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スライム食ったら世界を救うことになった  作者: エリト


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【第26話】舐めてきた大貴族にショボい魔法を見せるつもりが、特大のやらかしでドン引きされた件

「ほら、光属性なんだろ? さっさと見せてみろよ、田舎貴族。それとも魔法の使い方も知らないのか?」


宿のロビーで、フェルト領の生意気な見習い少年に完全に退路を塞がれた俺とクレム。

(くっ……ここで拒否して騒ぎを大きくする方がマズい!)

そう判断した俺は、エルウィンさんに叩き込まれたばかりの貴族の作法を必死に思い出しながら、しぶしぶ偽名を名乗って一歩前に出た。


「ふん。俺は『ヴェルナー』だ」

少年がふんぞり返って名乗った直後、背後にいたガバレリアの生粋の見習い貴族の一人が、青ざめた顔で俺の耳元に小声でささやいてきた。


「カール君……あのヴェルナー様は、魔法師団トップのフェルディナント家の、直々のお孫さんだよ……!」

「えっ、トップの孫!?」


聞けば、フェルディナント家が率いる魔法師団は単体で1000人を超える国内最大の規模を誇る。しかも、そのトップを務めるお祖父様は、国全体の魔法師団の『副団長』をも兼務しており、なんとあの国王陛下にすら直接意見できる数少ない超大物なのだという。


(なるほど……そりゃあ、こんなに横柄な態度にもなるわけだ。生まれながらの超スーパーエリート、リアルチート家系じゃねえか!)

俺は内心で悪態をつきつつ、同時にエルウィンさんの「絶対に目立ったり、問題を起こしたりするんじゃないよ」という呪いのような言葉が脳裏をよぎった。


(ここは慎重にいこう。一番簡単で初歩的な『ヒール(回復魔法)』をちょろっとだけ指先から出して、「田舎者なので、まだここまでしか習ってないんです〜」ってヘコヘコしてやり過ごす作戦だ!)

俺は隣でガタガタ震えているクレムに目配せをした。クレムもコクンと頷く。よし、これで完璧だ。


「それじゃあ、いきますよ……せーのっ」

俺とクレムは、威圧感たっぷりのヴェルナーたちに囲まれて焦っていたせいか、完全にタイミングが被る形で、同時に魔法を唱えてしまった。


「「ヒール!!」」


――その瞬間だった。


カァァァァァァァァァッ……!!!!!!


「うおっ!?」

「な、なんだこの光は!?」


指先からポワッとホタルのような小さな光が出る……はずだった。

しかし、俺とクレムの手から溢れ出したのは、宿場の薄暗いロビー全体を真昼の太陽のように照らし出す、あまりにも強烈で神々しい純白の光だった。

その場にいた全員の長旅の疲労がフワッと一瞬で消え去り、かすり傷一つ残さず癒やされていく圧倒的な浄化の波動。


(……なんでーー!? なんでこんなド派手なことになってんの!?)


後で判明したことなのだが……実は、あの第2の洞穴(試練の祠)で巨大スライムから力を授かって以来、俺とクレム(そしてジャック兄さん)の間には、いわゆる『勇者のパーティバフ(相乗効果)』のようなものが常時かかっていたらしい。

そのため、俺たちの魔法がかけ合わさると、共鳴して本来なら発動しないような規格外の強力な魔法へと進化してしまうのだ。


もちろん、普通なら見習いの低いレベル(魔力)ではそんな高度な魔法は発動前に霧散するのだが……悲しいかな、今の俺はスライムを10年食い続けた『レベル30(中級魔法使い相当)』である。進化した魔法を維持するだけのデタラメな魔力が、俺の体にはあり余っていた。

結果として、初歩のヒールは、容易にその上の段階へと引き上げられてしまったのだ。


光が収まった後。

ヴェルナーと、その取り巻きのエリート見習いたちの間から、「な……っ!?」と、信じられないものを見るような驚愕の声が上がった。


「ば、バカな……!? 今のは、広範囲を同時に癒やす……中級魔法の『オールヒール』だと!?」

ヴェルナーが目を血走らせ、ワナワナと震える指で俺たちを指差した。

「お前ら、まだ入学前のただの見習いだろうが!? なんで田舎貴族が、熟練の魔法師しか使えないような中級魔法を、無詠唱に近い速度でぶっ放せるんだ!!」


(ヤ、ヤバいヤバいヤバい!! 目立ちまくってる!!)

俺は滝のような冷や汗を流しながら、両手を振って必死に取り繕おうとした。


「あ、あははは……! か、勘違いじゃないかな? ほら、そこの宿屋の照明のシャンデリアがピカッと反射したとか、目の錯覚とか……ね?」


俺が無理やり笑って誤魔化そうとしたが――ロビーにいたフェルト領の10人、そしてガバレリアの3人も含め、誰一人として笑う者はいなかった。

完全に、水を打ったような静まり返った空気がそこにはあった。全員の視線が、「コイツら、絶対にヤバい存在だ」と俺たちに釘付けになっている。


(エルウィンさぁぁん!! ほら言ったこっちゃない!! あなたの立てたフラグのせいで、入学前に超特大の地雷を踏み抜いちゃいましたよ!!)


俺は心の底から絶叫しながら、これからの波乱万丈すぎる魔法学校生活を予感して、一人泣きそうになるのだった。


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