができたのだった。


「うおおおっ、すげえ……! ガバレリアよりさらにデカいぞ!」

首都の圧倒的なスケール、どこまでも続く石畳と、そこにある『リンギア魔法大学』の城のように立派すぎる校舎に度肝を抜かれつつも、感動している暇はなかった。

なにせ、数日後にはもう入学式が迫っているのだ。それまでに学生寮への入寮手続きや、真新しい制服の採寸、教科書や杖の買い出しなど、生活の基盤を整えなければならない。

俺とクレムが二人でバタバタと準備に追われているうちに、あっという間に入学式当日を迎えてしまった。


◇ ◇ ◇


リンギア魔法大学の大講堂。

厳かな雰囲気の中、今年入学する54名の新入生(見習い魔法使い)が一堂に会していた。リディア国500万人の人口に対し、1年間に見出される魔法使いの子供がたったこれだけなのだから、いかに貴重な存在かがよくわかる。


「――新入生代表、ヴェルナー・フェルディナント」

「はい」


名前を呼ばれて壇上に上がったのは、あの宿屋で絡んできた生意気なエリート少年、ヴェルナーだった。

今年の54名を代表して挨拶を行うらしい。聞くところによると、入学前に行われる『魔法使いとしてのレベル申告(魔力測定)』において、ヴェルナーのレベルはなんと『10』だったそうだ。


普通の10歳の子供は、魔法に目覚めたばかりでレベル5〜8くらいが相場である。入学時点で二桁の大台に乗っているヴェルナーは、歴史に名を残すかもしれない非常に稀有なレベルの持ち主であり、まさに「10年に一人の天才」として持て囃されているらしい。


壇上で「我々選ばれし貴族の魔法使いは、国家の礎として〜」とドヤ顔で語るヴェルナーを見上げながら、俺とクレムは最後列でひっそりと息を潜めていた。

(あいつ、あんなにふんぞり返ってるけど……俺とクレムを除けば、の話だよな……汗)


俺は自分の正確なレベルを測ったことはないが、エルウィンさんの見立てではすでに『30』を軽く超えているらしい。レベル30以上という熟練の領域になってくると、首都の魔法省の中枢にある特別な機械を使わないと正確な数値が測定できないのだそうだ。

さらに言えば、隣にいるクレムもおかしい。ダンジョンで覚醒した上にエルウィンさんの特訓を受けた彼は、すでにレベル『17』にまで跳ね上がっている。


(まあ、俺たちの異常なレベルのことは絶対に隠し通さなきゃいけないんだけどな)


さて。そんな桁外れのチート能力を持つ俺たちが、わざわざ面倒な貴族のマナーを覚えてまで、この魔法学校に大人しく通いに来たのには『絶対的な理由ルール』が1つある。


それは、この国では『魔法学校を卒業しないと、正規の魔法使いとして認められない』という法律があるからだ。

もっと言うと、大人になってからの『無免許魔法使い(未登録の野良魔法使い)』は、見つかり次第、重罪として処罰の対象になるらしい。

その処罰とは何か? ――『奴隷としての使役』である。


貴重な国家資源である魔法使いを、処刑して殺すなどは愚の骨頂。だから国は、無免許の魔法使いを「国の所有物(奴隷)」として死ぬまでコキ使うのだ。貴族として保護される正規の魔法使いと違って、奴隷となった魔法使いは危険な任務や過酷な労働で文字通り「使い放題」にされてしまう。


(野盗に捕まって檻に入れられた時の記憶が蘇るぜ……。当然、俺は手っ取り早くビッグな伝説にはなりたいが、死ぬまで労働させられる奴隷にだけは絶対になりたくない!)

だからこそ、この学校で『目立たず、普通に、無事に』卒業資格をもぎ取らなければならないのだ。


やがて入学式が無事に終わり、新入生たちが各クラスへと移動し始める。

(よしよし。ヴェルナーにも絡まれなかったし、ようやく静かにやり過ごすための平穏な学校生活が始まろうとしているぞ……)


俺がホッと安堵の息を吐きながら、クレムと共に講堂の廊下を歩いていた、その時だった。


「――そこのあなたたち。少し、お話しできるかしら?」


凛とした、それでいて鈴を転がしたような美しい声が響いた。

振り返ると、そこには見事な金色の長い髪を揺らす、同い年くらいの美少女が立っていた。上質な制服を完璧に着こなし、宝石のように青い瞳が真っ直ぐに俺たち(いや、俺?)を見つめている。

周囲の男子生徒たちがハッと息を呑んで振り返るほどの、圧倒的な美少女だ。


(……えっ!? なに!? 突然、謎の金髪美少女に声をかけられたんだけど!?)

俺の10歳の脳内テンションが急上昇する。ふわりと甘い香水の匂いが漂ってきた。

(おいおいおい、嘘だろ!? これはもしや……俺の平穏な学校生活編、初日からいきなり『ラブコメ・恋愛ルート』に突入しちゃうパターンのやつか!?)


自分のデカすぎる野心と壮大なフラグ体質を完全に棚に上げ、俺は一人で勝手に胸をドクンと高鳴らせてしまうのだった。


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