【第12話】スライムで魔法使いになれるとか世界崩壊レベルの国家機密だった件
ガタゴトと揺れる馬車の中で、エルウィンさんは周囲に聞き耳を立てられないよう、静かな、しかしひどく真剣な声で語り始めた。
「結論から言おう。魔法使いというのは、国家にとって最大級の武力であり資源だ。大変貴重な存在であるにも関わらず、決して『簡単には増やせない』んだよ」
エルウィンさんの説明によると、この世界のパワーバランスは「魔法使いの数=国力」だという。他国との戦争から、凶悪な猛獣やモンスターの討伐、果ては大規模な土木工事まで、彼らはあらゆる場面で重宝されている。
しかし、魔法使いは『特定の血筋』からしか生まれず、しかも長生きで成果を出しやすいため、そのほとんどがだいぶ昔に国に抱え込まれ、貴族になっているのだという。
「……さて、カール。ここで一つ想像してみてくれ。もしここで、『森の奥で光るスライムを食べるだけで、平民だろうが誰でも簡単に魔法使いが増やせる』という事実が世間に知れ渡ったら、どうなると思う?」
俺はゴクリと生唾を飲み込んだ。
「……他国も巻き込んで、血眼になってスライムの奪い合いの戦争になりますね」
「その通りだ。スライムを独占した国が世界を支配できるのだからな」
俺の答えに、エルウィンさんは満足そうに頷いた。だからこそ、超国家機密として、情報源である俺の扱いは慎重に慎重を期していたのだ。
「それに、君の『属性』や『レベル』も異常極まりない。君は2つの属性を持っている。一つは、数が極端に少なく、怪我の回復やアンデッド(不死者)特効を持つ『光属性』。そしてもう一つは、魔力を純粋な力に変換し、己の攻撃力の強化や回復力を限界まで引き出す希少な『無属性』だ」
(なるほど……!)
俺は目から鱗が落ちる思いだった。大人の野盗をワンパンで数十メートル吹き飛ばせたり、素手でウサギが爆散したりしたのは、俺が怒った時に無意識に『無属性の攻撃力強化魔法』を使っていたせいだったのか。
「さらに不可解で恐ろしいのが、君のレベルだ。魔力測定器の反応から見て、君の魔法レベルはすでに『30』……第一線で戦う中級魔法使いの領域に達している」
「レベル30って、そんなにすごいんですか?」
「普通、魔法使いとして生まれた子供が、血を吐くような訓練を10年続けて、ようやく到達できるかどうかという数字だ。それを君は……ただ洞穴で10年間寝て、スライムを食ってただけで到達してしまった。常識ではあり得ないほどヤバいことなんだよ」
(す、すげえ……。俺、マジで伝説級のチート能力を手に入れてたのか……)
嬉しさと恐ろしさが入り混じり、俺は自分の小さな拳を見つめた。
そんなこんなで、膨大な情報量に頭がパンクしそうになりながら、馬車に揺られること約10日。
「……見えてきたぞ」
護衛の兵士の声に、俺は窓から顔を出した。
約1ヶ月ぶり、2度目の帰還。
俺の故郷であり、俺がいない10年の間にすっかり見知らぬ立派な街へと発展してしまった『テルト村』の姿が、そこにあった。
いよいよ、あの因縁の洞穴(スライムの養殖場)との再会である。




