【第14話】田舎貴族の末裔(偽)にでっち上げられ、ウキウキで街に戻ったら母さんが行方不明な件
「しばらくしたら、またあの洞穴やダンジョンがふらりと現れるかもしれないからね。念のため、監視を置いておこう」
エルウィンさんの指示により、数名の優秀な兵士がテルト村に駐留することになった。
そして、これ以上ここにいても無駄だと判断した調査隊一行は、再び『ガバレリア』へと戻ることになったのだ。
貴重な光属性と無属性を持ち、謎のレベル30魔法使いに仕上がってしまった俺は、当然のように同行である。
「さよなら、テルト村……」
遠ざかる故郷の景色を馬車の窓から見つめながら、俺はポツリとつぶやいた。立派な街並みに変わってしまっていたとはいえ、やっぱり自分が生まれ育った村を離れるのは寂しい。もう二度と、ただの村の子供には戻れないのだと実感させられた。
◇ ◇ ◇
帰りの馬車の道中。
向かいに座るエルウィンさんが、これからの俺の「設定」について、とんでもないことを言い出した。
「いいかい、カール。ガバレリアに戻ったら、魔法師団や周りの人間には君のことを『わたしの遠い親戚で、平民と変わらない生活を送っていた没落気味の田舎貴族に生まれた子』と説明するからね」
「……はい?」
光るスライムで魔力を獲得したなんて国家崩壊レベルの極秘情報は、絶対に外に漏らせない。だから、魔法使いを輩出する血筋である『エルウィンさんの親戚』ということにでっち上げるらしい。権力者の強引な経歴詐称である。
「それに、君はこれから首都にある『魔法学校』に通うことも決定した。もちろん、入学するまでの間に、貴族としての最低限の知識やマナー、言葉遣いもきっちり叩き込ませてもらうからね。覚悟しておくように」
「えっ、本当ですか!?」
これには俺も目を輝かせた。
貴重な光属性持ちの中級魔術師なのだ。魔法学校を無事に卒業して国に雇われる正規の魔法使いになれば、平民では考えられないほどたくさんのお金がもらえるらしい。
(よし……! これで俺の伝説の第一歩が、本格的なエリート街道として始まるぞ!)
そして何より、お金持ちになれれば、自分のせいで長年心配と迷惑をかけてしまった母さんに、これでもかというくらい親孝行ができる。フカフカのベッドがある、大きくて綺麗な家を買ってあげよう。美味しいものもたくさん食べさせてあげたい。
「もうすぐガバレリアかぁ……」
あの洞穴から生還して、すでに1ヶ月半が経っていた。入れ違いになってしまったとはいえ、たぶん、母さんはもうガバレリアに着いて、俺の帰りを首を長くして待ってるはずだ。ようやく、10年ぶりに母さんに会える!
◇ ◇ ◇
そして、馬車は長旅を終え、再びガバレリアの魔法師団施設へと到着した。
俺は自分の荷物を下ろすのもそこそこに、出迎えてくれたベルモンさんの元へ笑顔で駆け寄った。
「ベルモンさん、ただいま! あの、俺の母さん、無事に着いてますよね!? どこにいますか!?」
満面の笑みで尋ねた俺に対し、普段は氷のように表情を変えないベルモンさんが、やや曇った、ひどく言い淀むような顔で答えた。
「……いや。カール、落ち着いて聞け。君の母親は、まだここには来ていないぞ」
「え?」
「それどころか……こちらへ向かう途中で、消息を絶ったらしい」
ガタン、と。俺の頭の中で何かが崩れ落ちるような音がした。
母さんがいない? 消息を絶った?
「どういう……こと、ですか……? 嘘ですよね?」
ようやく会える、やっと謝れると思っていた母さんの行方不明の知らせに、俺の頭は真っ白になり、ただただ呆然と立ち尽くすことしかできなかった。




