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第36話~灰の賢者が黒の賢者に問う~

「あの時も同じ話をしたのう。ルイス」

「そうだな」


 杖を地面に突き立てながら立ち上がる灰の賢者と、鏡の盾を真正面に構えて一歩下がるルイス。岩の間を吹く風が2人の間を静かに撫でる。


「なぜじゃ?」

「どういう意味だ?」

「なぜ、理由を話してくれないんじゃ?」


 ファニーは灰の賢者の表情を見た。穏やかな目をしているのに、口元だけは険しい。城の地下室で初めてルイスを見たときと、連れ戻されたときにした口喧嘩を思い出した。


「ルイス。誰にも話していないの?」

「どうせ答えは変わらない」

「そ、そんなことないって」


 にらみ合う2人の間に割って入り、ルイスの前で両腕を大きく広げた。少し遅れてティーブが背中合わせに立ち、灰の賢者に剣の切っ先を向ける。


「ティーブ、だめだって」

「し、しかし」

「いいから。剣をしまって」


 ファニーは弓を投げ捨てた。それを見たティーブも鞘に納めた剣を足元に置く。3枚の鏡の盾はふらふらとルイスの周囲をただよっていた。


「ねぇルイス、一回話してみようよ。そうすれば、わかってもらえるって」

「いや、それはない」

「オリバーさんを見て。ちゃんと待っててくれている」


 灰の賢者は杖をもったまま動かない。カルミアの剣の花が取り囲む岩肌に咲いていく。


「オリバーのことはよく知っている。受け入れるわけがない」

「ルイス。共に世界のふもとを夢見たことを、忘れてしまったかの?初めは2人だけじゃった。そして、」

「そして6人の仲間と成し遂げた。忘れるわけがないだろ。だから、こうするしかないんだ」


 鏡の盾がオリバーを狙った。岩の壁に弾かれたが、残りの2枚と合わせて取り囲む。ルイスが仕掛けると同時に剣の花が回り、取り囲んでいた岩を穿っていく。

(始まっちゃった)

 ティーブは前かがみになりながら、すぐにでも剣を拾い上げられるような体勢になっていた。


「お願い。灰の賢者のところに連れて行って」

「は、はっ?」

「まだ説得できるかもしれないから。命令よ!」


 最後の一言を言い放つファニーの声は、自身が驚いてしまうほど震えていた。


「ファニー待て!」

「ルイスが何も話さないのが悪いの!」

「ファニーちゃん」

「大丈夫。話をするだけだから」


 剣を拾い上げたティーブに先導され、鏡の盾を迎撃する岩の合間を縫っていく。飛び交う破片に切り傷を作りながら、なんとか話せるところまで近づけた。

(やっぱり、オリバーさんも話したがっているんだ)

 鏡の盾を防いでいるだけで、近づくファニーたちに岩が飛んでくることはない。地面を這うように走って一気に近寄った。


「あの」

「主は?」

「ファニーです」


 岩が崩れ落ちるような激しい音。オリバーの視線を追うと、取り囲んでいた岩の一角が無くなっていた。すぐに向かおうとする行く手を遮る。


「待って。少しだけでいいから」

「お嬢ちゃん。お主はルイスの子か?」

「へっ?」


 足が止まってしまうファニー。その横をオリバーは通り抜けてしまう。


「オリバー!!」


 叫び声と共に岩が砕かれる大きな音。鏡の盾が地面に叩きつけられ、その下には大量の岩。


「ファニー。無事か?」

「だ、大丈夫だって」

「行くぞ。ティーブ!」


 ファニーの足が上げられる。抱きかかえられ、剣の花が打ち砕いた岩に向かって全力で走り始める。

(もうちょっと、だったのに。それに子って)

 鏡と岩が激しくぶつかり合う。剣の花も加わり、打撃音と金属音で耳を塞ぎたくなるほどだった。


 灰の賢者が作り出した岩の包囲の外へ、ファニー達は出た。その先に広がっていたのは岩肌が広がる大地だけではなく、10人ほどの人影。


「誰?」

「申し訳ありません」

「痛っ」


 岩でむき出しの地面にファニーは落とされた。出た先にいた人たちに向かって、ティーブは剣を構えている。


「ファニーちゃん、あれはエルフだよ」

「エルフ?なんでこんなところに」

「知らない」


 エルフの半分は剣を抜き、もう半分は片手をファニー達に向けている。立ち上がったファニーの手には弓はない。オリバーの前で投げ捨て、そのまま置いてきてしまっていた。

(エルフは、どっち?というより、敵なんて本当にいるの?)

 片手を向けているエルフ達は、知らない言葉で唄っていた。そして手の平が淡い光を放ち始める。


「魔法だ」

「え?」

「気をつけて。エルフはああやって詠唱して魔法を使うの」


 ティーブは包囲を突破しようと剣を振るう。だが5本のエルフの剣に阻まれ先に進めない。詠唱は進み、光は強まっていく。


「姫!」


 灰の賢者の岩からカルミアが躍り出る。剣の花がエルフを襲い、包囲の一角を切り崩す。詠唱が止まった瞬間、エルフを突破し外へ逃れる。


バリバリバリバリ。


 ファニー達をかすめたのは一本のイカズチ。後ろの岩に当たり打ち砕く。幸運なことに広がった岩の包囲から、ルイスが脱出し、その後ろからオリバーも顔を出す。


 黒の賢者とカルミア。灰の賢者と10人のエルフ。赤と青の賢者が生み出した火山が活発化する中、ファニー達の前で両者が対峙した。


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