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スライム食ったら世界を救うことになった  作者: エリト


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【第17話】俺を呼ぶ謎のダンジョン。最深部で母さんを囚えていたのは……!

早馬を飛ばして森の奥へと足を踏み入れた俺たちは、鬱蒼とした木々の間にポッカリと口を開ける、兵士からの報告にあった『突然現れた謎の洞穴』の前に到着した。


その禍々しい真っ黒な入り口を見た瞬間、俺の背筋にゾクッと冷たいものが走った。

間違いない。俺の直感は正しかった。入り口から吹き出してくる、カビ臭くて冷たい風。これはかつて、俺が10年間も閉じ込められていたあの『光るスライムの洞穴』と全く同じ気配だ。


それどころか、なぜかこの洞穴全体が、まるで生き物のように脈打ち、「こっちへ来い、カール」と『俺を呼んでいる』ような気さえしたのだ。肌が粟立ち、心臓がバクバクと嫌な音を立てる。

(もしかして……母さんがこのタイミングで消息を絶って、こんな場所にいるのも……このダンジョンが、俺をここに強引におびき寄せるための『人質』として攫ったのか……?)


あまりにも突拍子もない、狂った推測だ。いくら魔法が存在する世界でも、ダンジョンそのものに意志があるなんて。ジャック兄さんやクレムにはとても言えなかったが、俺は一人で静かに、そして確信を持ってそれを感じ取っていた。


「とにかく、時間がない。3人で中に入ろう。松明を頼む」

俺たちは松明を掲げ、剣を抜いて慎重に洞穴の中へと足を踏み入れた。中はヒンヤリと冷たく、あの10年間の過酷なサバイバル生活を嫌でも思い出させる、じめじめとした空気が漂っている。


「……母さん、暗がりで足を滑らせて、俺みたいに不用意に下まで落ちちゃったりしたんだろうか……」

不安に駆られ、松明の光を揺らしながら俺はついそんな独り言をこぼしてしまった。

すると、前を歩いて警戒していたジャック兄さんが、呆れたように振り返って鼻で笑った。


「バカ言え。カリンさんなら、こんな怪しい穴に不用意に近づくようなバカな真似は絶対にしないだろ」

「…………あ」

(……あれ? 今、地味に俺のこと「自ら落ちた大バカ者だった」ってディスった? 確実にディスったよね!?)

10歳で村の掟を破って意気揚々と穴に落ちた俺の黒歴史を遠回しにイジられ、俺はぐぬぬと唇を噛んだ。まあ、実際に落ちたアホは俺なので反論のしようがないのが悔しいところだ。


「どこか下に降りられる道はないか?」と周辺を丁寧に探していると、ふと、岩壁の少し高い位置に、人工的にくり抜かれた横穴のような形で『ダンジョンの入り口』が開いているのを発見した。

これも、俺が元いた洞穴から脱出する時に通った、あの石造りの通路と全く同じ構造だ。

「ここにおばさんが入ったとしたら、大変だね……!」

クレムの青ざめた言葉に俺も頷き、すぐにダンジョンの中へと捜索の足を踏み入れた。


相変わらず、ダンジョンの通路には凶悪な顔をしたオークや、毒々しい色のゴブリンのようなモンスターたちがうようよと歩き回っている。

だが、俺が松明を持って先頭に立った瞬間、奴らは俺の姿を見るなり「ヒィッ!」「ギャンッ!」と情けない悲鳴を上げてクモの子を散らすように壁際へ逃げ、ガタガタと震え上がった。

スライムを食い続けた結果得た『レベル30』の圧倒的な威圧感は、別のダンジョンでも健在らしい。すげーぞ、レベル30。


(正直、めちゃくちゃ助かる……!)

いくら俺のレベルが高くて、ワンパンで大人が吹っ飛ぶとはいえ、俺は実戦経験ゼロのただの子供だ。もしガチのモンスターの群れと真っ向から殺し合いの戦闘になったら、パニックになって絶対ヤバいことになっていただろう。


逃げ惑うモンスターたちを尻目にしばらく探索を続けていると、石畳の地面に明らかな『人が通った痕跡』を見つけた。

引きずられたような靴の跡や、見覚えのある服の布切れが岩の角に引っかかっている。


「これ、母さんが着てた服の布だ……! こっちだ!」

俺は焦りのあまり、後先考えずに松明を放り出し、先を急いで走り出してしまった。

「おいカール、待て! 罠があるかもしれない、一人で突っ走るな!」

「カール君、危ないよ!」

後ろからジャック兄さんとクレムの制止する声が聞こえたが、俺の足は止まらない。その結果、俺と後ろの二人との間に、10メートルほどの距離が出来てしまった。


――その時だった。


ゴゴゴゴォォォッ!!

「うわっ!?」

突如として、ダンジョンの道や壁がまるで巨大な生き物の胃袋のようにぐにゃりと歪み、凄まじい轟音を立てて形を変えたのだ。

振り返ると、今まで通ってきた一本道が、天井から降りてきた分厚い岩壁によって完全に遮断されていた。


「ジャック兄さん!? クレム!?」

俺は慌てて引き返し、分厚い岩壁をドンッ! と力任せに叩いた。だが、いくら叫んでも叩いても、向こうからは何も聞こえない。見事に二人と分断されてしまった。


(……俺だけを奥へ進め、ってことか)

ダンジョンが明確な意志を持って、俺だけを奥へ誘い込んでいる。その確信はもはや疑いようのないものになっていた。


俺は覚悟を決め、一人で迷宮の奥深くへと進んだ。

やがてたどり着いたのは、開けた巨大なドーム状の突き当たりの部屋。……いわゆる、ボス部屋のような広大な空間だった。


「母さん……っ!!」


部屋の中央を見た瞬間、俺の喉から悲痛な叫び声が漏れた。

そこには、探して探して、ようやく見つけた最愛の母さんがいた。


だが、母さんは意識を失い、宙に浮くようにして『山のような巨大なスライム』の体内に、ドロドロと拘束されていたのだった――。

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