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スライム食ったら世界を救うことになった  作者: エリト


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【第21話】怒られるのが怖くて適当に報告したら、マッドサイエンティストの機嫌が直った件

ダンジョンを無事に脱出した俺たち3人は、気を失ったままの母さんを連れて、急ぎ『ゾル街』へと帰還した。


その道中、俺の野心はひそかにゴリゴリと削られていた。

もともと大柄で身体能力の高いジャック兄さんは、新しく目覚めた『無属性』の身体強化魔法を、まるで息をするようにごく自然と使いこなしていたのだ。

大人の女性である母さんを背負い、足場の悪い森の中を「はっはっは、羽みたいに軽いぜ!」と軽々と、かつハイスピードで運んでくれたのである。


(ぐぬぬ……。見事な魔法の使いこなしっぷり。その上、怪我をすればクレムの光魔法で回復。おまけに腰には伝説級の青く光る剣……。やっぱりどう考えても、勇者(主人公)はジャック兄さんじゃないか!)

俺のビッグな伝説が、身近なムキムキ22歳に乗っ取られようとしている。そんな危機感を覚えつつも、無事に街の安宿へと帰り着くことができた。


◇ ◇ ◇


それから10日足らずのことだった。

「カール! カールはいるか!?」

宿の扉がバンッと乱暴に開き、息を切らしたエルウィンさんが数名の魔法師を引き連れてゾル街に現れた。俺たちだけで突入したという早馬の報告を受け、ガバレリアから寝ずの強行軍で急いで駆けつけてきたらしい。


俺の全身から、再び滝のような冷や汗が噴き出した。

(ヤ、ヤバい……! エルウィンさんの到着を待たずに勝手に国家機密の洞穴に入って、あまつさえ完全に崩壊させてしまった……。大魔法使いであるこの人に『極刑』を言い渡されて、俺の首が物理的に飛ぶのでは……!?)


ガチガチと震えながら、俺はエルウィンさんに事の顛末――母さんを見つけた直後、ダンジョンが完全に崩落して消滅してしまったこと――を恐る恐る伝えた。


「……消滅した。そうですか……」

エルウィンさんの顔が、スゥッと暗く、この世の終わりのように沈み込んだ。

あきらかに、未知のダンジョンという極上の研究対象おもちゃを目の前で奪われて絶望している、マッドサイエンティスト特有の顔である。(俺のせいだけど、知らんがな!)と内心で逆ギレしつつ、俺は必死に次の言葉を紡いだ。


「で、でも! ジャック兄さんとクレムが、その洞穴の中で魔法に目覚めたんです! それに、ジャック兄さんは岩をゼリーみたいに斬れる青く光る剣も拾って……!」


その言葉を聞いた瞬間、エルウィンさんの顔にパァァーッ! と狂気じみた輝きが戻ってきた。

「なんだって!? 平民が二人も同時に魔法に覚醒し、さらには未知の魔剣だと!? 素晴らしい! 素晴らしいぞ!!」

(よ、よかったぁぁぁ! 俺の首、ギリギリで胴体と繋がったままセーフ!!)


エルウィンさんの興味がジャック兄さんたちに移ったことにホッと胸を撫で下ろした俺だったが、同時に一つの悩みを抱えていた。

(……あの巨大スライムが言ってた『調律者』とか『ガンズ・テラ』とかいう意味不明な話、どこまで正直に話すべきか……?)

あんなスケールのデカすぎる話を下手に伝えたら、今度こそ俺は一生モルモットとして解剖されるかもしれない。10歳の子供の防衛本能が働き、俺はつい、肝心な部分を誤魔化してしまった。


「お、俺の方はですね……『勇者よ、よく来た』みたいな謎の声が聞こえた後、いきなり巨大スライムがドロドロに溶けちゃって。そしたら捕まってた母さんが解放されて、急に崩壊が始まったんです! 以上です!」


「ふむ……? 勇者? 巨大スライムの突然の溶解……?」

エルウィンさんは顎に手を当てて怪訝そうな顔をしたが、今日はそれ以上突っ込んでこなかった。


「……まあいい。調査が済んだら、ジャックとクレム。あなたたち二人にもガバレリアに来てもらいます」

そう3人に告げると、エルウィンさんは「今日はもう限界だ……」とフラフラな足取りで、さっさと街の高級宿屋へ引っ込んでしまった。よっぽど急いで来て、相当疲労が溜まっていたのだろう。


◇ ◇ ◇


翌日。少し元気を取り戻したエルウィンさんと魔法師たちは、俺たち3人の案内で、あの崩壊した洞穴の跡地へと向かった。

しかし、その後数日間にわたって瓦礫を退かし、魔法で地中を探ってみても、洞穴があった場所には『強力な魔力の残滓』があるだけで、やはり入り口もスライムも何も見つからなかった。


「……これ以上調査をしても、意味がなさそうだな」

5日目にして、ついにエルウィンさんもそう判断を下した。


一方、俺の母さんはいまだに目を覚ましていなかった。

だが、ゾル街の有能な医師に診てもらったところ、命に別状は全くないという。

「呼吸も脈も非常に安定しています。というか……巨大なスライムに取り込まれていたとお聞きしましたが、なぜかお母様の肌の調子が信じられないほどツヤツヤで若々しいんですよね。一種の美容液みたいな成分でもあったんでしょうか? まあ、しばらく寝ていれば自然と起きるでしょう」


(スライム、まさかの極上エステ効果……!?)

心配していた俺も、拍子抜けするような医師の診断に思わずズッコケそうになった。


かくして、魔法に覚醒したジャック兄さんとクレム、そしてお肌ツヤツヤのまま眠り続ける母さんを連れて、俺たちは再び領主様のいる大都市『ガバレリア』へと戻ることになったのだった。


(やれやれ……俺の伝説の第一歩、この後一体どうなることやら……)

揺れる馬車の中で、俺は流れていく景色を見つめながら、大きく一つため息をついた。


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