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スライム食ったら世界を救うことになった  作者: エリト


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【第24話】地獄の貴族マナー特訓を乗り越え、壮大なフラグと共に魔法学校へ入学する件

俺は人知れず『調律者』だの『二つの世界を救え』だのという、とんでもなくスケールのデカい事態に巻き込まれてしまったわけだが……当然、周りの大人たちがそんな俺の裏事情を知るよしもない。

現実の俺の扱いは、あくまでエルウィンさんが計画した「遠い親戚の田舎貴族(という設定の平民)」のままであり、その計画は無慈悲なほど着々と進められていた。


俺とクレムは、この国の魔法使いのセオリー通り、正式に『魔法学校』に入れられて魔法のイロハを学ぶことになった。

しかし、入学時期までは約半年間の猶予がある。

「じゃあその半年間は、魔法学校の準備をしつつ街でゆっくり遊べるんだな!」と目を輝かせた俺だったが……現実はそんなに甘くなかった。


「いいかい二人とも。君たちは『田舎で育ったとはいえ貴族』という設定だ。今のままでは、言葉遣いも食事の作法も平民丸出しで、学校に入った瞬間にボロが出る。今日から徹底的に叩き込むからね」


その日から、俺とクレムの地獄の日々が始まった。

昼間はガバレリアにある厳格な貴族向けの学校に放り込まれ、分厚い本を頭に乗せて歩かされたり、何本もあるカトラリーの使い方のマナーを叩き込まれたりする。

そしてそれが終わって夕方施設に帰ってくると、今度は息つく暇もなく、エルウィンさんやベルモンさんによる「魔法の基礎知識」の詰め込み特訓が待っていたのだ。


「ち、違う! 魔力の巡らせ方が雑すぎる! やり直し!」

「ひぃぃぃっ!」

「カール、そこで無属性の出力を上げたら爆発するぞ。……ほら言わんこっちゃない」

「ドッボォォォン!!……ゴホッ、ゲホッ! 死ぬかと思った!」


(お、俺たちに休みをくれぇぇぇ〜っ!!)

毎晩、俺とクレムはベッドに倒れ込むなり泥のように眠った。野心家の俺ですら、このスパルタ教育には心が折れそうだった。銀のヴォルクがどうのこうのなんて、考えている余裕は1秒たりともなかった。


一方、その頃の母さんはというと、エドヴィン様の屋敷で住み込みの『メイド』として働くことになっていた。

平民が突然大貴族の屋敷で働くなんて大丈夫なのかと心配していたが、聞けば母さんは昔、ゾル街の町長宅でメイドとして働いていた経験があったらしく、持ち前の明るさもあって割とすぐに職場に馴染んでいた。


大貴族のメイドといえば平民からすれば超エリート職であり、待遇も破格らしい。……だが、俺としては少し悔しかった。

(本当は今すぐデカい家を買って、フカフカのベッドで楽させてやりたかったのに……結局、まだ母さんを働かせてしまっている。ぐぬぬ……待っててくれ母さん。俺が魔法学校を卒業して立派な魔法使いになったら、絶対に超ドデカい豪邸を建ててやるからな!)

俺は密かに、親孝行の決意を新たにしていた。


さらに驚いたことに、母さんは最近やたらと元気なのだ。

「いやぁ、最近本当にお肌の調子がいいのよねぇ。ほらカール、見てこれ!」

「うおっ、ほんとにツヤツヤだ……」


巨大スライムに長らく捕まっていた影響(通称:謎のスライムエステ効果)なのか、ただでさえ若見えする母さんは、最近さらに若返っているように見えた。

「ふふふ。このままじゃ、お母さんも10歳から成長しないカールに負けずに若返っちゃうわね」などと冗談を言ってカラカラと笑う始末だ。元気なのは息子として嬉しいが、ちょっと複雑な気分である。


そんなこんなで、文字通り「忙殺」された怒涛の半年間が、あっという間に過ぎ去っていった。


◇ ◇ ◇


さて、俺たちが入学する魔法学校だが、実はこのガバレリアの街にはない。

そもそも、リディア国全体で魔法使いはたったの5千人しかおらず、新しく生まれてくる子供も毎年50人程度しかいないのだ。

そのため、魔法学校は国の中心である首都『リンギア』に一箇所だけ集約されているらしい。リディア国最大の貴族学校の敷地内に併設されており、名前はずばり『リンギア魔法大学』(リンギア大学の魔法学部のような扱い)という。


「もちろん、卒業生は全員魔法使いだからな。そのまま魔法師団に配属されるわけだが……生徒は貴族ばかりだから、卒業後は基本的には自分の領地(実家)の魔法師団に配属されて戻っていくことが多いらしい。例外もあるそうだがな」

出発の準備をしながら、護衛としてガバレリアにすっかり定着したジャック兄さんがそんな豆知識を教えてくれた。


そして、ついに出発の朝。

馬車の前に立つ俺とクレム(立派な制服姿)に向けて、エルウィンさんは腕を組んで、最後に静かに釘を刺してきた。


「いいかい二人とも。学校では、決して目立ったり、何も問題を起こしたりするんじゃないよ。普通に、ただ普通に過ごして卒業すれば……またこのガバレリアに無事に戻ってこられるからね」


その言葉を聞いた瞬間、俺の脳内の危険察知センサーが激しく反応した。

(で、でたーっ! 「目立たず普通に過ごせ」って……それ、絶対になんらかのデカいトラブルに巻き込まれてド派手に目立っちゃうパターンのやつだ!! エルウィンさん、頼むからそんな『壮大なフラグ』を立てないでください!!)


俺の顔が引き攣っていることなど露知らず。

「カール、体に気をつけてね! クレム君も頑張って!」

「手紙書くからな! 達者でな!」

母さん、ジャック兄さん、そしてエルウィンさんとベルモンさんたちに見送られながら。


俺とクレムを乗せた馬車は、次なる舞台――首都リンギアへ向けて、ゆっくりと走り出したのだった。


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