第32話~ティーブの本心は?~
ティーブと合流し、一度出口を目指すことになった。ルイスを追いかけるために壁向こうに来たものの、手がかりが何もない。地下都市に戻り、また準備を整えた方が良いという話になる。
「ねぇ。メグも一緒に来るの?」
「なんで?嫌?」
「嫌じゃないけど、リズさんを探してたんじゃ」
「う~ん。そうなんだけど、ちょっと休憩。こっちの方が面白そうだし」
メグの視線の先には先頭を歩いているティーブ。出口まで遺跡の中を迷わず進んでいる。その後ろをついていくが、しきりに話しかけられ歩きずらい。
「間違いないって、ティーブ君は絶対ファニーのこと好きだよ」
「もうその話はいいって」
「ん~?ねぇねぇ、ファニーはどう思ってるの?」
ファニーは魔物の気配をずっと探している。警戒という意味もあったが、戦いとなればティーブのことを話しているどころでは無くなるはずだった。
「赤の賢者はファニーちゃんのこと困らせないの」
「え~?ア~ちゃんは気にならないの?」
「だってファニーちゃんはね。黒ノ」
「うわぁぁぁぁ!ダメだって!!」
割って入ってもらい少しメグと距離を取ろうとした矢先、アスチルベの口を塞ぐためにきびすを返す。
(あ、危なかった。もうちょっとで聞かれちゃうところだった)
苦しそうにするアスチルベのことを見つめながら感じるのは、メグの熱い視線と本当に熱くなっている炎。
「えぇ?なになに、どういうこと?」
炎の明かりが遺跡にぶつかって火花を散らしている。アスチルベを抱えたまま前に逃れようとするが、後ろから羽交い絞めにされてしまった。
「へ~。それでかぁ」
「な、なに?」
「他に好きな人がいるんだね。じゃぁティーブ君に好きになられても困っちゃうね。で?それは誰?」
「い、言わない」
メグにだけは知られちゃいけない気がしていた。全力で応援され、そしてポロリとルイスにバレてしまうことを想像してしまった。
出口へ向かう道すがら、メグはずっと好きな人が誰なのか突き止めようとした。あの手この手で聞き出そうとしていたが、ファニーの口数自体が少なくなっていく。
「ねぇってばぁ。ちょっとくらい教えてくれたっていいじゃん」
「待って、見つけた」
一度戦ったことがあるからこそ、すぐに見つけられた気配。ガーゴイルが狙っている。ずっと後ろの岩陰に潜み、獲物を狙うような息遣いがわかりやすい。
「また?」
「うん。すごく離れてるから、すぐには襲ってこないと思うけど」
「ふ~ん。ちょっと待ってて」
メグは前に行き3人で相談し始めてる。時々ファニーのことをチラチラ見ているが、聞き取られないように筆談まで始めてしまった。
「なに話してるんだろうね」
「ね~」
アスチルベと一緒に歩きながらガーゴイルから目を離さない。今のところ距離を保ったままついてきているだけのようで、近づいてくる気配はない。
「そうだ、ア〜ちゃん。ルイスのことは言っちゃダメって」
「む〜。赤の賢者なら良いかなって」
「良くないの」
ぷかぷかと宙に浮かぶアスチルベは素知らぬ顔で漂う。暗がりで見失わないように手の中に入れた。
(本当に油断も隙もないんだから)
一方でメグ達の相談は盛り上がっているようで、時々にらみ合いながらも声にだけは出さずに筆談で内緒話していた。
「ねぇねぇ。ファニーちゃん」
「ん?な~に」
「それでガーダンのことは、どうなの?」
手の中から顔を出したアスチルベに聞かれたのは、ずっと聞かれていたことと同じこと。
(ア~ちゃんも気にしてるんだ)
ファニーは自分の胸に手を当て、筆談を続けているティーブの姿を見る。幼い頃からずっと一緒で、友達だと思っていたその姿。
「ふ~ん」
「な、なに?」
「ファニーちゃんって罪な女ね」
「え、えぇ?」
あやうくガーゴイルを見失いそうになり、集中し直した。その気配を再確認し、指にしがみついて遊んでいるアスチルベのことを見る。
(一体どこでそんな言葉を覚えたの?)
子供のように無邪気に遊ぶ姿から唐突に放たれる言葉。ファニーは軽く息を吐いた。
「あんまりティーブのことカラかっちゃダメだよ」
「ん~?」
「私のことをどう思っているのかなんてわからないでしょ?」
「だって赤の賢者が」
メグのことを指差すアスチルベ。ちょうど話が終わったところのようで、こちらに向かってくるところだった。
(だってメグの言うことが間違ってるかもしれないし)
その後ろから近づいてくるティーブから目を離せない。カルミアも含めた3人は、互いに警戒しあうように視線を交差させている。
「ファニー、どうしよう」
「えっと。なに?」
「まとまんない。ファニーが決めて」
「ん?」
意見がまとまったわけではなく、ファニーに決めて欲しいということらしい。
メグはガーゴイルを追いかけて倒しておこうと言う。面倒な敵だから、先手を取れるなら倒しておいた方が良いという理由。
ティーブは一刻も早く地下都市に戻った方が良いと言う。わざわざ危険を冒してまで戦うのではなく、戻るのが一番安全という理由。
カルミアはどこかに隠れてやり過ごすのが良いと言う。急いで地下都市に戻らなければならないわけではなく、仮に見つかっても不意打ち出来るという理由。
ファニーの視線は3人の間を目まぐるしく移っていく。決めるなら早い方が良いと思いつつ、言葉が出てこない。
その時、ガーゴイルが動き出したのを感じ取り、それに胸をなでおろす。
「来るよ」




