【第15話】母さんが行方不明になって絶望したけど、有能すぎる先輩が神対応してくれた件
「……どういうことですか、ベルモンさん。母さんが来てないって……消息を絶ったって、どういうことだよ!」
パニックになり、声を荒らげる俺に対し、ベルモンさんは俺の肩を両手でしっかりと掴み、静かに、調べた限りの事実を教えてくれた。
母さんはエルウィンさんからの手紙が届いてすぐに、居ても立っても居られず隣村を飛び出したらしい。隣村からガバレリアまでは、乗り合い馬車を乗り継いで急げば1週間程度の距離だ。
しかし、どうやら母さんはその道中でぷっつりと消息不明になってしまったというのだ。ガバレリアの騎士団が手分けして調べたところ、旅商人が途中の街で見かけたのを最後に、足取りが完全に途絶えているらしい。
「マジかよ……。こんなことってあるのかよ……」
俺の野心のせいで父さんは死に、今度は母さんまで行方不明。おまけに10年も俺を閉じ込めていたあの洞穴は、忽然と姿を消してしまった。
(俺、何か悪いことしたか? 伝説の男になるって夢見ただけで、神様に呪われてでもいるんじゃないのか……!?)
「くそっ……! 母さん、待ってて……今すぐ俺が探しに行って、助け出すから!」
怒りと焦りと恐怖で頭が沸騰し、俺は荷物を放り出して、来た道を引き返そうと施設を飛び出そうとした。
ガシッ。
「待ちなさい。そんなに血相を変えて、一人でどこへ行くつもりだ」
暴れる俺の腕を、ベルモンさんが強い力で引き止めた。
「離してよ! 母さんがどこかで危ない目に遭ってるかもしれないんだぞ!」
「落ち着けと言っている。お前が一人で飛び出したところで、どうやって広大な街道を探すつもりだ」
さすがは沈着冷静で優秀な男だ。ベルモンさんは、俺がパニックになることを見越して、すでに論理的な対処を考えてくれていた。
いくつかの証言を元にルートを逆算すると、どうも母さんは俺が野盗に攫われたあの『ゾル街』の近くの森周辺で消息を絶った可能性が高いと分かったのだ。
本来、ベルモンさんのような魔法師団のトップクラスの人間が、たかだか平民の女性一人が消息を絶った程度のことで個人的に動くことはない。
しかし、俺の数奇な境遇を知っており、これから一緒に国家機密を背負う仲間になると思えば、不憫に思って手助けしてやろうとなってくれたらしい。本当に、見た目に反して情に厚いありがたい人だ。
「……特別に、魔法師団から『令状』を出そう。ゾル街で探索の支援を頼みなさい。この令状があれば、辺境の兵士を動かせるはずだ。馬も貸してやる」
ベルモンさんは、懐から立派な赤い蝋の封印と紋章の入った羊皮紙を渡してくれた。
さすがに事情を知ったエルウィンさんも、「君が使い物にならなくなっては困るからね」と、あっさりと数日間の外出の許可を出してくれた。
「ベルモンさん、エルウィンさん……ありがとうございます! 絶対に見つけてきます!」
俺はベルモンさんから受け取った令状をギュッと握りしめ、用意された早馬に飛び乗った。
(待っててくれ母さん。今度こそ、絶対に俺が助けるから!)
俺は、一縷の望みをかけて、母さんの足取りが途絶えたゾル街へと全速力で馬を走らせた。




