scarlet philosophia⑤
その日はしとしとと雨が降っていた。
こんな日は僕もスズナも薬草採集には出向かず、部屋に籠もってずーっと本を読んでいた。彼女は雨の日はどうも調子が悪いらしく、僕に何かを教えることもいつものようにお茶を淹れてくれることもない。身体の調子が悪いのは、スズナは髪に取り憑いた火のせいだと雨が降る度に嘆いている。
「ルーベンス」
スズナはベッドに横になりながら、僕を呼んだ。
「どうしたの?」
しばらく待ってみたが、彼女から返答は無い。
「スズナ?」
「あぁ、その……この前に渡した本は読んでくれているのか気になってね」
スズナは相変わらずベッドから起き上がること無く、まるで取り繕うかのようにそう言った。
「家でだけど、ちょっとずつ読んでるよ」
「それはよかった」
スズナは少しだけ掠れた声でそう言うと、小さく欠伸をした。
「ルーベンス。君にはまだわたしが魔女になった理由を話してはいなかったね」
「えっ……う、うん……」
突然の言葉に、僕は思わず驚いてしまう。
「少しだけ魔女の昔話を聞いてくれるかい?」
スズナは上半身を起こしてこちらに視線を向けると、寂しそうに微笑んだ。別に、僕には断る理由なんて無かったから、曖昧に頷いただけだった。けれど、スズナにとってはそれでよかったようで、そっと目を閉じた。
「と、そんな時間は無いようだね」
スズナは寂しそうな瞳で、僕の後ろにある窓の外を見つめる。外には夜の闇に染められた森が広がっているだけで、何も窺い知ることは出来なかった。どうやら本を読み耽っていたせいで、日が暮れていたことに気づかなかったようだ。




